表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光の勇者ソロモン 〜光を知り尽くした異端の冒険者〜  作者: カルロス
学園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/126

42.授業

読んでいただきありがとうございます!

『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。

 講堂には、生徒たちが集められていた。


 ざわついている。


 理由は分かっている。


 前方の机に置かれているのが、“普段の授業では使わないもの”だからだ。


 ガラス板。


 鏡。


 水の入った透明な容器など。


「なんだあれ……」


「実験道具?」


「光魔法の授業だよな?」


 不安そうな声。


 興味半分の声。


 教師陣も後方で腕を組んでいる。


 警戒している顔が多い。


 やがて、扉が開いた。


 静かに、一人の男が入ってくる。


 無表情。


 特に威圧感はない。


 だが空気だけが少し変わる。


 僕は思わず姿勢を正した。


 男は教壇に立つ。


 生徒たちを一度見回し、短く言った。


「ソロモンだ」


 沈黙。


「冒険者をしている」


「あと、この学院の卒業生でもある」


 それだけだった。


 普通なら教師がするような長い自己紹介はない。


 生徒たちは困惑気味に顔を見合わせる。


「……以上だ」


「短っ」


 誰かが小声で言った。


 ソロモンは気にしない。


 そのまま机の上のガラス板を持ち上げた。


「さっそくだが質問だ」


「虹はどうやってできる?」


 突然の問い。


 数人が顔を見合わせる。


 やがて一人が手を上げた。


「雨が振ったあとに晴れる事が条件……ですか?」


「半分正解だ」


 ソロモンは窓のカーテンを閉める。


 そして光の球を魔法で作り出し、教室を照らし出す。


 そこへ鏡を向ける。


 反射。


 さらに光の球と鏡の間にガラス板へ通す。


 次の瞬間。


 壁へ、七色の帯が浮かび上がった。


「うわっ……!」


 講堂がざわつく。


 虹。


 小さい。


 だが間違いなく虹だった。


 僕も目を見開く。


 ソロモンは淡々と説明する。


「光は一つではない」


「波長…つまり色ごとに屈折率が違う」


「だから分離する」


 言いながら、虹を指でなぞる。


「人間はこれを“色”として認識している」


 聞き慣れない説明だった。


「では次」


 ソロモンは生徒側を見る。


「お前たちの光魔法を使え」


 困惑。


「え?」


「同じように鏡へ向けろ」


 数人が恐る恐る光球を生成する。


 教本通りの綺麗な光。


 それを鏡へ反射させ、ガラスへ通す。


 だが──


「……あれ?」


 虹にならない。


 白い光がそのまま映るだけだった。


 ざわつきが広がる。


「なんでだ?」


 ソロモンは静かに答える。


「違うからだ」


 講堂が静まる。


「お前たちが使っているのは、“自然の光に似せただけの魔力現象”だ」


「少なくとも、太陽光とは別物だ」


 僕は虹を見つめる。


 確かに違う。


 同じ“光魔法”なのに。


 同じに見えていたのに。


 結果は違う。


「術式は便利だ」


 ソロモンは続ける。


「安定している」


「再現性も高い」


「だが、人間に感じ取れる物しか再現はできない」


「なぜなら、術式は人間が作り出したものだからだ」


 一拍。


「自然の光には、もっと多くの情報が含まれている」


 そして。


 ソロモンは鏡を置いた。


 ガラス板から手を離す。


「……?」


 生徒たちが首を傾げる。


 その瞬間。


 何もない空間に、虹が浮かんだ。


「っ!?」


 講堂がどよめく。


 空中。


 何もない場所。


 そこに七色の光が弧を描いている。


 ガラスもない。


 鏡もない。


 なのに虹だけが存在していた。


「な、なんだあれ……!」


「魔法なのか!?」


 僕は息を呑む。


 ソロモンは虹を見ながら呟く。


「人間が理解している光は狭い」


「可視光と熱だけを見て、“これが光だ”と思い込んでいる」


「だが実際は違う」


 虹がわずかに揺らぐ。


「術式とは、誰かが自然現象を観測し、再現しようとした結果だ」


「つまり模倣だ」


「なら、模倣元を理解していなければ、本質には届かない」


 静寂。


 生徒たちは誰も喋れなかった。


 ソロモンは教壇へ軽く腰を預ける。


「お前たちは、“人間が認識できる光”だけを再現している」


「だから似ていても、本物とは違う」


「自然はもっと複雑だ」


 一拍。


「理解できないだけでな」


 講堂には静寂だけが残っていた。


「これからの授業では、お前たちには理解できない光について説明していく。その中には便利なものが色々あるんでな」


 その空気の中で。


 僕は、術式も詠唱も使用しない魔法を目の当たりにしたことで、頭の中はいっぱいとなってしまっていた。

面白い、続きが気になると思っていただけたら、

評価・ブックマーク・いいねなど頂けると嬉しいです!


あなたのワンクリックが作者のモチベーションにつながります。


評価はこの下の星マークをクリック(タップ)するだけ!

星一つからでも大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ