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光の勇者ソロモン 〜光を知り尽くした異端の冒険者〜  作者: カルロス
学園

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55.トラブル

読んでいただきありがとうございます!

『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。

 三日目。


 森の空気にも、少しずつ慣れてきていた。


 朝露の匂い。


 湿った土。


 遠くで鳴く魔物の声。


 最初は不気味に感じていたそれらも、今では現場の音として認識できるようになっている。


 第七班は、予定ルートを順調に進行していた。


「右、二体」


 僕が小さく言う。


 シオンが即座に頷く。


「見えた」


 前へ出る。


 横からアレスも突っ込んだ。


「先もらうぞ!」


「突っ込みすぎよ!」


 レティアが叫ぶ。


 だがその声にも、最初の頃の険しさはない。


 アレスの動きを理解した上で注意している。


 それだけ、連携に慣れてきていた。


 飛び出した狼型魔物へ、アレスの剣が振り下ろされる。


 衝撃。


 一体が吹き飛ぶ。


 もう一体が横へ逃げる。


 そこへフェリクスの火球。


 逃げ道を塞ぐように炸裂した。


 怯んだ瞬間。


 シオンの剣が首元を切り裂く。


 戦闘終了。


 早い。


 昨日よりさらに無駄が減っていた。


「いい感じね」


 レティアが周囲を警戒しながら言う。


 アレスが笑う。


「もう余裕だろこれ」


「そういうこと言うと危ないって」


 僕が苦笑した。


 だが否定しきれない。


 実際、順調だった。


 教師陣の介入もない。


 魔物への対応も安定している。


 “自分たちはやれる”という感覚が、少しずつ全員の中へ入り込んでいた。


 だから。


 最初に異変へ気づいたのは教師たちだった。


「止まれ」


 ラスモディウス先生の声。


 一瞬で空気が変わる。


 前方。


 森の奥。


 そこから重い気配が近づいていた。


 木々が揺れる。


 地面がわずかに震える。


「……なんだ?」


 アレスが剣を構える。


 次の瞬間。


 巨大な影が木々を押し倒しながら現れた。


「っ!?」


 僕が息を呑む。


 狼型。


 だが大きさがおかしい。


 通常種の倍近い体格。


 黒ずんだ毛皮。


 異様に発達した前脚。


 そして。


 赤く濁った目。


「変異種か……!」


 ガレス教官が低く呟く。


 空気が一変する。


 今までの魔物とは明らかに違う。


 存在感そのものが重い。


「生徒は下がれ!」


 ラスモディウス先生が前へ出た。


 同時に教師三人が展開する。


 生徒たちの前へ壁のように立つ。


「ここから先は教師が対応する!」


 エルフィナ教官の声。


 変異種が咆哮した。


 空気が震える。


 次の瞬間、地面を抉りながら突進する。


 ガレス教官が真正面から迎え撃った。


 轟音。


 激突。


 木々が揺れる。


「すげぇ……」


 アレスが思わず呟く。


 教師たちの動きは、生徒とは次元が違った。


 ラスモディウス先生の光が閃く。


 一瞬だけ変異種の動きが鈍る。


 そこへエルフィナ教官の魔術が叩き込まれた。


 爆音。


 衝撃波。


 戦場が完全に教師側へ移る。


「下がるぞ!」


 レティアが言う。


 生徒たちは少し距離を取った。


 戦闘へ巻き込まれないように。


 自然と教師たちとの間に距離ができる。


 その時だった。


 上。


 木の枝が揺れた。


「……え?」


 僕が顔を上げる。


 黒い影。


 一体ではない。


 複数。


「上だ!!」


 シオンが叫ぶ。


 直後。


 猿型の魔物たちが一斉に飛び降りてきた。


「なっ!?」


 アレスが反応する。


 だが遅かった。


 猿型魔物は戦う気がない。


 一直線に荷物へ飛びついた。


「待て!」


 保存食。


 水袋。


 簡易道具。


 荷物を抱えたまま、凄まじい速度で木へ飛び移る。


「逃げた!?」


「荷物持ってかれたぞ!」


 僕の顔が青ざめる。


 食料。


 三日分の物資。


 この森では生命線だ。


「追うぞ!」


 アレスが即座に走り出した。


「ちょ、待ちなさい!」


 レティアが叫ぶ。


 だが既にシオンも動いている。


「放置は危険だ!」


 フェリクスも迷いながら後を追った。


 僕は一瞬だけ後ろを見る。


 教師たちは変異種の対応中。


 とてもこちらへ注意を向けられる状況ではない。


「ミハイル!」


 レティアの声。


 僕は反射的に走り出した。


 猿型魔物たちは枝から枝へ飛び移り、森の奥へ消えていく。


 それを追うように、第七班も深い森の中へ入っていった。


 そして。


 誰もまだ気づいていなかった。


 僕たちが、演習ルートから完全に外れていることに。

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