15.実験
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宿舎の部屋は、思ったより普通だった。
二段ベッド。小さな机。椅子が二つ。
窓は狭く、外からギルドの喧騒が少しだけ聞こえる。
ヴェルナはベッドへ腰を下ろし、小さく息を吐いた。
「……静かだな」
「昼はそうでもないけどな」
向かいで俺は色々なものを机へ並べていた。
紙。 工具。 よくわからないガラス瓶。
あと、妙に怪しい粉。
「お前、それ何してるんだ?」
「趣味」
「嫌な予感しかしない答えだな……」
ヴェルナは警戒した目を向ける。
俺は気にした様子もなく、小鍋を火にかけ始めた。
「今日は俺が作る」
「料理できるのか?」
「そこそこ」
「その『そこそこ』が信用できないんだよ」
数十分後。
机に料理が並んだ。
簡単なスープ。焼いたパン。肉料理。
見た目は普通だ。
「……意外とまともだな」
「失礼だな」
ヴェルナはスープを口へ運ぶ。
一口。
二口。
「……ん?」
「どうした?」
「いや」
ヴェルナは少し首を傾ける。
「なんか変な風味がする」
「気のせいじゃないか?」
俺は平然と答える。
ヴェルナはもう一口飲む。
「……にんにくか?」
「そうだな」
「妙に多くないか」
「疲労回復にいいらしい」
「へぇ」
ヴェルナはそのまま普通に食べ続けた。
「……」
俺はその姿をじっと見つめる。
「なんだ?」
「別に」
効かない。
少なくとも食べる分には問題なさそうだった。
頭の中のメモ帳に記録しておこう。
その日の夜。
ヴェルナはベッドで本を読んでいた。
俺は机でとある物を組み立てている。
「なあ」
「ん?」
「昼からずっと何作ってるんだ」
「実験器具」
「嫌な予感しかしない」
「安心しろ。たぶん爆発はしない」
「する可能性あるのかよ……」
ヴェルナが呆れて視線を戻した、その時。
俺が後ろから、すっと何かを掲げた。
銀色の十字架。
「……?」
数秒。
ヴェルナは何も反応しない。
普通に本を読んでいる。
「……何してるんだ、お前」
「いや」
俺は十字架を下ろした。
「なんとなく」
「絶対嘘だろ」
「気のせいじゃないか?」
「その返し流行ってるのか?」
ヴェルナが半眼になる。
俺は少し考える。
「銀も平気、と」
「おい今なんか言ったな?」
「独り言」
「嫌な予感しかしねぇ……」
ヴェルナは本を閉じた。
「お前さ」
「ん?」
「俺で遊んでないか?」
「そんなことない」
「間があった」
「気のせいだ」
「絶対違うだろ……」
しばらく沈黙。
窓の外では、まだ誰かが騒いでいる。ドラゴンがどうとか聞こえた気がした。
ヴェルナはため息を吐く。
「……まあいい」
「いいのか」
「お前に細かいこと言ってたら疲れる」
「慣れてきたな」
「不本意だ」
俺が少し笑う。
ヴェルナはその顔を見て、また小さく息を吐いた。
「で、次は何試す気だ」
「まだ秘密だ」
「やっぱり実験してるじゃねぇか!!」
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