113.いつも通り
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俺はゆっくりと立ち上がる。
首元へ手を当て、傷が完全に塞がっていることを確認する。
「……なるほど。」
牙痕へ指先を添え、小さく頷いた。
「ミハイルを治すついでだ。」
「サンプルが増えたことを喜ぼうじゃないか。」
「そんなこと言ったって!」
ミハイルが思わず声を張り上げる。
「あと少しで死ぬところだったんですよ!?」
「安心しろ。」
俺は平然と答えた。
「死ぬのは二度目だ。」
「だから問題はない。」
「……一体何を言ってるんですか?」
ミハイルは頭を抱えた。
そんなことがあってたまるものか。
ヴェルナも呆れたようにため息をつく。
「お前は……本当に変わらないな。」
「ああ。」
俺は机の上へ並ぶ試験管を見渡す。
ミハイルの血液。
ヴェルナの血液。
そして今、新たに加わった自分自身の血液。
「吸血鬼が三体。」
「比較対象としては十分だ。」
そう言うと、何事もなかったかのように紙へ新しい項目を書き始める。
「先生!?休んでください!怪我人なんですよ!?」
俺は首元を指差す。
「治った。」
「そういう問題じゃありません!」
ミハイルの叫びが研究室へ響く。
ルクスは困ったように首を傾げ、ヴェルナは苦笑しながら椅子へ腰掛けた。
「……止めても無駄だ。こういう男だからな。」
俺は新しい試験管へ自分の血液を採取する。
人間だった頃との違い。
ミハイルとの違い。
ヴェルナとの違い。
調べるべきことは山ほどある…が。
ペンを走らせながら、小さく呟いた。
「治療法の方向性は見えてきた。」
「あと一歩だ。」
その言葉を聞いたミハイルとヴェルナは顔を見合わせる。
俺の口から「見えてきた」という言葉が出る時は、決まって何かを掴んでいる時だった。
研究室には再び紙をめくる音とペンの走る音だけが響き始める。
吸血鬼化解除への研究は、新たな段階へと進もうとしていた。
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