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光の勇者ソロモン 〜光を知り尽くした異端の冒険者〜  作者: カルロス
学園

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49.演習計画

読んでいただきありがとうございます!

『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。

 学院長室。


 窓の外では、夕陽が学院都市を赤く染めていた。


 机の上には複数の書類。


 演習計画書。


 危険区域指定図。


 参加予定名簿。


 そして、その中央に置かれた一枚の合同印章付き文書。


 学院長は椅子へ深く腰掛けながら、小さく息を吐いた。


 数日前。


 他校の学院長たちとの会議は長引いた。


 議題は一つ。


 近年増加している“実戦経験不足”について。


「術式理論は向上している」


「だが、生徒が現場で動けない」


 それが共通認識だった。


 安全性を重視しすぎた結果、生徒たちは綺麗な戦闘しかできなくなっている。


 整った術式。


 安定した発動。


 だが、実際の現場ではそんな余裕は存在しない。


 地形。


 恐怖。


 不測の事態。


 視界不良。


 想定外。


 それらが混ざるだけで、優秀な生徒ほど簡単に崩れる。


 だから決まった。


 三ヶ月後。


 複数学院による合同実地演習。


 教師付き添いのもと、実際の危険区域で数日間の野営を行う。


 目的は単純な戦闘ではない。


 生存。


 連携。


 判断。


 現場適応。


 それらを叩き込むための演習だった。


「このタイミングでソロモンがいることは幸運なのかね…」


 学院長は書類を見下ろす。


 偶然にしては出来すぎている。


 いや。


 ある意味では必然なのかもしれない。


 既存教育だけでは届かない部分。


 そこを理解している人材が必要だった。


 だから呼んだ。


 問題児だろうが危険人物だろうが関係ない。


 現場を知る人間が必要だった。


 コンコン。


 扉がノックされる。


「入りたまえ」


 教師たちが入室してくる。


 ラスモディウス。


 ジュディ。


 戦術教官数名。


 座学教師たち。


 全員の表情が硬い。


 学院長は立ち上がった。


「本日は今後の演習について説明する」


 室内の空気が少し変わる。


「三ヶ月後、他校合同演習を実施する」


 ざわつき。


「場所は北部森林区域」


「期間は三日」


「教師付き添いの実地演習となる」


 教師たちの表情が変わる。


「実地……?」


「危険区域ですか?」


「そこまで踏み込む必要が?」


 予想通りの反応だった。


 学院長は静かに頷く。


「必要と判断した」


「今の生徒たちは、綺麗すぎる」


 誰も反論できない。


「術式は優秀だ」


「理論も整っている」


「だが、“現場”を知らん」


 一拍。


「現場は教本通りには動かない」


「敵は待ってくれん」


「地面は平らではない」


「視界は常に保証されない」


「恐怖は集中を乱す」


 静かな声。


 だが重い。


「我々は“優秀な学生”ではなく、“生き残れる魔法使い”を育てねばならん」


 沈黙。


 教師たちは互いに顔を見合わせる。


 やがて、一人が口を開いた。


「……ソロモンを呼んだ理由も、それですか」


 学院長は小さく笑った。


「半分以上は偶然だがな」


「彼は極端だ」


「危険思想でもある」


「だが」


 窓の外を見る。


「現場で生き残る方法を知っている」


「そして、生徒たちに“考えさせる”ことができる」


 一拍。


「頭の硬くなった教師陣への刺激にもなるだろう」


 数人が気まずそうに視線を逸らした。


 学院長は続けた。


「もちろん危険もある」


「だからこそ監督は厳重に行う」


「演習では教師側も同行する」


「他校との連携も確認済みだ」


 書類が配られる。


 演習区域図。


 役割分担。


 危険想定。


 教師たちは読み始める。


 その中で。


 ラスモディウスだけが、別のことを考えていた。


(……あいつなら)


 ソロモンなら。


 この演習ですら、“教材”として利用する。


 きっとそうなる。


 それが分かるからこそ頭が痛かった。


 学院長は最後に静かに言った。


「三ヶ月後、生徒たちは変わるだろう」


 夕陽が差し込む。


 長く伸びた影が、会議室の床を覆っていた。

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