↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界なんて嫌いだ。  作者: うどんずるずるしたい
第二章 暗殺者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/89

73 反旗

 ◆◆ガナレ地区 メイの自宅◆◆


 静かに玄関の扉を開けて、家に入る。電気が消されているため中は真っ暗だ。


 「………」


 目が闇夜に慣れていたため明かりをつけずにリビングに行く。リア・エイレーンが部屋で寝ているので、できるだけ音をたてないようにして椅子に座った。

 テーブルの端の方に木彫りが沢山並んでいる。あいつが、また売るために頑張って作ったんだろう。


 「……はは…」


 …もう、そんなことしたって意味ないのに。


 「………」


 テーブルに肘をついた手で額を抑えながら深く息を吐く。何も考えたくなくて、テーブルの木目を見つめていた。


 …これからどうしよう。とりあえず、ボスがリア・エイレーンを殺すって決めたことは、きっと本人に伝えるべき…だよな。…でも…それを…どう……言えば……。


 「…」


 ……いや、伝える必要は…ないのか。…今やるべき最善の選択はリア・エイレーンを殺すことだから。


 椅子から立ち上がり、音を立てないようにドアの前まで移動する。


 …拷問にかけられて殺されるくらいなら、安らかに死んだ方がそりゃマシだ。ボスもそのために一週間も猶予をくれた。俺が…やらないと。


 ドアノブに手をかけて、ゆっくりと回して、そこで…手が止まった。


 「…そりゃそうだよな」


 握っていたドアノブを離してしゃがみこむ。震える片手を、震えていない方で握った。


 「…こういうの……できないよな……」


 頬を伝った水滴がポタポタと木の床に落ちて小さな染みができる。許されるわけでも、状況が好転するわけでもないのにただ泣いている自分を殺してやりたかった。


 「…じゃあどうすんだよ…俺」


 いっそ逃げるか?どうせ無理なのに?



 *****


  「もし逃げようとしたらすぐに俺がお前ら殺すからな」


 *****



 言動からして、多分今、クライルが俺達の監視をしている。


 

 *****


 ―――これ以上は危険と判断して意識を伸ばすのをやめた。その時だった。


 誰か…見てる?


 『こちらを観察する誰かの気配を感じた』。具体的にどこからかはわからないが、大体この部屋の窓の向こう側から―――


 *****



 リア・エイレーンの錠剤を飲んだ時に感じたあの気配も、おそらくクライルのものだろう。


 つまり、ボスからリアを逃がすためには俺より格上であるクライルの監視を、まずなんとかしないといけない。…そんなの不可能だ。出し抜くビジョンがまるで見えない。そもそも逃走用の資金だってないし、逃げたリアをボスがそのまま見逃すとも思えな―――




 「あ、れ……」




 できる……か?



 もしかすると、手札は全部、揃っている………?



 「いや、いやいやいや…そんな都合のいい話があるか」


 たどたどしい足取りで椅子に座り、テーブルに置いている携帯端末に手を伸ばす。


 「そのルートで行くなら、あの古代遺物(アーティファクト)が近場にないと……」


 一週間しか猶予が無いんだ。国が違うレベルで離れてたら難易度が……―――


 端末に伸ばした手が止まる。


 「……これを使っていいのか…?」


 この携帯端末はボスから支給されたものだ。これで何か調べ物をしたら、その情報はボスからも閲覧できるようになっているかもしれない。もし、俺がこの都市イロンドから逃げた後に向かうのがこの

調べた古代遺物(アーティファクト)の場所であると勘づかれたら………。


 「…詰むな」


 …万が一のため、逃げるための情報を集めるのにこの端末を使うのはやめておこう。


 「……だが、どうする」


 あの古代遺物(アーティファクト)がどこにあるのか、それがわからないとこの作戦は使えない。


 「くそ…!これ以外のピースはもうあるのに…!」


 明日都市部のネカフェにでも行って調べるか?でも、それだと監視をしているクライルに怪しまれる…?


 「…とりあえず、起きたらリア・エイレーンに聞いてみるけど…」


 …歯がゆい。こんなところで躓くとは思わなかった。


 「…マナを持っている人間に扱えないという性質上…わざわざ国が保管するとは考えにくい。だから、きっとこの古代遺物(アーティファクト)はどこかで展示されていると思ったのに……」


 そして、展示されているなら…リア・エイレーンの膂力、または俺の持つなんでも切れるナイフを使って強引に奪取が可能。そして俺が適合さえすれば、ボスの追跡に対抗する力を持てる…!


 「…とりあえず…博物館や、国の施設がどこにあるかだけ調べるか…」


 何もしないのも怖くて、隅っこにあるタンスから地図帳を取り出し、とりあえずサカルクの地図があるページを開く。隅々まで目を通しながら、思考をフル稼働させた。


 「…博物館のホームページを端末で調べるのは…ぎりぎりセーフか?そのページを見て、古代遺物(アーティファクト)があるかを確認するみたいな。いや、博物館を調べたという情報が向こうに渡るのは致命的か。逃げる際のルートがバレてしまう。…待てよ、複数の博物館を調べたらどうだ?そうしたら、もし博物館に追手を寄こすとしても……でも複数の全てに追手が来たら…………ん?」


 全身の動きが止まった。


 「英雄ギルグレイズの祠…?」


 ……マジ……?


 震える手で、祠のある部分の地図が拡大されたページを開き、驚愕した。


 「ある…!ここに…あるのか…!?」


 嘘だろ!?これなら、この作戦も現実味を帯びてくる…!!


 「…待て、焦るな、慎重になれ……」


 現実味を帯びてきたところで、博打も博打だこの作戦は。どこでイレギュラーが発生するかわからないし、よくても成功率二割。でも……命を賭ける価値はある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。