102.実験開始
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「……本当にやるんですか?」
僕は乾いた声でそう呟いた。
両手首、両足首、腰、首。
全身が魔封じの鎖によって拘束されている。
少しでも動こうとすれば鎖が鳴り、魔力が体の内側から力が抜けていく。
逃げることなど不可能だった。
吸血鬼化した自分が危険な存在であることは理解している。
だから拘束されること自体に不満はない。
問題は目の前に並べられた大量の試験管だった。
その全てに自分の血液が入っている。
「当然だ」
ソロモン先生は即答した。
まるで今日の天気を答えるかのような気軽さだった。
机の上には紙束とペン。
薬草。
瓶詰めの液体。
そして見たこともない器具が並んでいる。
「原因が分からなければ治療法も分からない」
「だから調べる」
「簡単な話だ」
簡単な話じゃない。
僕は心の中で叫んだ。
自分の血液を使って実験を行う。
言葉だけなら普通だ。
だが、相手はソロモン先生である。
何をするか分かったものではない。
「まずは紫外線」
ソロモン先生が指先から光を放つ。
紫色の光が試験管へと照射された。
次の瞬間。
ジュウゥゥゥッ!!
血液が激しく泡立った。
まるで熱した鉄板に水を落としたような音が響く。
血液が試験管の中で暴れ回る。
赤黒い液体が白煙を上げながら急速に減少していった。
「えっ」
僕が目を見開く。
数秒後。
試験管の中身は完全に消滅していた。
「蒸発……?」
ソロモン先生はメモを取る。
「紫外線への耐性は極めて低いらしい」
さらさらと紙に書き込む。
僕は少し青ざめた。
つまり今の現象が自分の体内で起きれば。
「死にますよね?」
「死ぬな」
「ですよね!?」
「試してみるか?」
「試しませんよ!!」
次の試験管を手に取る。
「赤外線」
赤い光が照射される。
今度は血液がゆっくりと沸騰した。
泡が発生し、温度が上昇していく。
だがそれだけだった。
「加熱反応のみ」
メモ。
次。
「放射線」
見えない光が照射される。
数秒。
数十秒。
何も起こらない。
「変化なし」
メモ。
次。
ソロモン先生は薬草を取り出した。
見覚えのある解毒薬の材料だ。
すり潰した薬草を血液へ投入する。
混ぜる。
しばらく待つ。
沈黙。
何も起きないように見えた。
ぽこっ。
小さな泡が浮かんだ。
続いて二つ。
三つ。
そして。
試験管の血液が徐々に色を変えていく。
赤黒かった液体は鮮やかな緑色へと変貌した。
「……」
「……」
二人とも黙る。
「緑になったな」
ソロモン先生が言った。
「緑になりましたね」
僕も言った。
再び沈黙。
「原因は?」
「おそらく薬草の色と混ざっただけだな…」
しかしソロモン先生は楽しそうに緑色の試験管を眺めていた。
「面白いな」
そう呟きながら。
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