「一つ目の旅の終わり」
やっとまともな時間に、まともな場所で眠ることの叶ったリリルアは目をさます。昨日は廃墟となった王国で月明かりの下、宴が催されリリルアとラケルは英雄と讃えられ大変だったのだ。貯蔵庫の食料などは荒らされていなかったらしい。
結局序盤で砦からは退場となったアリクイも王国へ戻ってきた。しかし王国を一度裏切った亜人の身、リリルアがまた旅に出るならば約束通り共に来るつもりだ。
シュラは一旦国へ帰ると言って昨日のうちに出て行ってしまった。
リリルアがラケル、ヴィンセント、アリクイと共に今いるのは郊外にある手の加えられていなかった小さな家。人はもう住んでいないとのことで使うことができた。
「おおアリル、起きたか。新聞が来てるんだ。」
眠たい目をこすりながら、メガネをかけて新聞を読むラケルの元へ行く。パジャマ姿のまま一杯のコーヒーをもらった。
どうやらアリクイとヴィンセントはまだ眠っているらしい。
「シュトロハイム王国、聖域に… 世にはびこる人身売買の一端、か。」
シュトロハイム王国を聖域と正式に認める声明を発表するフローレンシアの姿が紙面を飾っていた。彼女が人身売買の根絶のため戦っているということが大々的に報道されている。
「会ったのだろう? この人に。」
「あぁうん。外面とは違って狡猾な人だったよ、呪術師らの商会と全面戦争を起こす気でいる。きっとここの聖域化も彼女にとっては徴兵的な意味合いさ。」
「いずれはそうなるだろう。裏の商会はこの頃やりすぎだよ。」
コーヒーを一口飲んで新聞をめくる。もう一つ興味を引いた記事はポルコ・パルコの死去だ。死去と報道されてはいるが遺体は発見できていないらしい、これでポルコの商会を頼っていた多くの王や貴族が混乱に陥ることだろう。
犯人はポルコと同商会のシュトロハイム王国を滅ぼした少女と書いてある。完全な濡れ衣で昨日あった男の策略であろうから、新聞記者にも裏社会の息がかかったものがいるわけである。
「その記事が目を引くのかい? よかっただろう、ポルコが死んで。それにこれで我が国を滅ぼした女にも制裁が下る。」
確かにこう報道されたとなればNo.6という少女の身は確実に危うい。ただ何かが引っかかって腑に落ちてくれない。どうして少女に濡れ衣を着せなければならなかったか、フローレンシアがリリルアに言った「手は打ってある」という言葉に、聖域にももう裏の手が伸びている事実。
キノコの森にいた死の花の存在も含め今回辿った道程で見たもの全て気にかかってくる。
まずは情報収集、それが今後の活動において必要になってくる。どうせ旅をしようとだけ思って始めた旅路、旅を続ければいいだろう。
「ラケルは今後どうするの?」
「私はアリルにどこまでも付いて行こうと思うよ?」
「どうしてよ… なにそれ厄介…」
「厄介とか言うな無礼者。内政は王とヴィンセントがいれば良い、昨晩離婚の儀も済ませてきたから魔法も使えるぞ。」
妻が旅に出たいという理由だけで離婚を余儀なく王の心中は察せられる。しかしそこまでしてしまったとなれば後戻りはできないだろう。どうやら今回の騒動でラケルは外へ出て世界を見なければ自国を守ることすらままならない、という考えに至ったらしい。
よく言えばラケルは自由な外交官になるわけだ。
「でも私どこへ行くか決まってないけど。」
「南の島国に向かおう。そこの古都で異種族革命の準備が着々と行われているらしい、裏商会との全面戦争が起こるなら損のない旅になる。」
「私があなたについて行くんで逆じゃないみたい。」
リリルアがふと笑う。一緒に旅に出ればいい、そうすれば物語は生まれていく。
「そういえば… 砦に一緒にいたプラレスという我が国のエルフとレイジという謎の男の消息がつかめないんだよ。」
ポルコ・パルコの一件は本当に謎だらけのようだ、No.6含め三人の失踪。もしかするとそのレイジという男がフローレンシアの打った「手」だったのかもしれないと思ったが、そう判断するのは早いと思いやめた。
「革命軍の街に行くとなればきっと消息も摑めるわよ。エルフだったらもうそっちへ向かってるのかもしれない、ここへ帰ってこないってことは。」
「もう出るか?」
「うん。きっとヴィンセントさんも国のみんなもうるさいだろうし、アリクイを起こしたら。」
風のようにやってきて風のように去るリリルアである。起こすと眠そうにしていたアリクイであったが、リリルア共々なんとか眠気を振り払って旅立つ準備をする。
向かうのは南の島国。異種族革命の本拠地だ。ラケルは裏の商会を潰すため、リリルアは自分がなにをすべきかまだ探るため。
第1章終わるわけですが…
あれ、なんだか後味悪いですね。今後はもうちょいキャラの思考単純にします、そしてテンポも良くします。




