74 フルスロットル
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「おはよー…あれ、シン起きてるんだ。今日は早起きじゃん」
部屋から、目を擦りながらリア・エイレーンが出てきた。あれからもうそんなに時間が経ったみたいだ。
「丁度良かった」
「…?」
机の上に広げたノートの新しいページに、文字を書き込む。
「何書いてるの」
「一つ質問していいか」
断りを入れてからノートに書いた文字を見せた。
【盗聴されている可能性があるから筆談で聞きたいことがある。お前は『ギルグレイズの宝剣』という古代遺物を知っているか?】
リア・エイレーンが少しの間固まった。
「…それは…どういう」
「俺はいたって真剣に聞いてる」
近くに置いていた新品のノートとペンを差し出してしばらく無言で待つと、リア・エイレーンはゆっくりと俺の正面にある椅子に座って、ペンで素早く文字を書いた。
【知ってる】
書いた言葉をリア・エイレーンが俺に見せる。
「…!!」
ごくりと生唾を飲み込んでから、急いでペンを動かす。
【俺が地図帳で見たところ、ギルグレイズの宝剣はギルグレイズの祠ってところにあるっぽいんだけどそれは間違ってない?】
【間違ってない】
【絶対?】
【多分】
た、多分ぅ…?
「だー!もうはっきりしろよ!」
「え…理不尽だよ。というか喋っていいの?」
「…失礼」
つい口に出てしまった。
【多分ってのはなんで。記憶が曖昧なの?】
【ギルグレイズの宝剣のことを知ったのが2、3年前だから、もしかしたら今はもう移動してるかもってこと。でもきっと移動してないと思う。あの古代遺物は常に周囲のマナを吸い取ってて、移動させると色々不都合が起きるらしいから】
【なるほど】
確かに、地図上ではギルグレイズの祠の周りは森になってたな。市街地のど真ん中なのに。それはその、マナを吸い取る性質と関係があるんだろうな。
【ギルグレイズの宝剣はギルグレイズの祠のどこにあるの?】
【祠の中心に飾られてる】
…!
【それはどういう風に飾られてる?ショーケースの中に入ってたりする?】
【立ち入り禁止のテープが周囲にあるくらいで、完全に剝き出しで飾られてるって学校で聞いた】
【触ることってできる?】
【無理だよ。ギルグレイズの宝剣は触ったら死んじゃう】
【それはつまり触ること自体は誰でもできるってこと?】
【年に一人二人それで死んでるらしいから頑張ればできるんだと思う】
【わかった。ありがとう】
なるほどな。
…つまり、この作戦は実行が可能だ。
「……一つ、大事な話がある」
ノートを閉じて、リア・エイレーンの目を見る。
「一週間後…お前が拷問にかけられて殺されることになった」
「ああ、そういうこと」
「………ごめん」
自業自得なのに何を言われるか怖くて、俯いて次の言葉を待った。
「で?話はそれで終わりじゃないんでしょ」
「……え」
その反応に驚いて顔をあげる。
「か、軽くない?死ぬんだよ?誰に殺されるとか、どうしてそうなったとか、ふざけるなとか…思わないの」
「んー…。思わなくはないけど…もう私の人生十分めちゃくちゃだし、もう別にいいかなって」
「………」
「それにお父さんが殺されたとき、すぐに私も死ぬと思ってたから。あれからここまで寿命が延びただけマシだよ」
「……ッ」
そんな…悲しいことを言わないで欲しいと思った。でも、そのリア・エイレーンの言葉にホッとした自分に、こんなことを思う資格はないんだろう。
【で、続きは?】
ならせめて。
【作戦がある。勝率は多めに見積もって20%、成功すれば俺達は晴れて自由の身になって、失敗すれば多分酷い目にあって死ぬと思う】
もう二度と彼女にこんな顔をさせないように。
【乗るか?】
俺の全てを捧げよう。
【もちろん乗った】




