92.奮戦
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【ソロモン視点】
東部拠点。
悲鳴。
銃声。
爆発音。
吸血鬼たちが防壁を越えて侵入していた。
「撃て!」
「止まらないぞ!」
「紫外線照射を――」
兵士たちが叫ぶ。
だが。
俺は静かに空を見上げた。
「なるほど」
思ったより多い。
数百。
いや。
千体近いか。
吸血鬼たちは建物を駆け。
空を飛び。
霧となって侵入している。
普通なら厄介だろう。
だが。
俺にとっては大差ない。
「なら手加減は不要だな」
空気が震える。
光が集まる。
兵士たちが空を見上げた。
「な、なんだ……?」
次の瞬間。
空が昼になった。
太陽が出現したかのような光。
眩い輝きが戦場を包み込む。
「ギャアアアアアアア!!」
「馬鹿な!?」
「何だこの光は!?」
吸血鬼たちが次々と灰になる。
逃げ場はない。
建物も。
地下への入口も。
全て光で塞がれていた。
数秒後。
戦場に立っている吸血鬼は一体もいなかった。
静寂。
兵士たちが固まる。
俺は首を傾げる。
「終わりか?」
【ヴェルナ視点】
西部拠点。
吸血鬼たちが建物の屋上を飛び回っていた。
銃撃は効かない。
紫外線照射装置も破壊されている。
兵士たちは追い詰められていた。
俺は静かに前へ出る。
「さて」
まず観察。
そして分析。
再生能力。
身体能力。
そして。
全身を覆う遮光装備。
「なるほどな」
吸血鬼が飛び掛かってくる。
俺は避けた。
一閃。
首が飛ぶ。
だが。
再生しようとする。
「やっぱりか」
指先へ光を集める。
切断面へ直接照射。
「ギャアアアアアア!!」
吸血鬼が絶叫した。
首の断面から光が侵入する。
内部から焼かれる。
灰になる。
消滅。
俺は頷いた。
「外から焼くより効率的だろ?」
吸血鬼たちの顔色が変わる。
逃げようとする者もいた。
だが。
遅い。
刃と一体化した光が閃く。
首が飛ぶ。
光を流し込む。
灰になる。
その繰り返しだった。
【ルクス視点】
南部拠点。
紫外線照射装置は既に破壊されていた。
兵士たちは撤退寸前。
吸血鬼たちは勝利を確信している。
「終わりだ」
「人類の滅びの時だ!」
その時。
白銀の光が舞った。
人々が空を見上げる。
一頭の鹿。
だが。
その姿は既に神話だった。
巨大な角が夜空のように輝く。
体毛が白銀の光を放つ。
無数の光粒が周囲を漂っていた。
吸血鬼たちが後退る。
「な、何だ……?」
ルクスは静かに歩いた。
ただそれだけだった。
光が広がる。
吸血鬼たちが崩れ落ちる。
灰になって消えていく。
誰も抵抗できない。
誰も近付けない。
人々は言葉を失った。
それは戦いではなかった。
まるで神話の再現だった。
【ミハイル視点】
北部拠点。
俺は必死に戦っていた。
「くらえ!」
圧縮した紫外線を槍のように放つ魔法が吸血鬼を貫く。
「ギャアアアア!!」
灰になる。
一体。
二体。
三体。
戦える。
学院で学んだ。
ソロモンからも教わった。
紫外線は吸血鬼へ有効。
落ち着けば勝てる。
「次だ!」
再び槍を生成する。
放つ。
吸血鬼を貫く。
問題ない。
そう思った。
そしてもう一度…
その時だった。
「ほう」
後ろから声が聞こえる。
俺は振り返った。
男が立っていた。
黒い外套。
赤い瞳。
吸血鬼。
だが。
何かがおかしい。
嫌な予感がした。
「人間にしては面白い力を使うな」
俺は反射的に手のひらに集めていた光の槍を放った。
直撃。
確かに貫いた。
だが。
男は笑った。
「……え?」
男の周囲には黒い霧のようなものが漂っていた。
まるで光が吸収されているように。
「なるほど」
男は感心したように呟く。
「確かに普通はこれで死ぬな」
俺の顔から血の気が引く。
効かない。
男はゆっくりと歩き出した。
「さて」
「少し怖い思いをしてもらおうか…」
その瞬間。
俺は本能で理解した。
勝てない。
目の前にいるのは。
今までの吸血鬼とは別格だった。
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