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光の勇者ソロモン 〜光を知り尽くした異端の冒険者〜  作者: カルロス
冒険者ソロモン

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19/126

19.囮

読んでいただきありがとうございます!

『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。

 ギルドを出た後、ヴェルナはしばらく黙って歩いていた。


 夜。街灯の明かりが石畳へ長く伸びている。


 俺はその横を適当に歩きながら、依頼書を眺めていた。


「……で、どうする」


 先に口を開いたのはヴェルナだった。


 俺は紙を折りながら答える。


「普通に探せば見つかるだろ」


「どうしてだ?」


「向こうも誘ってる」


 行方不明者。


 残された血痕。


 わざとらしい目撃情報。


 全部、“見つけてください”みたいな痕跡だった。


 ヴェルナは小さく息を吐く。


「罠か」


「だろうな」


「なら、どうする」


 俺は少し考える。


 それから、何でもないみたいに言った。


「二手に分かれるか」


「……囮か?」


「片方を攫わせる」


 ヴェルナが横目で見る。


「随分雑だな」


「でも一番早い」


 それは否定できなかった。


 吸血鬼は人を攫う。


 なら、狙わせればいい。


「で、どっちが囮やる?」


「お前」


「即答かよ」


「向いてるし」


「理由を聞いていいか?」


「顔」


「殴るぞ」


 俺が少し笑う。


「冗談だ」


「半分は本気だろ」


「まあ、向こうが狙ってるのはお前のほうだろ?」


 ヴェルナは少し黙った。


 否定はしない。


 実際、その通りだった。


「……で、お前は?」


「追跡する」


 短い返答。


 俺は夜空を見上げる。


「熱は隠せない」


「またその意味不明な探知か」


「便利だぞ」


「お前しか使えないだろ、それ」


 俺は肩をすくめた。


「たぶん、な」


 少し間。


 ヴェルナが低く聞く。


「俺が本当に攫われたら?」


「助けに行くよ」


「即答だな」


「死なれると困る」


「それ、仲間として?」


「実験対象として」


「帰るぞ」


 ヴェルナが真顔で言う。


 俺は少し笑った。


「冗談だって」


「信用できない」


「まあ、大丈夫だよ」


 俺の声は軽い。


 いつも通り。


「ちゃんと追う」


 その言い方だけは妙に自然だった。


 ヴェルナは数秒だけ黙り、それから小さく息を吐く。


「……わかった」


「じゃあ決まりだな」


 夜風が吹く。


 遠くで鐘の音が鳴った。


 街の裏路地。


 暗い場所はいくらでもある。


 吸血鬼が獲物を探すには、十分すぎるほど。


 そして数時間後。


 ヴェルナは、人気のない路地を一人で歩いていた。


 外套を深く被り、わざと足音を響かせる。


 気配はある。


 複数。


 屋根の上。


 路地裏。


 視線だけが、まとわりつくみたいに追ってくる。


「……来たか」


 小さく呟く。


 その瞬間。


 背後で風が動いた。


 速い。


 だが、ヴェルナも反応する。


 振り向きざまに剣を抜く――その前に。


 視界が歪んだ。


「っ……!?」


 甘い匂い。


 霧。


 魔法。


 一瞬だけ動きが鈍る。


 その隙だった。


 影が複数飛び込んでくる。


 腕を掴まれる。


 首を押さえ込まれる。


「捕まえた」


 低い声。


 ヴェルナは舌打ちした。


「数が多いな……!」


「暴れるなよ、裏切り者」


 拘束。


 魔封じ。


 嫌な感覚が腕へ絡みつく。


 ヴェルナの視界が揺れる。


 そのまま、闇の中へ引きずり込まれていった。


 ――そして少し離れた屋根の上。


「……攫われたな」


 俺がぼそりと呟く。


 赤外線探知。


 夜の街に、いくつもの熱源が浮かぶ。


 高速移動する複数の影。


「なるほど」


 俺は静かに立ち上がった。


 視線の先。


 街外れ。


 古い工場跡地の方向へ、熱源が集まっていく。


「罠っぽいなぁ」


 だが、その声に緊張感はない。


 むしろ少しだけ興味深そうだった。


「……まあ、いいか」


 さて、鬼が出るか、蛇が出るか…

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