国王はこんなひと。
死亡フラグを少しでも回避するために身を守る術を色々考えたが、所詮まだ4歳。自分一人で行動させてもらえるはずもなく、とりあえずこの国のことを知っておこうと本を読むために文字を習い始めてみた。といってもまだ正式に先生が付く訳ではなく、侍女に読み聞かせてもらうくらいだが。
あとは物理的な対策として剣などもやっておきたいが、腐っても王女。持たせてももらえそうもない。どうしたものかと考えていたところ行き着いたのが、自分だけの護衛を作ろうというものだった。出来れば城の者ではなく外の世界の人がいい。いざという時に貴族などの権力に屈されては困るたからだ。やはり信頼関係は大事だと思うし、何よりも私は一国の王より、折角の剣と魔法の世界を観てまわりたい。
その為には冒険者になるのが一番だと考えた。だからいざ冒険者になったときにサポートしてくれる人が必要だと思うのだ。王女の私ではやすやすと街にも行けないから、物価などもわからないし、死亡フラグを回避しても国外追放などもありえるし、ある程度は外の暮らしを知っておかなければいけない。
その考えを実行するためにはどうすればいいか。。。今日は天気が良いので庭で日向ぼっこをしながら計画を練ろうと廊下を歩いていると、
「ロゼ姉さまっ」
と声を掛けられ振り向くと、可愛らしい顔いっぱいに笑みを浮かべ、こちらに走ってくるユリウスの姿があった。
「どちらへいかれるのですか?」
「今日はお天気が良いから庭へ出ようと思っていたのよ。」
「ぼくも一緒にいっていいですか?」
「もちろん。一緒にお茶にしましょう。」
・・・弟に耳と尻尾が見えるのは幻覚ですね。可愛すぎてつい甘やかしてしまいます。
私たちは手をつなぎ、仲良く庭へと向かった。
庭に出ると、お気に入りの大きな木の下に座り二人で本を読む。とはいってもこの世界には絵本が少ないため、文字ばかりの本を解る単語から少しずつ読みすすめていくだけなのだ。冒険者になったら、自分で絵本を作ってみるのもいいかもしれない。
そんなことを考えているとユリウスの頭がゆらゆらしているのに気がついた。やはり子どもには文字ばかりの本は退屈なようだ。
私は脚の上に広げていた本を閉じ、かわりにユリウスの頭を乗せてあげた。いわゆる膝枕である。私とユリウスは亡き母似の綺麗な銀髪をしている。その絹の様な髪がさらさらと揺れているのを見て、私が冒険者になり城を出て行くということは、この愛しい弟を置いていかなければならないのだと思うと、罪悪感が出てくる。
ユリウスには母親の記憶がない。母はユリウスを産んですぐに体調を崩し、なかなかベットから出ることができずにそのまま帰らぬ人となってしまった。
だからかもしれない。母親の代わりに姉である私に甘えることで寂しさを埋めているような気がする。私も精神年齢で考えるとユリウスは息子でもおかしくないので、大抵は許容範囲に入ってしまい許してしまうのだ。
それでもユリウスに誘われた私が他の用事を優先しようとするとその対象を排除しようとするのはやりすぎだ。廊下で段差につまづいた私に手を貸してくれた侍女を、睨みつけて怯えさせるのは度が過ぎると思う。
このままではゲームの攻略対象であるシスコン王子に着々と進化しつつある。
それを阻止するためにまずこの甘えん坊な王子の教育から始めよう。せめて人並みくらいのシスコンを希望します。
私は早速この国の王である父のところへ行き、ユリウスに王子としての教育を開始してもらうように進言した。
「久しぶりだね私の可愛いローズ。今日はどうしたのかな?」
「お久しぶりですわお父様。今日は私とユリウスに教えてくれる教師をお願いに参りましたの」
「教師?でもローズたちにはまだ早いのではないかな」
「いいえ。物事を知るのに早すぎるということはないと考えましたの。是非お父様に優秀な先生をご紹介頂きたいのです。」
「ローズの気持ちは解った。ではユリウスもというのは何故だい?」
「・・・お父様はユリウスの私に対する態度を聞いていて?」
「・・・そうだね。姉が大好きだということは耳にしているよ。」
「私にだけ教師がつくとわかったらユリウスが心配なんですの。ですから私とユリウスの二人一緒に教えてくださる方が必要なのです。」
「それにいつまでもこのままという訳にもいきませんわ。ユリウスには立派に成長して欲しいのです。ですから同時に剣を教えてくれる先生もお願い致しますわ」
「ローズがそこまで言うならやってみるといい。良い者を紹介するよ。」
「ありがとうございます!!」
「ローズは滅多にお願いに来てくれないからね。お父様は少し寂しいよ・・・」
「そんなことはありませんわ。一番頼りになるのはお父様ですもの。ではよろしくお願い致しますね」
・・・・大成功!!!これでユリウスに剣の稽古の時間が出来れば必然的に私の自由時間が増えるというもの!!勉強も私と一緒ということでユリウスも不満はないだろうし。我ながら名案だった。
お父様も滅多に私を否定はしないし。というのも私の容姿が亡母にそっくりだからだ。父と母は恋愛結婚で父が母に一目惚れだったらしい。私の名前のローズ・ミリアというミリアは母の名前を付けた程だ。だから母が亡くなった時の落ち込み様もすごかったし、一時期は私をミリアと母の名で呼び、錯乱一歩手前って感じだった。
実はゲームではローズが悪役になった過程について家族に自分自身を見てもらえず、王位継承権第一ということで命を狙われ、そこへ皆に愛されている妹が出てきたことで歪みに歪んでいったという経緯があることを後輩の言葉と共に思い出し、その日のうちに父に会いにゆき、ズバっと国王のヘタレさを指摘して正気に戻したという出来事があった。内容としては『いつまでもウジウジしてないでちゃんと今の奥さん見て新しい娘が誇れる父親にならんかいボケぇ!!!』って感じをもう少しオブラートに包んで伝えた。その結果、狂者から娘大好きパパに昇格したのだ。今はいまで少しウザイが。
まぁとりあえずこれで少しはユリウスの姉大好き部分が改善されるといいのだが・・・。




