111.VSグラン
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グランは静かに笑う。
「さて、君一人で何ができるのかな?」
俺は答えない。
ただ静かに、影の動きを見つめていた。
地面を這う影。
身体を覆う影。
その全てへ視線を向ける。
「……なるほど。」
小さく呟く。
俺は右手をゆっくりと掲げた。
「魔力線。」
その瞬間。
グランの周囲を走っていた黒い影がぴたりと止まる。
「……何?」
影は蠢こうとする。
だが動かない。
まるで空間そのものへ縫い付けられたかのように固定されていた。
「馬鹿な……!」
グランの表情から初めて余裕が消える。
「影は魔力線を通して制御している。」
「ならば、その魔力線を固定すればいい。」
俺は淡々と説明する。
「種さえ分かれば、恐れる必要もないな……。」
指先へ光が集まる。
今度は眩しさではない。
高密度の紫外線。
熱。
可視光。
幾重にも圧縮された光が一点へ収束する。
「終わりだ。」
閃光。
草原全体を飲み込むほどの白い光が放たれた。
影は悲鳴を上げるように揺らぎ、次々と崩壊していく。
「ぐっ……あ゛あ゛ああああぁぁぁぁぁぁ!」
黒い外套は焼け焦げ、全身はあっという間に灰になる。
俺は肩で息をしながら答える。
「現象には必ず理由がある。」
「理由が分かれば、対処できる。」
静寂が訪れる。
その場にいた聖騎士達は、誰一人として言葉を発せなかった。
あれほど苦戦した吸血鬼を、一人で討伐した。
その事実だけが重く残る。
セラフはゆっくりと剣を納めた。
「総員、撤退。」
「負傷者の救護を最優先とする。」
「これ以上の戦闘は不可能だ。」
聖騎士隊は互いを支え合いながら草原を後にした。
アルトレイン。
「ソロモン先生!」
ミハイルが俺を見つけて声をあげる。
「その怪我……!」
ヴェルナも静かに表情を曇らせる。
「随分と無茶をしたようだな。」
ルクスも心配そうに鼻先を擦り寄せる。
「……」
「問題ない。」
俺は短く答えた。
「少し休めば回復する。」
そう言って椅子へ腰を下ろす。
ようやく気が緩んだ、その時だった。
部屋の空気が変わる。
「よくも……」
聞き覚えのある声。
誰も気付かなかった。
そこに"いた"ことに。
影から一人の男が姿を現す。
レオニス。
その目は冷たく、底知れない怒りを宿していた。
「よくも私の可愛い手駒を一つ減らしてくれたな……。」
俺が立ち上がろうとする。
しかし。
遅い。
「前に言ったはずだ。」
レオニスが静かに笑う。
「次は殺す、と。」
一筋の閃き。
誰も反応できなかった。
俺の視界がゆっくりと傾く。
身体から力が抜ける。
「ソロモン!」
ヴェルナの叫びが響く。
床へ転がる音だけが、静かな研究室に虚しく響いた。
レオニスは無表情のまま。
「終わりだ…」
1人の人生の終了を宣言した。
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