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異世界なんて嫌いだ。  作者: うどんずるずるしたい
第二章 暗殺者編

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72 現実

 ◆◆◆◆◆◆


 闇夜に包まれ静かな路地裏で、刀身が赤く汚れたナイフを握りしめる。


 「…後片付けだな」


 奥の方でうなだれている人間だったものに視線を移した。―――








 ◆◆都市イロンド タワーマンション◆◆


 「今日はなかなかにハードだったな」


 エレベーターに乗り、扉が閉まる。


 「朝から木彫り売るの手伝って、終わったら仕事って…俺めっちゃ働き者じゃん」


 しかも今回は後処理の勉強を終えてから一回目の仕事である。このスケジュールを無事にこなしたのって凄いんじゃないだろうか。


 「やっぱ俺にも、勤勉な日本人の血が入ってるってことなのかね」


 ぶつぶつと独り言をたれつつ、二十階に到着したのでエレベーターから出る。深夜0時を回っているのもあってかマンション内部は驚くほど静かだった。

 廊下を歩き、目的の部屋にカードキーをかざして入る。玄関をあがり奥へ進んでボスの仕事部屋の扉を開けた。その途中でクライルとすれ違い、なんか珍しいなと思った。


 「…仕事終わりました。ボス」


 中で椅子に座っているボスに声をかける。


 「お疲れ様。今回の仕事はどうだった?」


 「特になにも…。普通にできたんじゃないかなと」


 「普通ね」


 ボスがモニターに目を向ける。


 「ふむ。肝心の後処理は……うまくできてる。これなら、これからも一人でやっていけそうだ」


 「そうですか」


 会話そろそろ終わりそうだな。帰っていいよって早く言って欲しい。さっさと寝たい。


 「うん、技術は確実に向上している。それだけに……惜しいな」


 …?なんかミスったか。


 「どうして女に入れ込んでいるんだ?シン」


 「…!?」


 な…!もうバレたのか!?リアのこと…!!


 「いや、えっと…なんのことですか」


 「芝居はやめなさい。全てわかってる」


 …ッ!マジか…!てか、全てわかってる!?全てってどこまでだ!?


 「少なくとも二週間前から、黒髪の少女と同棲しているね。全く、最近は順調だったのに…」


 …!意外と持っている情報は少ないか…?錠剤とかあいつが魔族ってこととか、そこらへんは知らない…!?


 「…だ、駄目でしたか?仕事に、別に支障はなかったと思うのですが」


 「シン、私とした約束を覚えているかい」


 「…イロンドの中から出ないこととか…の、ことですか?」


 「他には」


 「本名を…他人に言わない」


 「他には」


 「副業…禁止とかですか」


 「今日、シンは何をした?」


 …………リアと…売店…を………。


 黒く淀んだ目が俺を見つめる。そのあまりの冷たさに、悪寒が走った。


 「ま、待ってください!!あれが駄目だったって言いたいんですか!!僕は別に金銭を受け取ってないですよ!!今までだってこういう軽い―――」


 「ミスを許してくれたと?」


 ボスの声が数段低くなる。


 「今回のは、今までのモノとは訳が違う。今までのは業務上のミスだったが、これは重大な規律違反だ」


 ……ッ!!


 「副業の禁止は組織のルール。それを破ったシンには、処罰が必要であると私は判断した」


 やばい…やばいやばいやばい!!


 嫌な予感がする。正直もう予感どころじゃない。確実に、最悪なことが起きると、わかっていた。


 「あの黒髪の少女は拷問にかけて殺す」


 「待ってください!!!」


 自分でも驚くほど、大きな声で叫んだ。


 「…い、意味…それ、意味ありますか…?無駄に人を殺すだけじゃないですか…!」


 「意味はある。処罰としてと言ったじゃないか」


 「だ、だとしてもやりすぎです!!そんな、警告も無しにいきなり殺すなんて…!!」


 「警告はしたはずだよ。あの子働けなくなっただろう?」


 「は、あ…あれ…」



 *****


 ―――テンション低。どうした」


 「…仕事がさ…私には渡せないって言われて…。『どこ行っても仕事させて貰えなくて』…」


 「どこ行ってもアルバイト出来ないみたいな感じ?」


 「…そう―――


 *****



 …あれが、そうだったのかよ…。


 「………」


 頭が、真っ白だ。ただ立つだけで…精一杯。


 「私もね、彼女を殺すのは本意じゃないんだ。だから一週間だけ時間をあげよう。苦しませたくないのなら、その間にシンが止めを刺すといい」


 ………。


 「じゃあ、帰っていいよ」


 ◆◆◆◆◆◆


 ボスの仕事部屋から出て、震えを抑えながら歩いた。一歩、二歩、三歩…歩いて、壁に背を預けるクライルの横を通り過ぎる。


 「…なんで助けたんだよ」


 ポツリと声が聞こえて立ち止まった。


 「正直意味がわからない。お前頭おかしくなったのか?あれだけ言ってどうして―――


 「助けてほしいって…言われたから…」


 「あ?誰に」


 ………。


 「…なんでもいいけどよ、結局こうなってちゃ世話ないぜ。あともう一つ」


 肩に手を置かれる。


 「もし逃げようとしたらすぐに俺がお前ら殺すからな」


 耳元でそっとクライルが囁いてから、俺から離れる。


 「じゃあな」

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