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光の勇者ソロモン 〜光を知り尽くした異端の冒険者〜  作者: カルロス
治療

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109.目標変更

読んでいただきありがとうございます!


『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。


高評価、低評価、感想、酷評まで何でも歓迎しております(笑)


読者の皆さまの反応が作者の活力になります。


少しでも面白いと思っていただけたら、お気軽に感想など残していただけると嬉しいです!

 息が荒い。


 視界が揺れる。


 全身が鉛のように重い。


 魔力も、体力も、限界だった。


「はぁ……。」


 俺は一歩踏み出そうとした。


 だが、膝が言うことを聞かない。


 力が抜ける。


 そのまま前へ倒れ込んだ。


 ドサッ。


 草原へ身体が沈む。


 誰も動かない。


 近衛隊も。


 セラフも。


 ただ倒れた俺を見つめていた。


「……勝ったのか。」


 一人の聖騎士が呟く。


 セラフは首を横へ振った。


「違う。」


「あの男は最後まで誰一人として命を奪わなかった。」


「我々が勝ったとは言えない。」


「ただ相手が戦い続けられなくなっただけだ。」


 その言葉が終わるより早く。


 ゾクリ。


 全員の背筋を寒気が走った。


「ようやく終わったか。」


 聞き慣れない男の声。


 足元。


 草原へ伸びた影がゆっくりと膨らみ始める。


 黒い霧。


 影が立ち上がる。


 その中から、一人の男が姿を現した。


 黒い外套。


 赤色の瞳。


 不気味な笑み。


「初めまして。」


「私はグラン。」


「この時を待っていたよ。」


 セラフが即座に剣を構える。


「何者だ。」


「吸血鬼ですよ。貴方がたの敵です。」


 その一言だけで十分だった。


 圧倒的な魔力が周囲を包み込む。


 先ほどまでの戦場とは比べ物にならない。


 空気が重い。


 立っているだけで本能が警鐘を鳴らしていた。


「全隊!」


 セラフが叫ぶ。


「目標変更!」


「目の前の吸血鬼を討伐する!」


「「はっ!!」」


 傷付いた聖騎士達が再び武器を構える。


 近衛隊も立ち上がる。


 全員がグランだけを見据えた。


「いい判断だ。」


 グランは笑う。


「だが、遅い。」


 その瞬間。


 影が爆発的に広がった。


 大地を這う黒い影。


 聖騎士達は一斉に飛び退く。


 しかし影は生き物のように追い掛けてくる。


「散開!」


 セラフの指示が飛ぶ。


 魔法部隊が一斉に光魔法を放つ。


 閃光が影を貫く。


 だが。


 影は止まらない。


「効かない……!?」


 重装備隊が盾を構える。


 近衛隊が突撃する。


 セラフ自身も剣を振るう。


 それでも。


 グランは笑っていた。


「遅い。」


 影が揺れる。


 その姿が消える。


 次の瞬間には、別の影から姿を現していた。


 誰も捉えられない。


 誰も追い付けない。


 草原へ倒れたままの俺は、薄く目を開ける。


 身体は動かない。


 だが意識ははっきりしていた。


「……なるほど。」


 視線だけをグランへ向ける。


 影の移動。


 魔力の流れ。


 発動までの時間。


 癖。


 一つ一つを観察し、頭の中へ刻み込んでいく。


 戦えなくてもいい。


 見られれば十分だ。


 俺の研究者としての目だけは、最後まで止まることはなかった。

面白い、続きが気になると思っていただけたら、

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