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異世界なんて嫌いだ。  作者: うどんずるずるしたい
第二章 暗殺者編

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85/89

83 VS■■④


 …ボスがリア・エイレーンを殺す理由はなんだろうか?



 *****


 ―――「………もし、俺が暗殺者に戻ると言ったら、黒い髪のあの子はどうなる」


 「いや、『どっちを選んでもその子は殺すよ。罰は罰だろ?』決まりを破ったのは―――」


 投擲用のナイフをコートから抜き―――


 *****



 …それは俺だ。単純にボスは俺への罰としてリア・エイレーンを殺すと決めた。なら、俺がいなくなればどうなる?


 殺す理由がなくなる。


 もちろん、人間ってのは理屈だけで動くわけじゃない。別に俺が死んでもムカつくからってリア・エイレーンを殺したりもできる。でも、こいつに限っては別だ。こいつは多分、自分の感情を排斥して、理屈だけで動けるタイプの人間。



 *****


 ―――「褒めているんだよ。いやはや想定外だった。そう簡単に殺されないと思っていたからこそ、監視を任せたのに…」


 「…いや、はぁ?意味わかんねぇ。お前、悲しくないのか。クライルが…死んで…」


 「悲しいよ。『でも、悲しんだって何も変わらないだろう。まぁ、残念だった』ね」


 仲間が死んだのに、それで…終わり…?―――


 *****


 

 あれだけ関係の深そうだったクライルの死に、こんなに淡白な反応を見せるなんて異常だ。今回の会話だけじゃないく、よく考えてみれば今までもそうだった。

 死にかけてた俺をわざわざ脅して暗殺者になるようにしたり、そんなやり方をしたくせにアーカーをすぐに俺に持たせたり、俺のミスを大して怒らなかったり。一見一貫性のない行動に見えて、ボスを合理性の化身の様な人間だと仮定すれば全て説明がつく。


 …ま、ボスがこんな必死に俺の元に駆け寄ってくるのは少し予想外だがな。…案外俺のこと気に入ってるのかねこいつ。


 体に異変を感じる。何かが始まる前兆のような軽い異変。薬の効果が効いてきたのだろう。


 …そろそろか。


 緊張で体が強張る。それは、今から死ぬことに対する恐怖からではない。…この秘策が、ただ死ぬだけで終わらないからこそだ。


 …俺が自殺することでボスがリア・エイレーンを殺す理由を無くして彼女を救うなんて、正直作戦としてはめちゃくちゃだ。だって作戦が成功したかどうかを俺は見届けることができない。その時俺はすでに死んでるから。


 深く息を吸い込み、吐き出す。


 …作戦の成功率も、現実的に考えて5~60%くらいな気がする。俺がボスの人格を読み切れているかもわからないし、俺がいなくても何らかの要因でリア・エイレーンが命を狙われる可能性だってある。彼女は魔族でもある訳だし。


 無慈悲の短剣(アーカー)を強く握りしめた。


 …ならばどうするか。錠剤を自殺の手段にしたのはこのためだ。あの錠剤は、飲めば飲むほど身体能力が強化され、代わりに飲みすぎると死ぬ…俺にとってそういう代物。…さっき何粒飲んだんだろう。具体的にはわからないが、数十は飲んだ。三粒飲んで、手加減しているとはえいボスと渡り合えたんだ。この量を御しきることができれば、もしかすると―――




 …つまり、この作戦は二段構えだ。自殺によってリア・エイレーンを殺す意味を奪うのが本命で、かつ、その前に錠剤の身体能力強化を制御できたならその力でボスを殺しきる……!!そういう作戦…!!


 体の奥から沸々と何かが沸騰していくような感覚がする。


 …来る!!



 こちらに迫るボスに向かって、足を一歩踏み出そうとしたした時、その何かが……爆ぜた。



 痛みとか、不快感とか、耳鳴りとか、そういうものが感じられたら、まだ糸口が見えたのだが…その瞬間に俺は何も感じられなくなった。

 目が見えない。耳が聞こえない。体の感覚もない。真っ暗な闇の中で、ただ自分の意識だけが存在している。


 …あ、死んだわ。俺。


 いや、死後というより、多分今は死ぬ寸前の状態…今際の際ってやつだろうか。なんとなく、体自体はまだ生きているような気がする。


 …すっげー、一気にあれ飲むとこうなるのかよ。オーバードーズってやつこれ?こええ~。


 異常事態なのに不思議と思考はいつも通り回るのが、なんだかおもしろい。


 …いやぁ…流石にあの数の錠剤を制御するのは無理か…。三粒までしかできてないもんなぁ…制御。



 *****


 「メイは…生きて……」


 *****



 …ごめんな、ユウ。お前の願い、叶えてやれなかったよ。









 微睡みに落ちていくように、段々と意識が薄れていく。もう少しだけ、何かしたいと…思って……何をしたいかもわからなくなって…い…しき……が……。









 深い眠りに落ちる直前、誰かが俺の手を握ったような気がした。―――






 *  *   *     *    

 


 体の中で無作為に暴れていたエネルギーが、突然、回路を組んで全身を駆け巡る。目を見開き、前のめりに倒れていた体を片足で踏み込んで支えた。


 ドッッッ!!


 亀裂を走らせながら、地面はその人間離れした力を受け止める。


 …殺そうとしてたのは…あの人か。


 僕は無慈悲の短剣(アーカー)を強く握り一直線にボスへと振るった。


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