014:特別編 やめて物を投げないで!!
014:特別編 やめて物を投げないで!!
〜秘密の投資レッスン・私の資産が狙われて〜
【 ▶ スタート 】
【 コンティニュー 】
【 設定 】
【ゲーム画面】
『私の名はアリエル。
ある日、お父様に「そろそろ資産運用の勉強を始めなさい」って、3人の執事をつけられたの。
個性あふれる3人のイケメンに翻弄される私。
どうせ、アイツらは私の資産(とお父様の権力)が目当てに決まってるわ!
絶対、ときめいたりしないんだから!』
第一章 危険な買い付け編
【Scene 1:指値買い】〜書斎での甘い囁き〜
長男・サシネ「お嬢様、あの銘柄を今すぐ買いたい? ……ふふ、いけませんね、そんなに焦っては」
サシネは背後からそっと身を乗り出し、マウスを握る私の手に自分の手を重ねた。
「私の計算によれば、奴らは必ず500円まで落ちてくる。その時まで、私と一緒に……じっくり待ちましょう? 1円たりとも、貴方に余分な金は払わせませんから」
(※指値買い:今の株価より「下がったら買う」予約。指定した安い値段にならないと買えないが、安く仕込める)
【Scene 2:逆指値買い】〜強引な腰の引き寄せからのワイヤーアクション〜
次男・ギャクサシネ「……お嬢様、行きましょう!」
寡黙なギャクサシネが突然、私の腰を抱き寄せてワイヤーを巻き取りながら上昇を始めた。
「長らく続いた上値の抵抗線……今、突破しました。ここから先は未知の高値圏です。さあ、私にしがみついて。……振り落とされずに、新しい世界へお連れします」
(※逆指値買い:今の株価より「上がったら買う」予約。抵抗線を抜けた上昇トレンドに飛び乗る時に便利)
【Scene 3:成行買い】〜激しい壁ドン〜
ドンッ!!と三男・ナリユキが壁を叩き、私を逃げ場のない状況に追い込む。
「おい、値段なんか見てんじゃねぇよ。今すぐ株が欲しいんだろ!! 多少高くたって関係ねぇ! 俺が今すぐもぎ取ってきてやる!!」
(※成行買い:値段を指定せず「今すぐ買う」注文。即座に買えるが、急激な値動きだと予想外の高値で買ってしまうリスクがある)
第二章 官能の売りつけ編
【Scene 4:指値売り】〜魅惑の顎クイ〜
サシネの冷たい指先が私の顎を捉え、上を向かせる。
「お嬢様……たかが少し上がったくらいで、利確しようとするなんて。イケナイ人だ。あなたは自分の価値(株のポテンシャル)を分かっていない。もう少し待つのです、1000円。美しき花弁が開き切るその官能の頂きで、華麗に売り払ってさしあげます。それまで、貴方は株価ではなく、私だけを見ていればよいのです。」
(※指値売り:今の株価より「上がったら売る」予約。目標価格でしっかり利益確定できるが、そこまで届かないと売れない)
【Scene 5:逆指値売り】〜お姫様抱っこで緊急脱出〜
突如として暴落を始めた相場。
「チッ……! これ以上の損失は、私の誇りが許さない。……お嬢様は、私が必ず守り抜く」
ギャクサシネは私の足に絡みつく茨のツタを断ち切って、私を軽々とお姫様抱っこで抱き上げる。
損切りラインが割れた瞬間に冷酷に株を切り捨て、破産から救い出してくれた。
「かわいそうに…こんなに冷え切って…」
(※逆指値売り:今の株価より「下がったら売る」予約。主に損切り用。これ以上の赤字拡大を防ぐための命綱)
【Scene 6:成行売り】〜手首を掴んでの逃避行〜
「こんなクソ株、今すぐ捨てろ!!」
ナリユキは私の手首を乱暴に掴むと、猛ダッシュで駆け出した。
「いくらでもいい! あんたがこれ以上傷つく(含み損を抱える)のを見てらんねぇんだよ! 俺が全部、今すぐ終わらせてやるから黙ってついてこい!!」
(※成行売り:値段を指定せず「今すぐ売る」注文。暴落時などに最速で逃げられるが、安く叩き売ることになるリスクもある)
◇
「キャーーー! 消したはずなのに! 何でまだ残ってるんですか!?」
鼓膜を劈くような悲鳴と共に、顔を真っ赤にしたアリエルが端末めがけて飛びかかってきた。
俺はビクッと体をふるわせ、思わずアリエルの方に目線をやる。
弾丸のように突進してくるアリエルの前に、ビフロンスがサッと割り込んできて、アリエルの頭をまるで熟達のゴールキーパーのようにキャッチした。
「サルベージしたからに決まってるだろ? どうだ? 鈴木良平、コレはアリエルに株の勉強をさせる為に俺が組んだ乙女ゲームだ!」
「ああああっ! ばかばか! 消して! 今すぐ全消去よ!!」
涙目でポカポカと必死に繰り出されるアリエルのクルクルパンチ。
だが、ビフロンスはそれを片手でひらりひらりと軽くあしらいながら、俺の方を見てニヤリと笑った。
「効果はテキメンで、アリエルは一晩で株の知識をマスターしたぞ! ポイントは難しい概念の勉強のシーンには、乳首を……」
「キャーーーキャーーー! 黙れ! 黙ってぇぇ!!」
羞恥で顔から火を吹き出しそうなアリエルの絶叫が部屋に響き渡る。
カオス極まる空間の中で、俺は呆れながら手元の端末――イケメン執事たちの解説画面――に視線を落とした。
「……まあ、指値とか逆指値とか予約機能が凄いのは分かったけどさ」
顎を擦りながら、俺は率直な疑問を口にする。
「ぶっちゃけ、いちいち値段を指定して待つより、三男の『ナリユキ(成行)』に任せて、その時の値段でパパッと売買しちゃうのが一番楽じゃないか? 買いたい時に買う、売りたい時に売る。結局、それでいい気がするんだけど」
すると、アリエルの頭をポンポンと小馬鹿にしたように押さえつけていたビフロンスが、ふっと真面目なトーンに切り替わった。
「成行が悪いとは言わん。だが鈴木、そこにお前の魂はこもっているのか?」
「……魂?」
「そうだ。お前が『今すぐ買いたい』『今すぐ売りたい』と思ったその瞬間――お前は本当に冷静に相場を見ているか? 画面の向こう側の熱狂に当てられて、ただ感情に振り回されてボタンを押してはいないか?」
ビフロンスの鋭い視線に射抜かれ、俺はハッと息を呑んだ。
思い当たる節がありすぎる。少し株価が急上昇したのを見て「もっと上がるかも! 乗り遅れるな!」と慌てて飛びついたり、逆に急落してパニックになり「もうダメだ!」と底値で投げ売りしてしまったり……あの、心臓がバクバクと嫌な音を立てる感覚。
「あ……」
「指値も逆指値も、ただの予約機能だ。だが、その本質はそこじゃない。本質は『あらかじめ予約をしておく事で、株の売買を人間の心理から切り離す事が出来る』という点にある」
「……なるほど。いざ動くチャートを目の前にすると、欲や恐怖でルール通りに動けなくなる。だから、冷静なうちにシステムに任せて、機械的に判断させるってわけか」
俺の言葉に、ビフロンスはビシッと指を突きつけ、大仰にマントを翻すような仕草(※実際には着ていないがそんな幻覚が見えた)で胸を張った。
「覚えておけ、鈴木良平。燃えるような感情だけでは万象はお前を喰らい尽くすだろう。胸に炎を宿しつつ、氷の瞳で世界を見るのだ! それが出来てようやく半人前になれる」
「……悔しいが、ただのド変態乙女ゲームにしては学ぶべきことが多いな」
俺は深く頷き、改めて相場の恐ろしさと、執事たち(システム)を使いこなす重要性を胸に刻んだ。
「きゃー! 早く消してぇ! 私の黒歴史ー! お嫁に行けなくなるー!!」
俺たちの真面目な会話の背景では、まだしばらく、アリエルの悲痛な叫び声が虚しく響き続けていた。
◇おまけ:『秘密の投資レッスン』デジタル設定資料集
(※ビフロンスの隠しフォルダより流出)
長男・サシネ(指値)
【二つ名】報われない完璧主義者
ビジュアル: 銀縁メガネ、漆黒の三つ揃えスーツ、アンティークの懐中時計。
性格設定: 常に冷徹で計算高いが、お嬢様への忠誠心は誰よりも重い。
エモいポイント(※注文が約定しなかった時の悲哀):
お嬢様の「この値段で買いたい(売りたい)」という願いを叶えるためなら、雨の日も風の日も、市場の片隅で永遠に待ち続ける。
しかし、株価がわずか1円届かなかっただけで、彼の待機はすべて無駄になる。
市場が閉まった夕暮れ時。
誰にも買えなかった株券(未約定の注文書)を握りしめ、「私の計算が……甘かったばかりに。お嬢様、どうか無能な私をお叱りください……」と、光届かぬ路地裏で、雨に濡れながら膝をついて涙を流している。
(※いわゆる「機会損失」の擬人化)
次男・ギャクサシネ(逆指値)
【二つ名】嫌われ役の暗殺騎士
ビジュアル: 目隠れミッドナイトブルー髪、ミリタリー調の執事服、隠し持った暗器。
性格設定: 寡黙で不器用。主の命よりも「主の生存」を最優先する過保護な護衛。
エモいポイント(※損切り執行時の自己犠牲):
彼が一番恐れているのは、お嬢様が致命傷(大赤字)を負うこと。
だからこそ、設定した防衛ライン(損切りライン)を割った瞬間、お嬢様が「やめて! まだ上がるかもしれないのに!」と泣き叫んで止めても、心を鬼にして強引に株を切り捨てる。
「恨んでいただいて構いません。……あなたの明日が守れるのなら、私は喜んで泥を被りましょう」
その冷酷な決断の裏で、お嬢様に嫌われることに誰よりも心を痛め、1人でひっそりと傷ついている悲劇の騎士。
(※のちに「あの時切ってくれていなかったら破産していた」と気づく胸熱ルートあり)
三男・ナリユキ(成行)
【二つ名】傷だらけの狂犬
ビジュアル: ツンツン赤髪、胸元全開のシャツ、手に巻かれたバンデージ。
性格設定: 考えるより先に体が動く。お嬢様の「今すぐ!」という願いが絶対のルール。
エモいポイント(※高値掴み・スリッページ発生時の献身):
値段交渉など一切しない。
お嬢様が「欲しい」と言えば、暴れ狂う相場(パニック相場)のど真ん中に単身で突っ込んでいく。
売り手から法外な値段を吹っかけられても、ボロボロになりながら強引に株をもぎ取ってくる。
市場の波に揉まれ、服を破き、顔に傷を作りながら帰還した彼は、血のにじむような高値で買ってきた株券を差し出して、太陽のように笑う。
「へへっ……あんたの『欲しい』は、俺が今すぐ叶えてやるって言ったろ?」
その自己犠牲的な傷跡(想定より不利な値段での約定)を見るたび、プレイヤーは「ごめんねナリユキ、私が焦ったばかりに……!」と深い罪悪感と母性本能をくすぐられる。
考え無しの成行売りで、希望通りの金額で売れずにアリエルから詰め寄られ、責任を感じて失踪するイベントは必見。




