57.VS変異種
読んでいただきありがとうございます!
『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。
一方その頃。
森の別方向では、轟音が響き続けていた。
木々が倒れる。
地面が抉れる。
変異種との戦闘は、未だ終わっていなかった。
「っ……!」
ガレス教官が大剣を受け止めるように構える。
直後。
変異種の前脚が叩き込まれた。
衝撃。
鎧が軋む。
ガレス教官の身体が数歩後退した。
「馬鹿げた膂力だな……!」
吐き捨てる。
通常種とは別格だった。
筋力。
耐久。
反応速度。
どれも異常。
しかも動きが妙に鋭い。
ただ暴れるだけではない。
戦い慣れているような動きすら見せていた。
「右へ回ります!」
エルフィナ教官が魔術を展開する。
風。
木々の葉が巻き上がる。
変異種の視界を遮るように吹き荒れた。
その隙。
私の光が閃く。
細い。
極限まで収束された光。
変異種の視界を狙った一撃。
だが。
変異種は咄嗟に顔を逸らした。
焼けた毛皮の臭いだけが広がる。
「避けた!?」
エルフィナ教官が目を見開く。
私は舌打ちした。
「学習しているな」
厄介だった。
既にこちらの攻撃を理解し始めている。
長引くほど不利になる。
だからこそ。
私は空を見上げた。
数分前に打ち上げた緊急信号。
学院側には届いているはずだ。
援軍は来る。
だが、それまでどれだけ時間がかかるか分からない。
そして。
教師たちの頭から離れないのは、生徒たちのことだった。
(どこへ行った)
私の眉間に皺が寄る。
距離が離れた。
追跡する余裕もなかった。
最悪、生徒だけで森を彷徨っている可能性もある。
焦りが生まれる。
それは僅かだった。
だが、現場では十分すぎる隙になる。
変異種は、その瞬間を見逃さなかった。
咆哮。
地面が爆ぜる。
「来るぞ!」
ガレス教官が叫ぶ。
変異種が一直線に突っ込んできた。
速い。
先ほどまでより明らかに速かった。
だが。
教師たちは教師だった。
焦っていても、身体は勝手に動く。
「伏せろ!」
私の声。
エルフィナ教官が即座に防壁を展開。
ガレス教官が横から踏み込み、軌道を逸らす。
衝突。
轟音。
変異種の巨体が僅かに揺らぐ。
その瞬間。
私の放つ光が走った。
極細。
高密度。
視界を焼くためだけに収束された光。
変異種の片目へ直撃する。
肉の焼ける臭い。
咆哮。
動きが止まる。
「今だ!!」
ガレス教官が踏み込む。
大剣が振り下ろされた。
衝撃。
変異種の身体が横へ吹き飛ぶ。
さらに。
エルフィナ教官の魔術が炸裂した。
爆音。
土煙。
木々が吹き飛ぶ。
数秒後。
土煙の向こうから、変異種がよろめきながら姿を現した。
片目は潰れている。
全身も傷だらけだ。
だが。
まだ生きている。
「チッ……!」
ガレス教官が構える。
しかし変異種は低く唸ったあと、森の奥へ跳び退いた。
そのまま木々の間へ消えていく。
静寂。
荒い呼吸だけが残った。
「……逃げたか」
エルフィナ教官が肩で息をする。
ガレス教官は剣を地面へ突き立てた。
「援軍来る前に逃げやがったな」
私だけは森の奥を睨み続けていた。
そして短く言う。
「生徒を探す」
即答だった。
「今すぐにだ」
その声には、隠しきれない焦りが混ざっていた。
面白い、続きが気になると思っていただけたら、
評価・ブックマーク・いいねなど頂けると嬉しいです!
あなたのワンクリックが作者のモチベーションにつながります。
評価はこの下の星マークをクリック(タップ)するだけ!
星一つからでも大歓迎です!




