↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法文房具店  作者: 十一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/4

失恋の魔法

このお話だけでも分かるとは思うのですが、第2話から繋がるお話ではあるので、よろしければ、あわせてお読み頂けたらと思います。


「ノエルさん、『恋文セット』って効くんですよね?」

柑奈が色とりどりのレターセットを見比べている。


ここは魔法文房具店。

モノに魔法を付与することが出来るノエルが、魔力を付与したペンやノートを販売している。

人気商品はこれ、恋を叶える『恋文セット』だ。


柑奈はその『恋文セット』を先日1セット購入していたが……。

「なんでもかんでも効くわけじゃないわ。ちゃんと想いを伝えようと努力していれば、効くわよ。あと一歩を叶える魔法だもの。」

ノエルは答える。

そう、魔法は万能じゃない。

頑張ったあと、最後の一押し。

それが魔法だ。


「すみません、これ、一回り大きいノートありませんか?」

奥から声をかけられた。

「あら、漣途くん。それは魔法効果はないわ。」

魔法文房具店は冒険者ギルドの傍にあるので、普通の文房具もそれなりに売れる。

「分かってます。試験勉強用なんですが、こればかりは実力で受けたいんです。」

「なんだっけ?管理職試験だっけ?」

「口頭試問もうすぐですね。」

「そう。追い込みだよ。」

漣途は冒険者ギルドの広報官。ギルドの受付の柑奈の直属の上司にあたる。

「だったら『合格セット』もあるわよ。」

漣途は間違いなく努力しているから、この魔法は確実に効く。

「でもやっぱり魔法で受かっても自信にならないから。」

「真面目ねえ…」

「大丈夫ですよ、漣途さんだもの。」

「そうだといいけど。」

柑奈の励ましに淡く笑った。


勉強があると言って漣途は速やかに帰って行った。

「……漣途くんはお得意様でよくノートやペンを買ってくれるけど、魔法効果のないものばかり買ってくれるのよねえ…」

「それでもちゃんと結果出してますよね。」

それは確かにそうなのだ。

漣途は優秀だ。

“もう一歩”がなくても合格出来るのだろう。

「……私もね、使わなかったんです。」

柑奈がぽつりと呟いた。

「え?」

柑奈は恋をしていた。

だから『恋文セット』を買った。

「……そう…」

「だから……恋を終わらせる魔法…ありますか?」

これからも『恋文セット』は使わない。

柑奈はそう決めたということだ。


「好きだったから魔法を使おうって思っちゃったんです。」

「使っても良かったのよ。」

柑奈は頑張っていた。

恋を叶えようと頑張っていて、だから最後の一押しの『恋文セット』を使おうとした。

「ううん、駄目。」

「どうして?」

「魔法を使って私を好きになってもらったら、あの子に失礼だと思ったから…かな…」

「失礼?」

「私を好きになってくれたことに罪悪感を覚えると思ったから…それって私も……それ以上にあの子にとって幸せなことって思えないでしょう?」

「でも好きなんでしょう?」

「……好きだから、そう思ったんです。」

ノエルは思う。

柑奈は賢い。ノエルよりずっと。


「…だったら『縁切りノート』…使う?」

「縁切り?」

「このノートにね、縁を切りたいこととその理由を書いてみて。」

柑奈は今でも恋をしている。

「でも……いっしょにはいたいんです。」

だから苦しい。

「そうよ。そのためにこの魔法を使うのよ。」

今でもいっしょにいたいけど、傍にいればいるほど苦しい想いをする。

その苦しい想いと縁を切る。

そのための魔法。

「……ありがとう…ノエルさん…」

柑奈は本当に賢い。

だから、この魔法は柑奈を救うだろう。


「ちょっとノエルさん!柑奈がここにいるって聞いたんだけどー!」

「瑠璃ちゃん!何その恰好!」

”あの子”は今日も元気で賑やかだ。

しかし、せっかく『美人ノート』の効果できれいになったはずなのに今日はボロボロだ。

「クエスト帰りなの。ギルドに直行したのに柑奈いないんだもん。」

「今日は休みなの、瑠璃が帰るの明日って言ってたじゃない?」

「早く終わった!終わらせた!」

「それで探して来てくれたの?…ちょっと瑠璃、ケガしてる!」

「そー今回ちょっとヤバかったんだって!だから早く柑奈に会いたかったの!」

「分かった、分かったって。まず治療だよ…ノエルさん、ありがとうございます、また来ます!」

「え…ええ。瑠璃ちゃんお大事にね。」

「ノエルさんありがとーまたね~」

瑠璃は柑奈を攫って嵐のように去っていく。


嵐のあと、ノエルは笑ってしまった。

二人の間にあるものは恋ではないかもしれない。

だけどお互いにとって一番大切なひとは誰なのか。

「本当に手間がかかるんだから。」

いつか瑠璃は気が付くだろうか。

すぐに柑奈は気付くだろう。とても賢い娘だから。

「とっくに両思いなのにね。」


一番大切なひとが恋人とは限らないっていうことに。

お読み頂きありがとうございます。

更新は不定期ですがお待ち頂けたら嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。