表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光の勇者ソロモン  作者: カルロス
冒険者ソロモン
2/6

2

 ギルドは、今日も騒がしかった。扉を開けた瞬間、空気が変わる。


 酒の匂い。焼いた肉の香り。怒鳴り声と笑い声が混ざり合い、木造の建物全体を揺らしていた。どこにでもある冒険者ギルド。


 だが、その雑多な空気の中にも、独特の熱がある。


「だから俺はドラゴンを見たんだって!」


「お前それ三回目だぞ!」


 奥では赤毛の槍使いが机を叩き、周囲に笑われている。


 隣では全身鎧の大男が、山みたいな料理を無言で食べ続けていた。


 さらにその近くでは、小柄な獣人の少女が他人の皿から勝手に肉を奪い、悲鳴を上げさせている。


 いつもの光景だ。


 俺が中へ入ると、何人かの視線がこちらへ向いた。


「あ」


「曲芸師だ」


「今日は何捕まえてきたんだ?」


 勝手なことを言われる。だが、悪意はそこまで感じない。


 最初の頃はもっと警戒されていた。


 なにせ付いたあだ名が曲芸師だ。


 今では半分くらい“変な奴”として定着している。


 俺は無視して受付へ向かった。


 受付カウンターでは、栗色の髪を後ろでまとめた受付嬢が、書類を整理していた。


 俺に気づくと、ぱっと表情を明るくする。


「あ、ソロモンさん。おかえりなさい」


「……ただいま?」


 思わず変な返事になる。受付嬢は小さく笑った。


「今日は湖の依頼ですか?」


「まあな」


 俺は籠をカウンターへ置く。

 中ではミニクラーケンが十数匹、ぐったりと重なっていた。


 受付嬢は籠を覗き込み、少し目を丸くする。


「わ、すごい……。結構大きいですね」


「今日は当たりだった」


「相変わらず綺麗に捕りますよねぇ」


 そう言いながら、一匹を持ち上げる。半透明の身体が照明を受けて青く光った。


「普通、もっと暴れるんですけど……傷が全然ない」


「暴れられる前に捕まえればいい」


「簡単そうに言いますね……?」


 困ったように笑う。その反応を見ていると、少しだけ調子が狂う。


 警戒されたり、気味悪がられたりすることには慣れている。だが、こういう普通の対応には、あまり慣れていない。


「確認お願いしまーす」


 受付嬢が奥へ声をかける。


 やってきたのは、髭面の職員だった。無愛想な男だが、仕事だけは丁寧だ。


 籠を覗き込んだ瞬間、ぴたりと動きが止まる。


「……またお前さんか」


「何だよ」


 男はミニクラーケンを持ち上げ、触手の状態や目の濁りを確認する。


 そして数秒後、小さく息を吐いた。


「……問題なし。依頼達成だ」


「ありがとうございます!」


 受付嬢がぱっと笑顔になる。


 紙に素早く記入し、革袋を差し出してきた。


「はい、今回の報酬です」


 重さだけ確かめて、そのまま懐へ入れた。


「また依頼、お願いしますね」


「気が向いたらな」


 背を向ける。後ろではまた誰かが騒ぎ始めていた。


「だからドラゴンはいたんだって!」


「お前酔ってただけだろ!」


 笑い声が広がる。喧騒。酒の匂い。熱気。騒がしい場所は嫌いだ。


 だが――。


「……悪くないな」


 小さく呟き、俺はギルドの扉を押して外へ出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ