シスコン王子教育計画始動。
父に教師をお願いして数日後、紹介された先生はなんと元宰相様だった。今はご子息に宰相の位を譲り、ご自分はのんびり隠居生活をしていたらしい。かつて父を教えていたこともあるそうで、厳しい宰相の地位にいたとは思えない優しそうなおじいちゃんといった感じだ。
「お初にお目にかかります。今日からお二人に勉強をご指南させて頂きますジェラード・ルイ・オルレアンと申します。至らぬこともあると思いますが、どうぞよろしくお願い致します。」
「オルレアン様。ローズと申します。こちらこそ弟共々よろしくお願い致します。」
「・・・お願いします・・・」
ユリウスはいかにも不本意という様子で一言返事をした。でもこれは“シスコン王子教育計画”!!
ここからが始まり。私は厳しく諭すことにする。
「ユリウス。オルレアン様は私たちのために、わざわざ自領からお越し下さったのです。きちんと自己紹介しないと失礼ですよ」
ユリウスは私をちらちらと見るが返事をしようとしない。私がじっと見ていると、次第に目が潤んできたが、ここで負けては意味がない。
「ローズ様、私なら構いませんよ。最初なので緊張なさっているのでしょう」
「いいえオルレアン様。私たちはこれから教えを乞う身。初めの姿勢が大切だと思います。」
「ユリウス。」
私はユリウスの前に立ち、目を見ながら諭します。
「ユリウスが嫌ならば私一人で勉強します。ユリウスは勉強をしたくないのですか?それならば無理にとはいいません。自分の部屋に戻りなさい。」
そう言うとユリウス首を横に振り、否定の意を表します。ギュッと閉じた目からとうとう涙が零れている。私はユリウスの涙をハンカチで抑えながら「きちんと出来ますね。」と聞くと、
「ユリウスです。よろしくお願いします。」
簡潔にですが挨拶することができた。この成長をみた私は嬉しくなり「よくできました」とユリウスの頭を撫でる。さらさらの髪の気持ちいいこと。思わず口元がにやけてしまう。ずっと触っていたいくらいだが、現在の状況を思い出そう。
勉強を教えに来た教師そっちのけで弟の頭の感触を堪能する姉。我ながら変態っぽい。
私は我にかえり、オルレアン様の方を向くとニコニコと優しい眼差しで見守っていて下さっていた。
「お待たせして申し訳ありませんでした。」
「いえいえ。いいものを見せて頂きましたぞ。ユリウス様は素晴らしい姉君をお持ちで羨ましいですなぁ」
私は恥ずかしくなり俯いてしまったが、何故かユリウスの方が誇らしげだった。
そんな感じで始まった勉強だが、やはり新しいことを知るのは楽しく、ただ本を読むよりも先生がいればすぐに質問できるし、耳で聞いた方が頭に入り覚えやすかった。
ユリウスもいざ始まると真面目にやっているし、この作戦は成功といえるだろう。
それからは午前は二人で勉強、午後からユリウスは剣の稽古。私は淑女へのマナー講座など分かれて活動し、時間が合えば一緒にお茶をするようになった。今までは一日中一緒に行動していたことを考えれば十分に自由時間ができたと思う。
まあ案の定、剣の稽古でもひと悶着あったが・・・。




