85 勝者②
「いや、その考察はやりすぎ………?」
*****
―――「マナ……?」
「うん。このマナは空気中にだけじゃなくて『あらゆるものの中に溶け込んでいる』。例えばこの部屋の壁にも、床にも、私たちの体にも」
「へぇ……」―――
*****
確か、マナってなんにでも浸透したはずだ。例えば建物の壁とか、そこらへんに落ちてる枝とかにも勿論マナは含まれているはず。で、だからといって別に狼の魔獣達は壁とか枝に特段興味を示したりはしない。つまりマナが含まれているからといって狼が反応を示すってわけでもないはずだ。
「…う~ん」
…なら、狼からの反応がないからって錠剤に入っているものがマナではないと決めつけるは早計…?
しかし、渦巻いた疑念が解消されない。しっくりくるのだ、あの錠剤の中身がマナ以外のものである方が。俺は錠剤を飲むとなぜだかパワーアップすることができるが、よく考えてみれば、だったら中身がマナだとおかしい。
俺の体はマナが浸透しないんじゃないのか?
体の内側から入ってるからなんかいけてるのかなと思ったけど、冷静に考えてそんな都合のいい話あるわけないだろ。
*****
―――……一応になるけど、『メイにも魔法を使える可能性自体はあるよ』」
「……ほんとに!?」
「本当。試したとして死んでしまうだけだと思うけど」
「えぇ…?…じゃあ…いいや。」―――
*****
こんなことを言われたから、錠剤を飲んで身体能力が上がってたのは、俺がマナを内側から摂取してちょっと魔法を使えるようになったからかと思ってたけど…別にロゼはこの方法で魔法が使えるようになるとは一言も言って無いし。
*****
―――「お父さんね、ある国で魔法の研究者やってたんだ。すっごく優秀で、昔、国の大きな研究を任された。で、その時の研究成果持ち逃げしたんだって。それが、この薬」
「……マジで言ってる?」
あれ、やっぱりどころじゃなかったかも。つまりこいつの父親は―――
「『…国に狙われてたの?』」
「うん」―――
*****
それにこの錠剤を持ち出したキセル・エイレーンのこと、ちゃんと国が狙ってるんだぞ。たかがマナが入った錠剤にそんな対応するか?別に一錠飲めば常軌を逸した強さを得られるって感じでもないし、国が狙うレベルってなるともっとヤバイもんが入ってた方が納得できる。
……やっぱりこの錠剤の中身はマナではない?
じゃあ、もしそうだとしたら、中身は一体なんだ?
*****
―――「てかさ、気になったんだけどこれって何入ってるの?」
「『お父さんが言うには特殊なマナが入ってるんだって』。といっても、普通の人は飲んでも何も起きないらしいから、シンが飲んでも期待するような効果はでないと思うよ」
「…まじかよ。じゃあこの動悸とかはプラシーボ効果ってこと…?―――
*****
リア・エイレーンはこの錠剤にはマナが入っているということをキセル・エイレーンから聞いたらしい。とすると俺の仮定が正しければ、キセルエイレーンは実の娘に嘘をついたってことになる。
…何か後ろめたいことがあった?
思い出せ、今までの記憶を。キセルの発言、魔族、リア・エイレーンについて。
…何かなかったか…?
…何か…。
*****
―――「ぼ、ボーっとしてた…?君は、変な奴だな…殺し屋のくせに」
「…!ち、違う!殺し屋じゃない…暗殺者だ。そんな、金のためなら無意味に人が殺せるやつらと一緒にしないでくれ!」
「そう?…違いなんてあるんだね。なら僕も、『ただの…人殺しじゃなくなる』のかな…―――
*****
これは…キセルの発言だ。
*****
ーーーーーーーー
【魔族の危険性】
魔族に体の一部を摂取されたものは、『その量に比例して寿命が縮む』ことも知られている。これは治癒魔法での回復ができず、その理由は不明である。―――
*****
こっちは…魔族の特性についての記事。
…人殺し……寿命………。もしかして…中身は…人の…
「命か…?」




