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光の勇者ソロモン 〜光を知り尽くした異端の冒険者〜  作者: カルロス
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108.消耗

読んでいただきありがとうございます!


『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。


高評価、低評価、感想、酷評まで何でも歓迎しております(笑)


読者の皆さまの反応が作者の活力になります。


少しでも面白いと思っていただけたら、お気軽に感想など残していただけると嬉しいです!

 蒸気が晴れる。


 近衛隊は再び陣形を組み直していた。


「まだ来るか。」


 俺は息を整える。


 呼吸は乱れていない。


 しかしローブは所々が裂け、腕や頬には浅い傷が増えていた。


 魔力も決して無限ではない。


 六属性の魔法を絶え間なく操り続けた代償は、確実に身体へ現れ始めていた。


「包囲を維持しろ!」


 近衛隊が同時に踏み込む。


 前方から二人。


 左右から二人。


 後方から一人。


 残る三人が援護へ回る。


「土。」


 地面が隆起する。


 先頭の二人が体勢を崩した。


「風。」


 横から迫る剣が僅かに逸れる。


「水。」


 足元が濡れ、踏み込みが鈍る。


「炎。」


 立ち昇る熱気が視界を歪ませる。


 その僅かな隙を突き、俺は近衛騎士の懐へ滑り込んだ。


 剣は振るわない。


 掌を胸当てへ当てる。


「雷。」


 鎧越しに衝撃が走る。


「ぐっ……!」


 騎士はその場へ膝をついた。


 命に別状はない。


 だが戦闘は続けられない。


「一人目。」


 振り返る間もなく、二人目が迫る。


 俺は光を屈折させ、自らの姿を揺らした。


 剣が幻影を斬る。


 その背後へ回り込み、肩へ軽く触れる。


「氷。」


 腕だけが凍り付き、剣を握れなくなる。


「二人目。」


「怯むな!」


 残る近衛隊が一斉に襲い掛かる。


 俺も止まらない。


 土が槍を受け止め。


 風が斬撃を逸らし。


 炎が距離を作り。


 水蒸気が姿を消す。


 雷が一瞬だけ動きを止める。


 光が死角を生み出す。


 一人。


 また一人。


 近衛騎士達は命を落とすことなく戦闘不能となっていく。


 しかし。


「はぁ……。」


 俺の呼吸も、すでに乱れ始めていた。


 赤外線を維持し続けた負荷。


 光を屈折させ続けた魔力。


 全属性魔法の連続使用。


 どれも身体への負担は小さくない。


 肩口から流れた血が袖を赤く染める。


 頬の傷も増え、ローブは焦げ、裾は泥に汚れていた。


「……さすがに多いな。」


 そう呟いた時。


 セラフはその姿を見ていた。


 勝てない。


 それでも。


 目の前の男もまた限界へ近付いている。


「近衛隊!」


「最後の総攻撃だ!」


 残った近衛騎士達が雄叫びを上げる。


 俺は静かに構え直した。


 その戦場から、遥か離れた木陰。


 いや。


 木陰ではない。


 そこにあった影が、僅かに揺らぐ。


「ククク……。」


 低い笑い声。


 影の中から、一人の男が戦場を眺めていた。


 赤い瞳。


 黒い外套。


 楽しげに細められた目。


「いい具合に消耗している。」


 男――吸血鬼グランは口角を吊り上げる。


「もう少しだ。」


「もう少し互いに削り合え。」


 誰にも気付かれぬまま。


 その視線だけが、戦場へ静かに注がれていた。

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