23.娯楽
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ギルドの掲示板は、いつも通り雑多だった。
討伐依頼、護衛依頼、行方不明者の捜索。
その中に、一枚だけ妙に浮いた紙が貼られている。
「育児補助用・娯楽道具の開発」
俺は足を止めた。
「……これ、よさそうだな」
隣でヴェルナが眉をひそめる。
「おい、今の依頼見たか?」
「ああ」
「なんでお前が興味持つんだよ」
「面白そうだから」
即答だった。
受付嬢が二人に気づいて、少し困った顔をする。
「あの、それですね……孤児院とかで使う予定のやつで、安全重視のやつなんですけど……」
「問題ない」
俺は依頼書をそのまま取る。
「錯覚系なら得意だ」
「得意って何だよ」
ヴェルナが小声で突っ込む。
受付嬢は一瞬だけ沈黙してから、笑顔を作った。
「えっと……じゃあ、詳細説明しますね?」
説明など聞くまでもない。
「立体視を利用すればいい」
「今の説明で分かる人いないと思うぞ」
ヴェルナが呟く。
――――
数日後。
納品物はギルドに持ち込まれた。
それは本だった。
分厚く、やけに綺麗な装丁。
表紙には「視覚遊戯図鑑」とだけ書かれている。
「……これが?」
受付嬢が恐る恐るページを開く。
次の瞬間。
ページの中の絵が“こちらを見た”。
「ひっ」
受付嬢が本を閉じる。
「な、なにこれ……」
「視線位置で構造が変わるようにしてある」
「説明が怖い」
ヴェルナが頭を抱えた。
ギルド職員たちも集まってきて、次々とページを開く。
しかし──
・絵が動いて見える
・背景が奥行きを持つ
・一瞬だけ違う風景に切り替わる
「うわ、すご……」
「いや、気持ち悪くないかこれ……?」
「なんか見てると酔うんだけど」
評価は真っ二つだった。
――――
配布先の孤児院。
子供たちは最初、普通に喜んだ。
「すごい!動いてる!」
「こっち見た!」
だが三日後。
「夜に本が勝手に開く」
「絵が喋ってる気がする」
「夢に出てくる」
という報告が相次ぐ。
保護者は困惑し、ギルドへ苦情が殺到した。
「これ本当に“あやす道具”ですか?」
受付嬢は遠い目をした。
「……一応、そういう名目では」
ヴェルナはその報告書を見て、静かに言う。
「お前さ」
「何?」
「子供向けの意味、理解してるか?」
「興味を持続させる設計だろ」
「そこじゃねぇよ」
俺は少しだけ考えてから頷いた。
「失敗か」
「失敗ってレベルじゃない」
――――
その夜。
ギルドの倉庫に、問題の本は封印された。
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