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本に入れる探偵の俺、死者の作品の中で真実を探す  作者: 米。


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(2-2)一人の少女の過去

それは強烈だった。脅威と呼ぶに十分値するだろう。

「ほら・・・え~っと・・・。なんかいわんかいっ。」


台本を見ながらセリフを言っていること以外は。


「あの、その本じゃなくてこっちをみてください。」

「あ~っと、、、ここじゃなくて・・・。(ペラペラ)な、なんや生意気なこというて。お前の顔も、負けんぐらい生意気なつらしてんで。」

「あの、もうペラペラってページめくる音聞こえてるんだけど?ねえ。」

「そ、そんなこというたって・・・。ええと、どこ・・・?」

該当するセリフが見当たらないのか必死にページをめくる。そっちに集中するあまり、どんどんと浮遊する力がなくなり、ついに地面に足がついた。

「あ、あった。は?そんなんいうなら証拠出してみいやって、うわ」

俺は本を少女から取り上げた。

「はい、これが証拠。」

「ちょ、やめえや。ほんまあかん。あかんから!!!!う、うわーーーん!!!」

な、泣き出してしまった。ここまでするつもりはなかったんだが・・・。

「おじさん。女の子泣かせるとか最低だね。」

「不可抗力だ!!」




泣き止ませるのには30分は要した。

「落ち着いたか?」

「ごめんね。このおじさん怖いよね。大丈夫、私が味方だから。」

「おい。」

「ぐす・・・。実は私。緊張しいで・・・。親しい人以外は台本ないと言いたいこと言えへんくて・・・。」

「そう。頑張ったんだね。大丈夫。あなたは悪くないよ。全部おじさんのせい。」

「悪かったよ・・・。」

「落ち着いたら自分の名前言ってごらん?」

「わ、わたし。ユーノ。この世界で魔物を倒す、祓い師というのをしてます。」

なるほど、そういう世界観の話だったのか。

「おじさん、」

ユリがひそひそ声で話す。

「ユーノって絶対柚野さん本人だよね。」

「・・・確かにな。」

ターゲットとの接触は特に序盤はさけたほうが良いのだが、致し方ない。俺によってバレてしまったからな。どっちみち、作品の内容も分かっていないんだ。出会っていなかったら魔物にでも殺されていただろう。

『・・・こちら本部。ユーノ、どした?』

ユーノのポケットからガサガサした音声で聞こえてくる。無線通信だろうか。それに、この声、聞き覚えが?

「こちらユーノ。侵入者に接触。しかしながら怪しいものではないはず。」

『はずって・・・確信ないとあかんで?ちゃんとしいや?』

「わかってるよ。母さん。」

そうだ。佳也子さんの声だ。

「とっともかく。私はこれで失礼しますっ。」

「ちょ!ちょっと待って、ユーノちゃん。」

「どうしたん?ユリちゃん。」

いつの間にか名前呼びしあっている・・・。俺の、のけ者感がすごいな。

「一緒に任務に同行させてくれないかな。」

「な!ちょっとまて。何考えてんだユリ。危険だって。」

「・・・じゃあ、銃が幽霊に効く保証はあるの?」

ぐっ・・・。

「え、ええよ。ユリちゃんなら同行して。」

「本当?ありがとう!」

二人は仲良く前を歩いて行った。あれ、ユリって社交的じゃないんじゃ。と思ったが、もしかしたら社交的じゃない者同士、通じ合うものがあったのかもしれない。

「おじさん。先行くよー。」

「あ、ああ。待ってくれ。」

ユリだけでいいのでは?なんて疎外感を感じつつも俺は駆け出した。




「今回の任務は・・・この民家の女の子を助けることや。」

目の前の資料を見ながら語った。

目標の民家からは少し離れた山にて俺たちはターゲットを覗いている。なんかストーカーみたいだなこれ・・・。

「魔物は人の負の感情から生まれる。あの子がどのような感情を抱え、魔物を住まわせているのかはわからんけど・・・。」

俺とユリはその魔物を探してみるが見当たらない。ユーノは気にもかけずに、両方のこめかみに人差し指を当てて少女の方を見た。

「これは・・・すごい代物・・・。初心者には厳しいかもしれんけど・・・。強めの祓い具を渡しとこう。」

そういって俺たちに一枚の紙きれを渡した。

「なんだこれ?」

「召喚札っちゅうもんや。人は心に負の感情を持ってる。それを引き出し、自らの魔物を生み出すための道具。そして生み出した魔物と敵のとを戦わせる・・・。いわば怪獣対決みたいなもの。」

「急にキャッチーになったな。」

「まあ、がんばって。私が戦ったらすぐ勝っちまうからな。ここで待っとるわ。」

なんか言い方にイラっとしたので、資料を取り上げる。

「あ!ちょ!あかんて!てか、はよ行け!」

「行けって言ったって、どうやって行けばいい?」

「しゅ、主従や。自分の中の魔物を召喚して、それに乗れ。大抵魔物は浮けるから乗ればええわ!そんでどっか行っちまえっ!」

最後に、罵倒の一言が聞こえた気がするが、俺は無視をして紙を取り出す。ユリも紙を取り出した。

紙は丁寧に半分に折りたたまれていた。これを開けると召喚されるのかもな・・・。

そう俺が躊躇している間に、ユリは紙を開けた。

ボワン!紙の中心から白い煙が出たかと思うと、それと同時に煙の中に微かに黒い影が見えた。

こ、これが魔物召喚・・・。

煙が晴れ、中身と対面した。

『ニャーガオッ』

独特の鳴き声をした、手乗りサイズのトラのような・・・。魔物だった・・・。

「か、かわええなー!!」

ユーノが小さなトラの頭をなでる。そいつはごろごろと気持ちよさそうな音を立てた。

「ちょ、私の魔物ってこれ!?」

「そうみたいやなー。まあ、負の感情が少なかったってことちゃう?」

ユリはわかりやすくガクッと落ち込んだ。

あんなのが出てこられても・・・魔物の祓いようがないからなあ。

俺は思ったより大したものは出ないのかもしれないと、安心した気持ちで紙を開いた。

ボワン!

『ピー、オオッ!!!』

規制音のピーのような甲高い高音の後に聞こえる、腹の底まで響く鳴き声に思わずのけぞった。

目の前に現れたのは真っ黒のオオカミに翼が生えたようないびつな生物だった。

「これぞ、魔物やな。でかしたで。おっさん。さすが、年を重ねてるだけあって、いろいろ思っとったんやな。」

ユリがそうなの?という目でこちらを見る。いや、俺もそんな自覚はなかったんだが・・・。もう少し、体に気を遣ってみるか。

「さあ、それぞれに名前を付けな。そうしたら契約が結ばれ、魔物が言うことを聞くようになる。」

そういわれて俺は、羽のついたオオカミを見る。

赤く光った瞳、孤高といったオーラ。それに相反する白い羽。

「・・・考えれば考えるほど思いつかないな・・・。もうシンプルにバードウルフでいいような気がしてきた・・・。どう思うお前ら?」

俺は二人に意見を仰いだ。

「え?なんて?そんなことよりこの可愛ええのどうする?ユリ。」

「ええ?ネコトラ、トラネコ・・・。」

「シマシマ模様からとってもええんちゃう。シマネコとかさ。」

「トラ要素薄いんじゃない?」

ああ。ストレスの原因これだ・・・。こいつら覚えとけよっ・・・。




「じゃあ、こっちが『バードウルフ』で、こっちがシマトラネコの『ジュウガレオ』やな。」

「よろしくねー。ジュウガレオ。」

『ガオニャ』

なんか、種族名まで決まってるし、俺のより名前強そうだし・・・。

「じゃあ、バードウルフに乗って戦いに行こか。」

「とはいっても、標的が見えないんだが・・・。」

「本当?もう一回、向こうの建物見てみて。」

そういわれて、少女の住む建物を見ると・・・。うわっ、なんだあれ。魔物か?

それは小さな頭に巨大な二本の角。そしてそれを支える胴体はとてもムキムキで大きく黒光りしている。とても近づきがたいが・・・。バードウルフなら勝てそうな気もする。

「バードウルフ、地面について低姿勢。」

そういうと従順にいわれたとおりの動作をした。俺たちはバードウルフの背中に乗り込む。

「じゃあいってくるね!!ユーノちゃん!」

「ああ!気ぃつけてな!」

俺たちはターゲットの家に向かって飛び立った。


ーーー


私は勉強が好き。学校のみんなは嫌いっていうけど私は好き。だって、教科書どうりのことを学ぶこと、そこに自分の気持ちは存在しない。だから好き。心なんてない方がいい。感情なんて・・・。

と考えていても勉強をすると少し疲れてしまう。窓を開けて休憩をしてみる。


「や、やあ。お嬢ちゃん。元気か?」

「話しかけ方がクソすぎるよ。おじさん。そして見つからないようにしなきゃ。」

「だってバードウルフが窓より下に降りてくれないから・・・。」

「おじさんの扱いでしょ?」


なんだろう。幻覚?空飛ぶ二人がケンカしてる?

わかんないけどこの二人。感情が多彩で、楽しそうで。すごく、


邪魔だなあ。


ーーー


ターゲットが軽蔑の目を示すと同時に魔物が飛びかかる。魔物は巨体の背中に斧を隠しており、二人めがけて振り下ろした。


まずい・・・。

俺はとっさにバードウルフの左側の背中をたたいた。

バードウルフは痛がり反対方向の右へととび、結果的に攻撃を避けるのに成功した。

しかし、

「うわ、おじさん!」

「ユリ!」

右に大きく曲がったことで、ユリが落下しかかった。あわてて俺は手を伸ばし、引き寄せる。

「しっかり背中つかんどけ。」

「う、うん。わかった・・・。」

ジュウガレオはユリの肩にくっつきぶるぶる震えていた。

その時、魔物は大きく斧を振りかぶった。しかし、ここで懐に入り込めればチャンスだ。

「噛みつけ!」

バードウルフは腹部にかみついた。苦しそうに魔物は悶え、斧を落とした。

そしてとどめを命令した。

しかし、震える手で魔物は斧を手に取ろうとする。

バードウルフも噛みつこうとしているが、わずかに魔物が斧を手に取るスピードが速かった。

「まずい、バードウルフ!」

その瞬間、後ろから大きな叫び声が聞こえた。

『ウガアアオオオ!!!』

俺はとっさに後ろを見る。その声の持ち主はさっきまで震えていたジュウガレオだった。力を振り絞って威嚇の声を出したのだろう。

その隙のおかげで、噛みつきは成功した。


ーーー


「ふう、終わったな。」

「お疲れ様、おじさん。やるときはやるじゃん。」

「まあ、ずっと指をくわえてるわけにはいかないもんでな。」

「でも、MVPはこの子。」

『ガオニャーン。』

ユリの掌に乗って寝転がっている。

「・・・お前もすごかったぞ。よくやったな。」

『ピーオオ・・・』

嬉しそうに俺の手に顔をくっついてきた。なんだこいつ、かわいいな。

そして、目の前には不思議そうに俺たちを眺める少女が一人・・・。

「って!?バードウルフとか魔物とか、ばれたらやべえじゃん!?」

「大丈夫や。」

空から一人の少女が浮かんでくる。

「自分の意志で利用したりせん限りは人が魔力を感知することはない。もちろん魔物も見えることはない。この子は負のエネルギーが強すぎて、あんなのを無意識で産んでしまったんやな。」

俺が眺めると無表情に首をかしげる。

「こんな、小さい子が・・・。何を背負ってたんだ?」

「大きかれ少なかれ、子供は多感やからな、負のエネルギーをためやすいんや。でもいま祓ったからしばらくは大丈夫やろ。」

「ずっとではないんだな。」

「生きていくうえで負のエネルギーはたまるもんや。ずっとなんてありえん。またしばらくしたら、学校でとか社会人なってからとか発生させるかもな。」

俺は小さな子の頭をなでた。

「おじさんたち、空から来た。天使さん?」

この子が口をきいたことに驚きつつも俺は返事をする。

「いや、そんなたいそうなもんじゃ・・・。」

「いいよ。天国そっちに連れてって。」

そのセリフに彼女自身の現世にいたいという意思は見えなかった。というよりかき消されていたかのようだった。

「あほか。」

俺はその子の額にデコピンをかました。少女は困惑している。

「自分の気持ちはどうした?」

「気持ち・・・。」


ーーー


・・・自分の気持ちなんていらない。ここ最近はずっとそう思ってる。あれ?なんでそう思ってたんだっけ。

そうだ。お父さんとお母さんがケンカばっかりしてたからだ。

それで、そうだ。この間、言われたお父さんとお母さんのどっちがいいってセリフ。わかんなくて、二人に話しかけないようにしてた。自分の気持ちがなくなれば、この状況がつらくなくなる気がして。


でも、なんか。もっと、感情的になっていい気がする。どうしてなのかな。つらい気持ちがふって落ちたんだ。


ーーー


「おめでとう、初ミッション成功やな。」

「そうだな」

「どしたの。おじさん元気ないじゃん。」

「いや、思ったよりあっさりだったのと、あの子が心配でな。」

「え?おっさんに人の心配する心あったんやな。」

台本を取り上げた。

「やっやめて!だめえ!」

「もうすこしそのまんまにしとけ。」

「ひ、ひどいやん・・・。ともかく、あっさりやったんは・・・バードウルフがそんだけ強かったんやとうちは思うで?それと・・・。あの子はきっと大丈夫よ。」

「その根拠は?」

バードウルフにまたがった帰り道。遠くの街から女の子の喜ぶ声が聞こえてくる。

俺は耳を傾け静かにほほ笑む。

「ま・・・そういうことや。今はな。」

そして、無表情だった少女の顔の記憶がなくなっていく。あ、あれ。

「混乱しとるな。あの子の記憶が抜け落ちたんやろ」

「どうしてそれを」

「この仕事は秘匿や。ばれて力を悪用されたらたまったもんじゃない。だからターゲットの記憶を消すようにしてるんや。たとえ、天使ぐらいに思ってても消さなあかん。けど副作用でな、こっちも向こうを忘れちまうんや。」

「そんな、」

「でもあの子は最終的に笑顔やった。詮索する必要があるん?」

それもそうだと俺は納得した。微かに聞こえた少女の笑い声がよぎった。ついに輪郭まで消えてしまった少女の声が。

「てか、はよぅ返してやぁ。」

「そうだよ、おじさん。はやく返してあげないとここから降ろすよ?」

「操縦してるの俺なのに!?」




「さあ、こっからじゃんじゃんいくで!」

「おー!!」

そこから俺たちは魔物を祓った。暴走化した少女の鎮静。学校の中で少女の魔物が暴れ出したとか。そして映像の中の少女についた魔物。これは映像に映る少女から場所を特定しないといけなくて、大変だったなあ。でも助けたとき、最初のころと比べて、感情豊かになって・・・


あれ?微かに違和感がある。あれ?どうして依頼人が少女ばかりなんだ?どうして初めて会う少女のことを知っているんだ?

あれ、俺は何のためにここに来たんだっけ・・・。魔物を退治して、それで、ここで生活するんだっけか。

「おじさん、ねえ。違和感ない?全く同じ少女の依頼人。その子には深い過去。ねえもしかして。」

「全く同じ少女・・・?」

「おじさん、もうしっかりしてよ!」

頬を無理やり引っ張られた!

「いて、」

しかしその瞬間、ここが現実でないこと。そして違和感を思い出した。そうだ。現実世界から去った少女を探していたんだ。そしてその少女は

「あーあ。忘れてりゃよかったのにな。おっさん。そしてユリちゃん。」

あの時、虚無の目をしていた少女

「楽しかったか?私の過去が知れて。」

ユーノだったんだ。

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