83.ルクスとミハイル
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問題は、部屋へ入った後だった。
「……ベッド小さすぎません?」
ミハイルが真顔で言った。
当然だった。
人間用の宿舎である。
神獣サイズなど想定されていない。
ルクスは無理やり身体を丸めていた。
だが。
どう見ても苦しそうだった。
数分後。
俺たちは宿舎裏の馬小屋へ来ていた。
藁が積まれている。
「なるほど」
俺が言う。
「これを部屋へ持ち込めばいい」
「そういう方向性なんですか?」
ヴェルナは呆れながら藁を抱えていた。
「いや俺も運ぶのかよ……」
結果。
ミハイルの部屋の床一面へ、大量の藁が敷き詰められた。
もはや部屋ではない。
半分馬小屋だった。
だがルクスは妙に落ち着いていた。
むしろ嬉しそうですらある。
「……なんか馴染んでません?」
「快適なんだろう」
「神獣ですよね?」
夜。
藁の上。
ミハイルは眠れなかった。
原因は当然、隣の巨大鹿である。
寝返りを打つ。
すると。
ぬっ。
「ひっ」
鹿の顔と目があった。
金色の瞳。
ルクスは静かにこちらを見ていた。
「な、なんですか……?」
ルクスは鼻を鳴らした。
ミハイルはその夜、ずっとうなされることとなった。
翌朝。
「うぅ……」
ミハイルが目を開ける。
すると。
真正面、超至近距離に鹿がいた。
「うわぁっ!?」
飛び起きる。
ルクスは心配そうに覗き込んでいた。
「……心配してくれてたんですか?」
ルクスは静かに頷く。
「いや優しいのは分かるんですけど近い近い近い」
朝食時。
ミハイルはふと思った。
「そういえばルクスって何食べるんでしょう」
「草じゃないか?」
ヴェルナが適当に言う。
「鹿だしな」
とりあえず。
ミハイルは近くの草を摘んできた。
「ほら、ルクス」
ルクスは草を見る。
数秒見つめる。
そして。
ぷいっと顔を逸らした。
「食べない……」
「好き嫌いあるタイプか?」
その時だった。
ルクスの視線が動く。
ミハイルの朝食。
肉入りスープだった。
「あ」
次の瞬間。
がぶっ。
「あーーーーーー!!?」
一瞬だった。
ミハイルの朝食は綺麗に消えた。
ルクスは満足そうだった。
「肉食!?」
「雑食かもしれんな」
俺は冷静だった。
「そんな分析いらないですよ!!」
数分後。
ミハイルは無言で草を噛んでいた。
「……なにしてるんだ僕」
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