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光の勇者ソロモン 〜光を知り尽くした異端の冒険者〜  作者: カルロス
禁域

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68.ヴェルナとミハイル

読んでいただきありがとうございます!

『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。

 昼過ぎ。


 冒険者ギルド二階、資料室。


 そこで、僕は真剣な顔をして資料を読み漁っていた。


「毒持ちで……素材価値が低くて……見た目が気持ち悪い魔物……」


 机の上には複数の資料が広げられている。


『沼地の腐肉蛇』


『毒持ち洞窟蛙』


『深泥百足』


 どれも討伐報酬が安く、人気のない依頼対象ばかりだった。


「……こっちは食用不可か」


 僕は小さく唸る。


「でも処理方法次第では……」


「お前、何してるんだ」


 後ろから声が飛んだ。


 僕が振り返る。


 そこには呆れ顔のヴェルナが立っていた。


「ヴェルナさん」


「……調べ物か?」


 ヴェルナは机を見る。


 沈黙。


「なんで毒物図鑑読んでる?」


「え?」


「いや、先生が」


「あーもう駄目だ」


 ヴェルナは頭を押さえた。


「完全に染まってるじゃねぇか……」


「そんなに変ですか?」


「変だよ」


 即答だった。


 ヴェルナは資料を一冊持ち上げる。


『猛毒生物解体一覧』


「普通の新人冒険者はこんなの読まねぇ」


「でも知識は重要だって」


「方向性の問題だ」


 ヴェルナは深くため息を吐いた。


「いいか、冒険者ってのはな」


「まず“普通に生き残る”のが大事なんだよ。毒を食えるかで判断するもんじゃない」


 僕は少し考える。


「……でもソロモン先生は」


「アイツを基準にするな」


 食い気味だった。


 ヴェルナは椅子を引いて座る。


「ソロモンは例外だ」


「魔法も頭もおかしい」


「ついでに食の趣味も終わってる」


 ヴェルナは腕を組む。


「お前、この前ギルド裏で何解体してたか覚えてるか?」


「岩ダルマオコゼです」


「しかも嬉しそうに食ってた」


「美味しかったですよ?」


「駄目だこりゃ」


 ヴェルナは天井を見上げた。


「……ソロモンに任せると第二のソロモンが育つのか?」


「?」


「なんでもない」


 少しだけ黙る。


 その後、ヴェルナは立ち上がった。


「よし、今日は俺が同行する」


「え?」


「普通の冒険者の動きを教えてやる」


 僕が目を丸くする。


「依頼、受けるんですか?」


「ああ」


 ヴェルナは掲示板の方を見る。


『南の森のオーク討伐』


「繁殖しすぎて暴走してるらしい。よくある普通の依頼だ」


 一拍。


「普通の依頼って言いました?」


「言った」


「オークって普通なんですか?」


「少なくとも“毒持ちの岩を焼いて食う”よりは普通だ」


 僕は少しだけ納得しかける。


 だが。


「……ちなみにオークって食べられるんですか?」


「お前ほんとソロモンの弟子だな!?脂っこくて食えたもんじゃねぇよ!」


 資料室にヴェルナの声が響いた。


 周囲の冒険者たちが何事かと視線を向ける。


「なら脂を上手く取り除けば…」


 ヴェルナは額を押さえたまま、深く息を吐いた。


「まずそこから矯正する必要あるか……」


「矯正?」


「いいから来い」


 ヴェルナは僕の資料を閉じる。


「今日の目標は三つだ」


「無駄に危険なことをしない」


「必要以上に魔法を使わない」


「あと、“食えるかどうか”で魔物を見るな」


 僕は少しだけ困った顔をした。


「……努力します」


「努力じゃなく絶対やれ」


 ヴェルナはそう言いながら階段へ向かう。


 僕も慌てて後を追った。


 その背中を、資料室の受付係が静かに見送っていた。

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