62 フラッシュバック
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…と、家を飛び出したはいいものの、全然リア・エイレーンを見つけられる気はしなかった。なんてったってここはガナレ地区、巨大なスラムだ。今から日が暮れるまでに、特定の人物を見つけるだなんて無理がある。
「…やっぱ家で待ってた方が良かったかな」
家の近くの、人気の無い路地を歩きながら呟く。隣には大通りがあり、子供や大人の声がここまで届いている。
時折大通りにつながる十字路が現れるたび、そこから顔を覗かして人混みの中にリア・エイレーンを探した。それを何回か繰り返していたら、気づけば日は真っ赤に染まっていた。
「……帰ろうかな」
もう日が暮れるまで時間が無い。で、多分それまでにはリア・エイレーンは俺の家に帰ってきてる。一旦家に帰って、もしリア・エイレーンがいなかったら…また探そう。
「結局骨折り損のくたびれ儲け……お…?」
その時、遠くの方でベンチに腰かけている少女が見えた。黒髪の、ショートヘアーで、どこか既視感がある姿形。遠くからだと確証が持てなかったので、ベンチへと近づいた。
「……一日でこれだけか…食費を抜くと………資金が貯まるのは…早くて一か月、遅くても二ヶ月…」
「ああ、外行くって…金稼いでたのか」
「…ッ!!だ、だ…れ…って、シンか…」
驚いた様子でこちらを見るのは、黒髪赤目の少女。リア・エイレーンだ。手に複数の硬貨を握りしめている。
「…何?私のこと探してたの?」
「え、うん。帰るの遅かったから」
「本当、お節介焼くのが好きだね」
「…いや、でも…探さない訳にもいかないだろ」
俺の言葉を最後に会話が途切れて、リア・エイレーンはまた手に持っているお金を見ながら考え事をしていた。
さっきまで歩いていて少し疲れたので、距離を開けてリア・エイレーンの隣に座る。
「なんのバイトやってたの?」
「………」
単純に気になったので聞いてみたが、やっぱり無視された。また別の質問でもしようかと思ったが、それで嫌な気分にしても申し訳ないので、先に家に帰ろうとベンチから立ち上がった。
「体売ってたよ」
「は!?」
立ち上がった直後に聞こえた一言は、衝撃的なものだった。
「お前、だったら俺を頼れよ!!いや、やりたくてやったんならいいけどさ…。そうじゃないなら…!!」
「でも、人殺しになんか頼りたくないじゃん」
「…!!それは…そうかも…しれないけど…」
…何も…言い返せなかった。でも、何か言いたくて…震える目でリア・エイレーンを見つめていると、彼女は笑った。
「ははは、おもしろ。嘘だよ嘘、冗談。そんなことできる訳ないじゃん。…私に」
「え…あ、なら…よかった…けど」
「でも、あながち嘘でもないかもね。荷運びとかいっぱいやったから」
「…いや、だったらちゃんと肉体労働って言ってくれよ」
「それじゃ驚いてくれないでしょ」
…えぇ。
「…あの、俺はいいけどさ…。それ割と質の悪い冗談だから、あんまり他の人には言うなよ…?」
「はーい」
心のこもっていない返事をしてから、彼女はまた手元にあるお金を見つめる。立ち上がった俺は、その場から去ろうとした。
「帰るの?」
そうしたらなぜか、呼び止められた。
「か、帰るよ…?」
「もう少しお話しようよ。まだ日は沈んでないし」
「…俺の家でもよくない?てか、日が出てる時に外出るの嫌なんだよ」
「なんで?」
「……別に何でもいいだろ。俺もう帰るから、話があるなら家で―――」
「おぎゃあああ!!」
背後から、大きな泣き声が聞こえた。
振り返った先にいたのは夫婦であろう男女。女性の方は赤子を抱えていて、その子が大きな声で泣いていた。
「あらら。…私あやしに行こうかな、何か仕事に繋がるかもしれないし」
………落ち着け。俺。
「……シン?…どうしたの」
…だから、落ち着けって。
「なんで…震えてるの」
…何も…考えるな。考えるな。考えるな。考えるな。考えるな。
……思い出すな
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おまえがころした
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