104.実験の続き
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研究はまだ終わらない。
「次はヴェルナの血液だ」
以前採取しておいたヴェルナの血液を取り出す。
試験管へミハイルの血液を数滴。
続いてヴェルナの血液を加え、ゆっくりと攪拌する。
赤黒い血液同士は何事もなく混ざり合った。
一分。
二分。
特に変化は見られない。
「反応なし……か」
結果を記録し、次の実験へ移る。
「ヴェルナ。」
「……何だ。」
「ミハイルの血を吸ってみてくれ。」
ヴェルナは試験管を一瞥すると、静かに首を横へ振った。
「断る。」
「理由は?」
「吸血はしたくない。」
その答えに迷いはない。
吸血鬼でありながら、人の血を吸うことを極力避けてきたヴェルナらしい返答だった。
「そうか。」
無理に勧めても意味はない。
試験管を机へ戻す。
「では次だ。」
引き出しから、以前ルクスの角を削って採取しておいた欠片を取り出す。
星空のような輝きを放つ角の破片。
「ミハイル。」
「は、はい……。」
「少し痛むぞ。」
「え?」
ゴッ。
鈍い音が研究室へ響いた。
「いっっっっっ!!」
角の破片が額へ直撃し、ミハイルの身体が仰け反る。
額から一筋の血が流れ落ちた。
しかし、その血は床へ落ちる前に止まる。
裂けた皮膚が蠢くように動き始めた。
肉が盛り上がり、傷口がみるみる塞がっていく。
十秒も経たないうちに、額には薄く血痕が残るだけとなっていた。
「再生速度は通常の人間を大きく上回る……。」
傷口を観察しながら記録を取る。
外傷に対する回復能力。
これも吸血鬼化による影響と考えて間違いないだろう。
「い、いきなり殴らないでくださいよ……。」
「衝撃による変化を確認したかった。」
「結果は?」
「特に変化なしだ。」
「良かったのか悪かったのか分かりませんよ……。」
その時だった。
コンコン。
研究室の扉が叩かれる。
「ソロモンさん!」
ギルド職員の慌てた声が聞こえてくる。
「大変です!」
「聖騎士隊がギルドへ到着しました!」
「あなたに会わせろと言っています!」
ペンを置く。
どうやら、静かに研究を続けられる時間は終わったようだ。
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