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光の勇者ソロモン 〜光を知り尽くした異端の冒険者〜  作者: カルロス
冒険者ソロモン

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18/126

18.緊急依頼

読んでいただきありがとうございます!

『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。

 最近、街の空気が少し変わっていた。


 夜になると、人通りが減る。


 酒場の閉店も早くなった。


 衛兵の巡回は増え、商人達は日が落ちる前に店を畳むようになっている。


 理由は単純だった。


 人が消えている。


 最初は酔っ払いだった。


 次は、夜道を歩いていた商人。


 そして数日前には、冒険者まで帰らなくなった。


 ギルド内も、どこか落ち着かない。


「また一人消えたらしいぞ」


「今度は東区だってよ」


「魔物か……?」


「でも死体が見つからねぇんだろ?」


 不安げな声があちこちから聞こえる。


 俺は黙ったまま、その会話を聞いていた。


「……」


 嫌な感じだった。


 血の匂いがする。


 いや、正確には。


 “血を隠した痕跡”の匂い。


 吸血鬼は狩りを隠す。


 人間社会に紛れ込むためだ。


 だが、今回の件は違う。


 痕跡が中途半端に残っている。


 まるで――。


「誘ってるみたいだな……」


 小さく呟く。


 その時だった。


 ギルドの奥が少し騒がしくなる。


 受付嬢が掲示板へ新しい依頼書を貼り出した。


「緊急依頼?」


「調査依頼か」


 冒険者達が集まり始める。


 俺も視線を向けた。


 内容は単純。


 “連続失踪事件の調査”。


 ただし、危険度が高い。


 失踪した冒険者の中には、中堅クラスも含まれていた。


 受付嬢の表情もいつもより硬い。


「今回の依頼ですが、単独行動は禁止です」

 ギルド内へ声が響く。


「原因不明の襲撃が続いています。必ず複数人で行動してください」


 ざわめき。


 誰も軽口を叩かない。


 空気が重い。


 その中で。


「これでいいか」


 いつもの声が聞こえた。


 俺が振り向く。


 ソロモンだった。


 掲示板から依頼書を剥がしている。


「おい」


 俺が眉をひそめる。


「受けるのか?」


「ああ」


 ソロモンは依頼書を眺めたまま答える。


「なんか面白そうだし」


「……」


 俺が頭を押さえた。


「お前なぁ……」


「気にならないか?」


 ソロモンが軽く首を傾ける。


「わざわざ痕跡を残して、人を誘導してる」


「普通の魔物じゃない」


 少しだけ目が細くなる。


「しかも隠す気も薄い」


 その声音は、妙に楽しそうだった。


「……面倒な予感しかしない」


「俺は好きだぞ、こういうの」


「子供かお前は」


 ソロモンは少しだけ笑った。


「未知の生き物かもしれない」


「そこなのかよ」


 俺は深くため息を吐く。


 だが、その目は真面目だった。


「これは罠だ」


「だろうな」


「理解してるなら行くな」


「でも気になる」


「……」


 俺は黙ってしまう。


 本気で言っている顔だった。


 こいつは危険だから行くんじゃない。


 危険そうだから興味を持っている。


「……お前、たまに怖いんだよ」


「よく言われる」


 悪びれた様子もない。


 俺はもう一度ため息を吐いた。


 それから受付へ向かう。


「あの依頼、同行申請する」


 受付嬢が目を丸くした。


「ヴェルナさんも行くんですか?」


「ああ」


 ちら、と後ろを見る。


 ソロモンは依頼書を眺めながら、 「行方不明者ってどれくらい消えると大事件扱いなんだろうな」 とか考えている顔をしていた。


「……一人で行かせると不安だ」


 受付嬢が妙に納得した顔になる。


「わかります」


「わかるのかよ」


「なんとなくですけど」


 書類へ記入しながら、受付嬢は小さく笑った。


「でも、ちょっと安心しました」


「?」


「ソロモンさん、放っておくと変な方向へ行きそうなので」


「もう行ってるだろ」


「否定できませんね」


 俺は疲れた顔で目を閉じた。


 その横で。


 ソロモンは依頼書を見ながら、ぼそりと呟く。


「……わざわざ誘ってるなら、面白い物が見れるかもな」


 その目は、普段通り好奇心で満ち溢れていた。

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