70.立ち入り禁止区画調査
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朝。
冒険者ギルドの掲示板前は、あいも変わらず騒がしかった。
依頼書を奪い合う冒険者。
受付へ走る新人。
朝から酒を飲んで怒鳴られている男。
いつもの光景だ。
そんな中。
俺は一枚の依頼書を静かに見ていた。
『東部地域・立ち入り禁止区画調査依頼』
『現地住民による接近拒否』
『詳細不明』
ミハイルが隣から覗き込む。
「立ち入り禁止区画?」
「ああ」
俺は短く答えた。
「東のルクシア村付近にあるらしい」
「なんで立ち入り禁止なんですか?」
「知らん。それを調べる依頼だ」
「先生、そういう“詳細不明”好きですよね……」
「未知は情報価値が高い」
即答だった。
ミハイルは少しだけ遠い目をする。
最近、この返答にも慣れてきた。
そこへ。
「おい」
後ろから声が飛んだ。
振り返る。
ヴェルナだった。
片手をポケットへ突っ込んだまま、露骨に嫌そうな顔をしている。
「また変な依頼見てんな」
「変ではない」
「お前が受けたがる依頼が普通の依頼なわけあるか」
ヴェルナは依頼書を見る。
「ルクシア村の近くか……」
一拍。
「あー、あそこかもな」
「何か知ってるんですか?」
ミハイルが聞く。
「いや、昔ちょっと聞いたことある程度だ」
ヴェルナは肩をすくめた。
「村の掟で“入るな”って言われてる場所があるらしい」
「なんで?」
「知らん」
ミハイルは少しだけ不安そうな顔をした。
「……大丈夫なんですかね」
「大丈夫だ」
俺が即答する。
「死んだという話は聞かん」
「基準そこなんですか?」
「最低ラインだな」
「低いんだよ色々と」
ヴェルナがため息を吐く。
「どうせソロモンが妙なこと始める未来しか見えねぇし、俺も行く」
「え?」
ミハイルが目を丸くする。
「監視役だ」
「心外だな」
「この前サイクロプスの目玉増やしてた奴が何言ってんだ」
「興味深い結果だった」
「聞いてねぇよ」
ミハイルが少し笑う。
最近、この二人のやり取りにも慣れてきたようだ。
その時。
「お?」
聞き覚えのある声が飛んだ。
三人が振り返る。
そこには荷箱を抱えたエドが立っていた。
「久しぶりだな、ソロモン」
「エドか」
エドは笑いながら近づいてくる。
「最近またギルドで変な噂増えてるぞ」
「岩みたいな魔物を流行らせたってな」
「実際美味かった」
エドは腹を抱えて笑った。
「お前さんは相変わらずだなぁ。で、今日はどこ行くんだ?」
「東部地域のルクシア村だ」
依頼書を見せる。
「ルクシア村か...よそ者にはちと厳しい感じの村だったな」
「行ったことあるんですか?」
「商人だからな」
エドは肩をすくめた。
「あと飯屋少ないから、携帯食料持っとけ」
「重要情報だな」
俺が真面目に頷く。
エドは笑いながら三人を見る。
「帰ったら土産話くらい聞かせろよ?」
「ああ」
俺は短く答えた。
その後。
三人はギルドを出る。
朝の街は既に活気づいていた。
露店。
行商人。
荷馬車。
そんな喧騒の中を三人は歩いていく。
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