22.聖騎士長
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聖都アルカードにある聖堂の最深部。
リオネルは跪き、淡々と報告を続ける。
「工場跡地の件、吸血鬼の拠点は壊滅」
「現地冒険者による対応で処理済み」
聖騎士長は小さく頷く。
「続けろ」
「は」
リオネルは一枚の報告書を置いた。
「問題は二名です」
「一人はソロモン」
空気がわずかに張り詰める。
「光魔法使いとされる個体ですが……観測された術式は既存体系と一致しません」
聖騎士長の指先が止まる。
「光そのものの操作は確認できます。しかし挙動が異常です」
「無詠唱、無触媒、そして理解不能な現象を起こしてました」
リオネルは一拍置く。
「通常の光魔法では成立しない現象です」
聖騎士長は静かに目を細めた。
「異常個体か」
「はい」
紙をめくる音だけが響く。
リオネルは続ける。
「さらに、対象は吸血種個体と自然に同行しています」
その一言で空気が変わった。
「ヴェルナ。吸血種化個体」
「ギルド所属確認済み。浄化対象リスト該当」
聖騎士長はゆっくりと立ち上がる。
「吸血鬼が市井に紛れ込んでいたか」
「はい…ですが、それ以上に問題があります」
リオネルは声を低くした。
「ソロモンは、その吸血種と共に行動しています」
一瞬の沈黙。
聖騎士長の目がわずかに鋭くなる。
「ふむ…」
静かな声が落ちる。
「魅了されていると考えた方がよいな」
リオネルは頷く。
「その通りです」
聖騎士長は窓の外を見た。
光に満ちた都市。
秩序の象徴。
だがその視線は、さらに“上”を見ている。
「ヴェルナは浄化対象として処理」
「ソロモンは確保」
命令は明確だった。
しかし、その奥に別の意図が滲む。
「その際捕獲対象を死亡させてはならない」
聖騎士長の声は淡々としている。
わずかな間。
「魅了された人物を正気に戻すための実験として使用する」
それは命令であり、欲望でもあった。
リオネルは一礼する。
「了解しました」
聖騎士長は再び座る。
その表情は揺れない。
だが確かに、目的はそこにあった。
(ソロモンとやらはより上位の光魔法会得のための礎となってもらおう…)
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