98.一回戦目
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ノクタリア闘技場。
数万人規模の観客席。
歓声。
怒号。
野次。
熱気が渦巻いていた。
俺は闘技場中央へ立つ。
反対側にも一人。
細身の男だった。
黒装束。
短剣。
鋭い目。
司会が叫ぶ。
「第一回戦!」
「暗殺一族の末裔!」
「影を歩く男!」
「シェイド・クロウ!!」
歓声が響く。
男は一礼した。
そして。
消えた。
観客が沸く。
「消えたぞ!」
「もう始まってる!」
「シェイドだ!」
影。
死角。
視線誘導。
観客の意識すら利用して位置を隠している。
なるほど。
よく訓練されている。
背後。
首筋を狙った短剣。
だが。
俺は振り向かない。
そのまま横へ一歩。
短剣が空を切る。
「なっ!?」
男が目を見開く。
再び消える。
右。
左。
背後。
何度も襲い掛かる。
だが。
一度も当たらない。
俺は静かに言った。
「無駄だ」
男の動きが止まる。
「……」
沈黙。
男が飛び退く。
さらに距離を取る。
だが。
意味はない。
「心拍」
「体温」
「呼吸」
「全て見えているぞ」
男の顔から血の気が引く。
そして。
光が閃く。
次の瞬間。
男の短剣が弾き飛ばされた。
首元へ刃が突き付けられる。
「勝負あり!!」
歓声が響く。
シェイド・クロウ敗北。
第一回戦終了だった。
第二回戦。
地面が揺れた。
巨大な男が入場する。
筋肉の塊。
人間とは思えない体格。
司会が叫ぶ。
「オーガとの混血児!」
「剛腕の怪物!」
「ガルム・グロス!!」
歓声が爆発する。
男は巨大な拳を打ち鳴らした。
「ぶっ潰す」
試合開始。
直後。
地面が抉れた。
ガルムが地面を掴み取る。
そして。
投げた。
巨大な土塊が飛来する。
俺は動かない。
光が揺らぐ。
屈折。
土塊は俺の横を通り過ぎた。
「なに?」
ガルムが眉をひそめる。
さらに投げる。
岩。
土。
瓦礫。
次々と飛んでくる。
だが。
全て外れる。
俺は歩く。
一歩。
また一歩。
少しずつ距離を詰める。
観客がざわつく。
「なんで当たらない?」
「避けてるように見えないぞ」
「どうなってる?」
ガルムが苛立ち始める。
「チョロチョロと!!」
そして。
突進した。
正面突破。
圧倒的な質量。
だが。
単純だった。
俺は横へ一歩。
ガルムの足元へ光を屈折させる。
僅かな錯覚。
それだけで十分だった。
巨体が態勢を崩す。
「しまっ――」
遅い。
光が走る。
「ぐあああああああ!!」
両目が焼かれる。
ガルムが絶叫した。
前方へ倒れる。
地面が揺れた。
俺は歩く。
倒れたガルムの喉元へ剣を突き付ける。
「勝負あり!!」
闘技場が揺れるほどの歓声が響いた。
第二回戦。
ソロモン勝利。
そして。
観客席の最上段。
グランは静かに微笑んでいた。
「やはり面白いですね」
その視線は。
ソロモンだけを見ていた。
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