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光の勇者ソロモン 〜光を知り尽くした異端の冒険者〜  作者: カルロス
聖騎士

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36.不穏な気配

読んでいただきありがとうございます!

『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。

 夜。


 街の外れにある小さな宿。


 窓は閉じられ、灯りは最低限。


 その部屋の中で、エドは膝をついていた。


「……報告します」


 声は乾いている。


 喉が張り付くような感覚。


 目の前には、影。


 人の形をしているが、“人”ではない。


 存在の輪郭が曖昧なまま、そこに“いる”。


「ソロモンは予定通り北のリア村へ移動」


 影は何も言わない。


 ただ、気配だけが圧になる。


 エドは続ける。


「途中で聖騎士と接触」


「聖騎士長……セラフ・ヴァルクロードと思われる人物と戦闘」


 一拍。


 影の空気がわずかに揺れる。


「結果は……申し訳ないのですが、素人の私にはよくわかりませんでした」


 エドは唇を噛む。


「ですが、少なくともソロモンの勝利で終わったようです」


 沈黙。


 長い。


 心臓の音だけがやけに大きい。


「……それだけか」


 声が落ちる。


 低く、湿ったような音。


 エドは肩を震わせる。


「はい……ただ」


 言うべきか迷う。


 しかし、言わなければ“次”がない。


「ソロモンは、聖騎士長を圧倒しておりました」


 一瞬だけ、影が動いた。


「圧倒だと?」


「はい、私にはそのように見えました」


「……あの聖騎士長が?」


 静寂。


 影がわずかに“考えている”ような間。


 エドはその沈黙が一番怖い。


「もう一件あります」


 喉が渇く。


「ソロモンの行動ですが……」


 言葉を選ぶ。


「戦闘というより、“観察”に近いものでした」


 一拍。


「相手を倒す意志は薄く、興味が切れた段階で離脱しています」


 影が、初めて明確に反応した。


「興味……か」


 空気が重くなる。


 エドの背中に汗が流れる。


「はい」


「……面白いじゃないか」


 低い声。


 だが、その“面白い”は喜びではない。


 分析者のそれだった。


「裏切り者の方は?」


 即座の問い。


「ヴェルナは健在です」


「聖騎士団の攻撃は意味をなさなかったようです」


 一拍。


 影は静かに結論を落とす。


「監視継続」


「次の接触を待て」


 エドは小さく頷く。


「……了解しました」


 影が揺れる。


 気配が薄れていく。


 最後に残る声。


「家族の件は忘れるな」


 一瞬。


 エドの指が震える。


「……はい」


 扉は開いていない。


 だが、影は消えていた。


 残ったのは静けさだけ。


 エドは床に手をついたまま、しばらく動けなかった。


(俺はただ、商売がしたいだけだったのに……)


 その思考が声になることはなかった。

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