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光の勇者ソロモン 〜光を知り尽くした異端の冒険者〜  作者: カルロス
冒険者ソロモン

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11/126

11.宿舎

読んでいただきありがとうございます!

『光の勇者ソロモン』毎日更新中です。

 朝。


 ギルドは昨日より少し静かだった。


 酒臭い冒険者が机に突っ伏し、受付嬢達が朝の書類整理に追われている。


 そんな中、ヴェルナは妙に居心地悪そうに立っていた。


「……落ち着かないな、ここ」


「今さらだろ」


 俺は適当に返す。


「洞窟よりはマシだ」


「比較対象がおかしい」


 ヴェルナがため息を吐く。


 受付カウンターでは、いつもの受付嬢が書類をまとめていた。


 俺達に気づくと、小さく手を振る。


「あ、ソロモンさん。それと……」


 そこでヴェルナを見る。


 一瞬だけ視線が止まる。


 でも、それだけだった。


 見た目は普通の人間だ。


 体温が少し低いくらいじゃ、普通は気づかない。


「新しい方ですか?」


「ヴェルナだ」


「どうも」


 ヴェルナが軽く頭を下げる。


 受付嬢は営業用の笑顔を浮かべた。


「冒険者登録ですね?」


「できるのか?」


「特に問題はありませんよ?」


「緩いな」


「街としては人手不足なので」


 にこやかに返される。


 俺はその様子を見ながら、小さく息を吐いた。


 結局、登録は問題なく通った。


 ヴェルナは少しだけ不思議そうな顔をしている。


「……変な感じだな」


「何が」


「追われる側だったのに、今は冒険者証持ってる」


「人生そんなもんだろ」


「お前、時々適当に深いこと言うな」


 そんな会話をしながら、俺達はギルドを出た。


 問題はそのあとだった。


 ヴェルナには住む場所がない。


「宿は?」


「金がない」


「なるほど」


「お前は?」


「家ならある」


「あるのかよ」


 ヴェルナが少し呆れた顔をする。


「じゃあ解決じゃないか」


「いや、狭い」


「どっちだよ」


 結局、ヴェルナは冒険者専用の宿舎へ入ることになった。


 ギルド併設の簡易宿泊施設。


 安い代わりに壁は薄い。


 だが、冒険者には人気らしい。


「まあ、雨風しのげるなら十分か」


 ヴェルナはそう言って部屋へ入っていった。




 その日の夜。


 俺は自宅で寝ていた。


 静かな夜だった。


「……」


 半分寝ている。


 意識も曖昧。


 その時だった。


 耳元。


 小さな羽音。


「……蚊か」


 寝ぼけたまま呟く。


 赤外線探知。


 小さい熱源が一つ、顔の近くを飛んでいる。


 鬱陶しい。


 俺は目も開けず、軽く指を動かした。


 赤外線を収束。


 小さく焼く。


 それだけのつもりだった。


 次の瞬間。


 ぱちっ。


「……ん?」


 変な音。


 数秒遅れて、熱を感じた。


 目を開ける。


 布団の端が燃えていた。


「……あ」


 布が、一気に火を広げる。


「いや待て」


 遅い。


 火が走る。


 棚へ移る。


 カーテンへ燃え移る。


「……うわ」


 赤外線は得意だ。


 だが、普通の消火はそこまで得意じゃない。


 結果。


 十分後。


 俺は燃える家を前に立っていた。


「…………」


 近所の人達が騒いでいる。


 バケツ。

 怒鳴り声。

 煙。


「ソロモンさん!? 何があったんですか!?」


「蚊」


「はい?」


「蚊を殺そうとした」


 沈黙。


 説明してる俺も意味がわからない。


 翌日。


 俺はギルドの受付にいた。


 受付嬢がものすごく微妙な顔をしている。


「……つまり、自宅が燃えたと」


「燃えた」


「蚊で?」


「蚊だな」


 受付嬢が頭を抱えた。


 ヴェルナは隣で肩を震わせている。


「お前……っ、ははっ……!」


「笑うな」


「いや無理だろそれは……!」


 最終的に。


「……というわけで、宿舎の空き部屋を案内しますね」


 受付嬢が疲れた顔で言った。


「ただ、今かなり埋まってまして……」


 嫌な予感。


「相部屋になります」


「……誰と?」


 受付嬢がにこりと笑う。


「ヴェルナさんです」


 数秒の沈黙。


 そのあと。


「よろしくな、蚊殺し」


「その呼び方やめろ」


 ヴェルナが笑う。


 俺は小さくため息を吐いた。

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