115.治療
読んでいただきありがとうございます!
『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。
高評価、低評価、感想、酷評まで何でも歓迎しております(笑)
読者の皆さまの反応が作者の活力になります。
少しでも面白いと思っていただけたら、お気軽に感想など残していただけると嬉しいです!
研究室には再び試験管が並べられていた。
俺は配合比率を少しずつ変えながら記録を書き続ける。
「ルクスの角を〇・五グラム。」
「ヴェルナの血液を二ミリリットル。」
「薬草は三滴。」
配合を変えるたび、試験管の中では違う反応が起こる。
あるものは激しく発泡し。
あるものは黒く変色し。
あるものは何も起こらない。
十数回の実験の末。
一本だけ、安定した反応を示す試験管が残った。
「これだ。」
俺は静かに頷く。
「成功ですか!」
「いや。」
首を横に振る。
「試験管の中で成功しただけだ。」
「人体では分からん。」
ミハイルが一歩後ろへ下がる。
「先生……。」
「僕を見ないでください。」
俺は少し考えた。
「そうだな。」
「まずは俺で試そう。」
「えっ?」
「先生!?」
ミハイルとヴェルナが同時に声を上げる。
「危険ですよ!」
「だから実験だ。」
俺は当然のように答えた。
「材料は血液へ直接入れる方法も考えた。」
「飲ませる方法も考えた。」
「だが。」
机へ図を書き始める。
「全身へ均等に届けるには毛細血管から吸収させる方が効率がいい。」
「そのため皮膚を僅かに傷付ける薬剤を追加する。」
「先生、それ人体に使う薬じゃありませんよね?」
「今から使う。」
「そういう意味じゃありません!」
俺は薬液を調合する。
最後に蛇の出血毒を一滴。
皮膚浸透剤を数滴。
ゆっくりと混ぜ合わせる。
「完成だ。」
ためらいなく薬液を自らの腕へ振りかけた。
ジュッ。
皮膚へ触れた瞬間、小さな痛みが走る。
「……。」
チクチクとした刺激。
やがて熱を帯び始める。
痛みは腕から肩。
胸。
背中。
全身へ広がっていく。
「先生!」
ミハイルが駆け寄ろうとする。
「来るな。」
俺は苦しそうに手を上げる。
「観察を続けろ。」
皮膚が細かく裂け始める。
薬液が全身へ浸透していく。
痛みは激しさを増し、ついに立っていられなくなった。
そのまま床へ倒れ込む。
呼吸が荒い。
全身が痙攣する。
ヴェルナは拳を握り締める。
「やはり止めるべきだったか……。」
「でも!」
ミハイルには何もできない。
ただ時間だけが過ぎていく。
五分。
十分。
十五分。
倒れたままだった俺の指先が僅かに動いた。
「……成功だ。」
ゆっくりと身体を起こす。
首元へ触れる。
脈。
瞳孔。
皮膚。
魔力。
一つずつ確認していく。
「副作用は強い。」
「だが吸血鬼化ウイルスは検出されない。」
静かに頷く。
「治療法は完成した。」
「先生!」
ミハイルが笑顔になる。
しかし次の瞬間、その笑顔は凍り付いた。
俺は完成した薬液を新しい瓶へ注ぐ。
そして。
魔封じの鎖で拘束されたミハイルの前へ立った。
「先生……?」
「次は臨床試験だ。」
「えっ。」
「いや。」
「ちょっと待ってください。」
「待たない。」
「先生ぇぇぇぇぇ!!」
薬液がミハイルへ振りかけられる。
全身が震える。
「うわあああああっ!!」
叫び声が研究室へ響き渡る。
やがて身体から力が抜け、ミハイルは静かに意識を失った。
俺は時計を取り出す。
「経過観察開始。」
ペンを手に取り、新しいページを開く。
その表紙には、静かにこう書かれていた。
『吸血鬼化解除実験 第一例』
面白い、続きが気になると思っていただけたら、
評価・ブックマーク・いいねなど頂けると嬉しいです!
あなたのワンクリックが作者のモチベーションにつながります。
評価はこの下の星マークをクリック(タップ)するだけ!
星一つからでも大歓迎です!




