↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元若頭の王子、治安最悪の国でヒーローになる――ダークプリンス  作者: 夜嶋朔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/22

第16話 嫁

 夕方。


 リュミエール・インダストリーズ。


 仕事を終えたセイジたちは、ようやく帰れると思っていた。


「今日はもう何も起きんなよ」


 セイジが煙草へ火をつける。


「ほんとそれ」


「もう帰りてぇ」


「笑顔作りすぎてまだ顔いてぇんだけど」


「昨日から濃すぎんだよ」


「レオンの恋愛まで増えたし」


「うるせぇ!!!」


 レオンがすぐに怒鳴る。


「恋愛じゃねぇ!」


「片思いやろ」


「セイジてめぇ!」


 その時。


 ウォッチが光った。


 ピッ。


『セイジお兄ちゃん!』


 ブルースだった。


「ん」


『この前の子供たち、また外に出てる!』


 全員の顔が止まった。


「……また」


『倉庫街! 何か箱運んでるよ!』


 セイジが眉を寄せる。


「何の箱」


『まだ分かんない。でも、人に見つからないように運んでる!』


 七人が一斉に立ち上がった。


「またガキかよ!!!!」


 セイジが煙草を灰皿へ押しつける。


「行くぞ」


「おう!!!!」


 八人が一斉にウォッチへ触れた。


 ピッ。


 白い王子衣装が、一瞬で黒へ変わる。


 夜の街へ出るための、黒を基調とした王子服。


 身体の動きを邪魔しない仕立て。


 光を抑えた装飾。


 それでも。


 八人が並べば、異様なほど華やかだった。


 最後に。


 防刃、防弾仕様の黒いマントが広がる。


 バサッ。


 セイジを先頭に。


 七人が並ぶ。


 さっきまで。


「帰りてぇ」


「顔いてぇ」


「片思いやろ」


 と騒いでいた男たちとは思えない。


 黒。


 金。


 鋭い目。


 整いすぎた顔立ち。


 全員。


 完全に戦う顔になっていた。


 セイジが低く言う。


「行くぞ」


「おう!!!!」


     *


 地下駐車場。


 八台の大型バイクが、一斉にエンジンを響かせる。


 ブウゥゥゥン!!


 セイジが先頭。


 その後ろに七人。


 黒い王子たちが、夕暮れのムゴッサへ飛び出した。


「場所!」


 エリオットが叫ぶ。


「倉庫街の東!」


 エミールがウォッチの地図を見る。


「三つ先の交差点右! そのまま直進!」


「了解!」


「次の信号変わるぞ!」


「止まれよ!!!」


「分かってる!!!」


 アレクシスが風に乱れた前髪を押さえる。


「最悪、髪ぐちゃぐちゃ」


「今そこ?!」


「そこ大事!!!」


「お前ほんま変わらんな」


 セイジが笑った。


     *


 倉庫街。


 子供たちは、数人で箱を抱えながら裏路地を走っていた。


「急げ!」


「次の角!」


「見つかる前に運べ!」


 その時。


 後ろから。


 バイクの音。


 ブウゥゥゥン!!


 子供たちの顔が引きつる。


「……まさか」


 角を曲がって。


 八台。


「いたぞ!!!」


「げっ!!!」


「逃げろ!!!」


「逃げんなぁぁぁぁ!!!!」


 ロイヤル・フラグメントの怒鳴り声が響く。


 子供たちは全力で走った。


「何で逃げんだよ!!!」


「追ってくるからだよ!!!」


「追われることしてんじゃねぇ!!!」


 セイジがバイクを止め、飛び降りる。


 七人も続く。


「止まれ!!!」


「やだ!!!」


「何でだよ!!!」


「怒られるから!!!」


「もう怒ってるわ!!!」


     *


 数分後。


 全員。


 捕まった。


 子供たちは路地の壁際に並ばされている。


 セイジが、一つの箱を開けた。


「……」


 中には。


 小さな袋。


 薬。


 どう見ても普通ではない。


 セイジの顔が変わる。


「これ何や」


 子供たちは黙る。


「誰に頼まれた」


「……」


「何で薬運んどんねん」


 一人が小さく言う。


「金になるから」


 セイジの眉が跳ねた。


「やからって薬運ぶんかい!!」


 子供たちがびくっとする。


「飯あるやろ!」


「……」


「寝るとこ作る言うたやろ!」


「……」


「学校も仕事も用意する言うたやろ!」


「でも!」


 一人が叫ぶ。


「これしか仕事知らねぇんだよ!」


「知らんかったら教えたる言うとるやろが!!!」


 セイジの声が、路地に響く。


「勝手に戻んな!」


 ノエルも前へ出る。


「また危ねぇことしてんじゃねぇ!!!」


 レオンも続く。


「誰に渡せって言われた」


 エミールは完全にキレていた。


「決めたこと守れって言っただろ!!!」


「……」


「何で毎回勝手に動くんだよ!!!」


 セイジが横を見る。


「エミールめっちゃ怒っとるやん」


「規律守れねぇ奴が一番腹立つんだよ!!!」


「出てきたな」


 セシルも腕を組む。


「この前助けたばっかだぞ?!」


 ルシアンも続く。


「飯も出るんだろ!!!」


 子供が言い返す。


「外の方が自由なんだよ!」


「自由と犯罪一緒にすんな!!!」


 七人が一斉に怒鳴る。


「うるせぇな!!!」


 セイジの目が細くなった。


「誰に口きいとんねん」


 子供たちが黙る。


 セイジは箱を閉じた。


「自分らで生きたい言うたよな」


「……」


「好き勝手することと、自分で生きることは違うぞ」


 少し。


 空気が静かになる。


「薬なんか運んどったら、いつか捕まるか殺されるかや」


「……」


「それで自由とか言うな」


 誰も。


 言い返さなかった。


     *


 その時。


 遠くからパトカーの音が近づいてくる。


 一台の車が路地へ入ってきた。


 ドアが開く。


 ジム。


 そして。


 もう一人。


 少しふらつきながら降りてくる男。


「だから逃げるって言ったじゃ〜ん」


 セイジが男を見る。


「誰や」


「バリー」


 ジムが短く答える。


「相棒だ」


 バリーは子供たちを見て、へらっと笑った。


「また悪いことしてたの〜」


 子供の一人が鼻を押さえる。


「酒くさっ!」


「ひどいな〜」


 セイジが眉を寄せた。


「勤務中に酔っ払うな」


 ジムは平然としている。


「いつものことだ」


「いつもなんかい」


「ちゃんと仕事はしてるよ〜」


「説得力ないわ」


 バリーは子供たちの前へ行く。


「おじさんの言うこときかなきゃだめよ〜」


「お前が一番言う資格ないやろ」


「あるある〜」


「ないわ」


 ジムが薬の入った箱を見る。


「で、またこいつらか」


 ロイヤル・フラグメント七人。


「まただよ!!!!!!」


「分かった分かった」


 ジムが頭を掻く。


「署で話聞く」


 バリーが、ふとレオンを見る。


「ん〜」


「何だよ」


「君、この前フィニーにくっついてた王子だよね〜」


「くっついてねぇ!!!」


「そうなの〜」


「何だよ!」


「いや〜」


 バリーがへらっと笑う。


「フィニー知ってるよ〜」


 レオンの顔が変わる。


「知ってんのか」


「知ってる知ってる〜」


「どんな関係だよ」


 バリーは、何でもないことのように言った。


「おじさんの嫁だよ〜」


 一瞬。


 全員。


「えーーーーーーーーー!!!!!!」


 レオンの目が見開く。


「はぁぁぁぁぁ?!」


 セイジも振り返った。


「不倫はあかんやろが!!!」


「まだ何もしてねぇよ!!!」


 セシルがレオンを指差す。


「惚れてんだろ!!!」


「それは……」


「認めんのかよ!!!」


 バリーは楽しそうに笑う。


「ちなみに〜」


 セイジが嫌そうに見る。


「まだあんの」


「フィニー、50だよ〜」


 また。


 一瞬。


「えーーーーーーーーー!!!!!!」


 レオンが完全に固まる。


「……50」


 セイジが頭を抱えた。


「そこより嫁やろが!!!」


 夕暮れの倉庫街に。


 八人の声が。


 また盛大に響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。