96.城
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ノクタリア地下区画。
薄暗い通路を進む。
男達から聞き出した取引場所は一つではなかった。
仲介人。
運び屋。
見張り。
それぞれが別々の情報を持っている。
だから。
俺達は順番に回った。
話を聞いた。
話さなければ話す気にさせた。
それだけだ。
数時間後。
俺達は一軒の建物の前に立っていた。
表向きは商会。
だが実態は違う。
「ここか」
ヴェルナが看板を見上げる。
エドは苦い顔をした。
「奴隷商だな」
中へ入る。
男が出迎えた。
脂ぎった顔。
品定めするような目。
典型的な商人だった。
「ようこそお客様――」
言葉が止まる。
俺達を見たからだ。
特にルクスを。
「……その鹿」
「売る気はない」
俺は即答した。
商人は残念そうに肩を竦める。
「今日は何の用で?」
「人を探している」
ミハイルの特徴を伝える。
しばらく考え込む。
そして。
「ああ」
男が頷いた。
「見たことがありますね」
空気が変わる。
ヴェルナの目が細くなる。
「どこだ」
「残念ですが」
男は首を振った。
「ここには来ていません」
沈黙。
ヴェルナが机へ手を置く。
僅かに力が入る。
木が軋んだ。
男の顔が引き攣る。
「ですが」
「運び込まれていました」
俺は聞く。
「どこへ」
男は少し躊躇った。
だが。
ヴェルナの手元から聞こえる嫌な音に負けた。
「貴族街です」
「城ですよ」
「ノクタリア領主の城です」
沈黙。
俺達は顔を見合わせた。
ミハイルがいる可能性は高い。
「行くぞ」
こうして。
俺達は城を目指した。
◇
数時間後。
ノクタリア城。
巨大な城門。
豪華な装飾。
地下都市とは思えない規模だった。
門番達が警戒する。
だが。
止められることはなかった。
正門へ近付いた時だった。
扉が開く。
一人の男が現れた。
執事だった。
黒い燕尾服。
完璧な礼。
そして。
赤い瞳。
吸血鬼だった。
「ようこそ」
執事は優雅に頭を下げた。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
俺は答える。
「人を探している」
「ミハイルという人物だ」
執事は微笑んだ。
だが表情は変わらない。
「申し訳ありません」
「お約束はございますか?」
「公的なものはない」
俺は答える。
「だが私的には呼ばれている」
執事の眉が僅かに動く。
「ほう」
「グランという吸血鬼に」
沈黙。
執事は一礼した。
「少々お待ちください」
城の奥へ消える。
数分後。
再び戻ってきた。
「確認が取れました」
執事は扉を開く。
「主人がお会いになるそうです」
ヴェルナが小さく呟く。
「随分と素直だな」
「罠だからだろう」
俺は答えた。
執事は否定しない。
ただ微笑んでいた。
「こちらへ」
長い廊下を進む。
重厚な扉の前で止まる。
執事が扉を開いた。
その先。
豪華な部屋。
そして。
一人の男が椅子へ座っていた。
黒い外套。
赤い瞳。
余裕の笑み。
「待っていましたよ」
あのとき映像で見た、グラン本人がそこにはいた。
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