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本に入れる探偵の俺、死者の作品の中で真実を探す  作者: 米。


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(2-1)人気配信者

で。本当に家までついてくるとは。

「いやー。すごいね。アパートだよアパート。」

「別に小さい家だろ。」

「ねえ!好きに漁ってていい?いいよね。これから仕事のパートナーとしてやっていくんだし。」

「まだ一緒に組むとは言っていない。だが、部屋見るぐらいなら許可しよう。」

「やったあ!一回、同業者の部屋見てみたかったんだよねー。」

しかし、長年探偵業としてやってきたが活動はwebで受け付けた依頼のみ・・・。事務所みたいなもんを構えてみたいもんだな・・・。俺以外に社員はいないが。

「へー。こういう作品に入って好き放題してるのか。ふーーーん。」

「やっぱり、見ないでくれる?」


ーーー


「同業者として意見を仰ぎたいんだが。」

「なんでしょうなんでしょう。」

「俺たちの仕事って普通の人には受け入れてもらえないじゃん。」

「うん。」

「どうやって案件数を増やすべきだと思う?実際、ユリは俺より年下なわけだろ?

「うん。16だよ。」

「え!?そう・・・(もっとガキだと思ってた・・・。)」

「あ?」

「こほん。それでも、今回案件をもらえたってことは案件数は悪くないんだろ?」

「いや?全然。」

「え?」

「私を依頼してくる人はみんなおじさんのことは知ってるよ。わざわざ私を選んでくる違いはビジュぐらいじゃない?」

「くっっそ・・・。俺も見た目だけでもいいから美少女に生まれたかった・・・。」

「見た目だけって普通に失礼だな。」

「まあいい。何か対策を・・・。」

「あ!!!提案します!!!」

「はいなんでしょう。」

「共同で探偵事務所にする!!!」

「結局そこに行きつくのか。」

「でもさでもさ。私を知ってる人はおじさんも知ってる、依頼するかどうかの違いはビジュだけ。ってことはさ。共同にした方が依頼人増えない?」

「うーん。まあ、な・・・。」

筋は通っている・・・。だが、こいつを仲間にすると厄介なことになる気がする・・・。大体、コミュ力ないし、非力な分お守りが必要になる・・・。いや、銃の扱いはうまかったな。割とありなのか・・・?いやいや。

パシャ!

悩んでいる俺の顔にユリが顔をひっつけて自撮りを取った。

「いや、何してるんだ。」

「これをこうしてー。」

「おい!それ俺のパソコン」

「できた!おじさんの作ったサイト。名前変えといたよ!『STZ~作品入り込み探偵事務所~』って!プロフィールも・・・ほら!私とのツーショットの写真!!!」

「は、はああああああああ!?!?なんだよこれ!?てかSTZってだっさ」

「いいじゃん別に!かっこいいでしょ!」

電話番号、メールアドレスはそのままに。プロフィールとタイトルが大きく変えられていた。


混乱する俺を尻目にPCのメールには過去に解決した依頼主たちから統合祝いのメッセージが来ていた。

『おめでとうございます、実は依頼をする前、ユリちゃんの方にするか迷ってました。統合してくれて安心です』

『同業の二人が仲良しなのが伝わっていいですね!』


「どうすんだよ・・・。後に引けねえじゃねえか・・・。」

「こうなったら二人でやるしかないねっ!がんばろっ!」

「おまえはいいかもだけどよ!!!」

ピロン!

またメールの音だ。どーせ統合祝いだろ。

は?

「『こんばんは、STZ様。夜分遅くに失礼いたします。私はVTuber事務所キラーズのスタッフ、清水と申します。今回依頼したいことがあり、お願い申し上げます。詳しい依頼内容は以下の住所にて説明いたします。』だって。キラーズってかなり有名なところだよ。おじさん。」

ユリが俺の肩から顔を出してメールを読み上げていた。

「ふーん、そうなんだな・・・。てか。勝手に人のメール読むのやめてくれるか?」

「ふーん、じゃないよおじさん!登録者100万人以上のVをたくさん出してるとこなんだよ!?」

「それは・・・確かになかなかだな。」

「おじさん!これはチャンスだよ!私たちの探偵事務所設立第一歩の特大イベント!!!これを機に私たちの名が世界に轟く・・・」

「却下。」

「ええええ!?!?!?」

「こんなのはでたらめ。詐欺だ。」

「そんなことないよ!私たちのことを知ってくれて依頼してくれた人を信じないの?」

「俺も信じたいんだがな。なんでそんな大きな会社が俺たちに声をかけて来る?ありえないだろ。」

「聞かないとわからないよ!依頼内容だけでもさ。聞いてみようよ。聞く分にはタダだって。」

「・・・。はあ。聞くだけな。どうせ、白い目で見られるだけだけど。」

「いえーーーい!やった!」

「とりあえず、今日は帰れ。」

「無理。こんな夜中に、かよわい女の子歩かせる気?」

「か・・・かよわい・・・?」

「なぐるぞこら。」

「しかし、お前は未成年だ。ここで止めるわけには・・・。」

ZZZ…

「ん?」

こ、こいつ。もう寝ている・・・。しかも俺のベッドで・・・。

起こしてみるが、おきそうにない。気持ちよさそうに寝やがってっ。仕方がないから俺は地面で寝た。


・・・いて。なんだこれ・・・?足・・・?

はあ。明日からは絶対家に上げないでおこう・・・。


ーーー


言われた住所につくと、ただの民家だった。

「普通の家だね。」

「ああ。会社ではないだろうな。」

ひとまず、ドアの前のインターフォンを鳴らした。

少し足音が聞こえたかと思うと、目の前のドアが開いた。ユリはびくっとして俺の後ろに隠れる。

「お待たせしました。私、メールを送らせていただいた清水と申します。さあ、どうぞ中へ。」

スーツを着た若い男性がそそくさと家の中へと案内した。俺たちはそのあとをついていった。

「ぜっったいあの男のせい!今日で証明するわ!」

「落ち着けっ!本当にこんなのでわかると思うか!?証拠になるかすら怪しいんだぞ!?」

「それでもやっ!」

廊下の奥から何やら夫婦の言い争いのようなものが中から聞こえてくる。

「申し訳ありません。なかなか立て込んでおりまして・・・。」

清水さんが声を気にする俺たちを見て、細やかにお辞儀をする。


「あ!あなたたちが探偵の方やな!ようこそお越しくださいました!」

言い争いをしていた女性はこちらを見ると態度を変え、歓迎ムードになった。旦那の方はやれやれという顔をしている。

「お茶でもお出しますね。」

「お気遣いなく!」

返事を聞くまでもなく奥さんはそそくさとお茶の準備に向かった。なんとも嵐のような人だ・・・。それに反して旦那さんはじっとりとした目でこちらを見ている・・・。不気味だ・・・。


微かに沈黙が流れると、それを遮るように清水さんが咳払いをした。

「ごほん、それでは紹介いたします。今回の依頼主である、相良佳也子さんと相良宗次さんです。あなた方にはわが社のVTuberとしても活躍をしていた相良柚野さんの死因を探ってもらいます。」

「し、死因ですか・・・。」

「発端は1か月ほど前の4月16日。トラックにはねられてしまい、柚野さんが亡くなったことから始まりました。事故が起きたのは信号のない横断歩道。しかし、ここからが争点となりました。」

「・・・死因は明白なのではないですか?」

「そうですね。死因と説明するのは言葉が不明確だったかもしれません。正しくは、死亡の原因です。」

「原因・・・。」

「現在、トラックの運転手側は女性が自らトラックに突っ込んだと主張していることです。しかし生前、柚野さんは明るく、真面目な方でとても主張に筋が通っているとは考えられません。」

「なるほど。」

トラックの運転手を裁きたい遺族と罪を軽くしたい運転手か。

「でもよお。あんたたちに、ほんとにそんな能力あるのかい。万が一、あんたらが柚野と話せたとしても、証拠なんてつかめるのか。」

柚野さんの父親である宗次さんがいぶかしげに尋ねる。

確かにこの主張は筋が通っている。証拠となる物がなければ飛び出したのが故意だったかそうでなかったかは証明しようがない。

「ばかね。あんた。あの子の何を見てきたん?」

佳也子さんがお茶を運びながら割って入った。

「あの子がいつも動画を回してたん、知らんわけないやろ?」

そういうと娘のものと思われるスマートフォンを操作した。そして写真フォルダーをスクロールして見せた。

「これは・・・すごい量ですね。」

思わず感嘆の声をあげる。

「パソコンもこんな動画ばっかりだったわ。いつもの日常を撮った、あの子らしい温かい動画たちよ。」

「・・・ねえ、おじさん。」

ユリが小声でささやく。

「なんか、最新動画だけ真っ黒じゃない?」

確かに、カラフルの色合いにひときわ寂しい黒一色だ。俺は尋ねる。

「あの、一番最新の動画って・・・。」

「そう、それよ。」

佳也子さんが真っ黒の動画をタップすると鍵マークのアイコンが出て来る。

「この動画だけカギがかかっていて・・・。もしかして、あの日に取っていた動画なんじゃないかなって・・・。」

俺は少しスマートフォンを貸してもらい、その動画の日付を確認すると、柚野さんが亡くなった4月16日であった。

「このパスワードは、スマートフォンのロック画面のパスワードとは違うんですか。」

「ええ。あの子はスマホもパソコンもロックをかけないの。」

佳也子さんは即答する。

「・・・となると、この動画が重要な手がかりであることは間違いなさそうですね。」

「このパスワードが何とかわかる方法があればよいのですが・・・。」

清水さんはそういうとこちらを眺めた。佳也子さんも宗次さんもつられて眺める。

これは・・・断ることはできないな。

俺は静かに了承をした。


「で、作品の方はどちらに?動画などを素材にはできませんよ。」

「もちろんわかっています。あの子が生前、出そうとしていた漫画があるんです。」

そういうと佳也子さんは押し入れから何冊かに分けられたノートを取り出した。

「こ、これは・・・。」

中身は、シャープペンシルで書かれたネーム(漫画の下書き)の様だった。

「どうしよう、おじさん。試読できるかな?」

「う、うーん・・・。」

俺はミッション失敗しないように作品の世界観など、もろもろを把握するために最低でも二周は目を通すようにしている。試読と言っていることからユリも一回は目を通すのだろう。しかし今回は不可能かもしれない。荒い絵、文字。内容を理解しようとしてもすることができない。

「どうかなさいましたか?」

俺たちの顔色を見て清水さんが訪ねる。

そうだ。柚野さんが出そうとしていた漫画なのであれば、会社の方にも話がいっているのではないだろうか。最低限あらすじぐらいはわかるかもしれない・・・。

「あの、この作品、清水さんは知ってらっしゃいましたか?」

「そうですね。柚野さん本人からよく聞かされておりました。」

「でしたら、ネームではない原稿、もしくはプロット(文章で書かれた話の下書き)などはありますか?少し内容の把握の方をさせてもらいたいのですが、」

「・・・申し訳ありません。そちらの漫画は柚野さんが完璧にしてから我々に見せるとおっしゃっていたので・・・。内容の方はわかりかねます・・・。」

なんということだ。これは厄介なことになった。

俺は内容を必死に把握しようとノートを穴が開くほど眺める。しかし、くずし書きの文字、激しい線で書かれたキャラクターはなかなか理解することができない。

「これはすごく難解だね。もしかしたら、人に見せる用じゃなかったのかも。さっきも完璧にしてから見せたかったって言ってたから。」

「・・・まいったな、」

「時間はかかるけど、もしかしたらほかの仲のいいVTuberメンバーに見せてたって可能性もあるよ?少し時間かかっても調査してみるべきじゃない?」

「・・・清水さん。もし全員に連絡を取るとしたらどのくらい時間がかかりますか?」

「それぞれスケジュールもありますし、1週間あれば確実だと思います。」

「一週間!?それはめっちゃかかるな!?」

佳也子さんが声を荒げる。

「所属しているメンバーの数の問題で・・・申し訳ありません。」

「そんなに待つなんて、せっかく探偵さんを呼んだというのに、、、私も気が気じゃなくなるわ!」

「佳也子、落ち着けって。一週間ぐらいどうってことないだろ。」

「あなたはあの子を心配してないから言えるんや。」

なにやらぎすぎすした雰囲気になってしまった。そうだな。冷静に考えて佳也子さんが正気でなくなるというのはあながち間違いでないのかもしれない。なんせ、現状況でも切羽詰まっている様子だ。それに、俺たち胡散臭いSTZなんかを信頼して連絡を入れるくらいだ。そうとう精神が来ていたのかもしれない。ネーミングセンスだっておわってるしな。

「おじさん、なんか言った?」

「べつに。」

この際、賭けで飛び込んでみるのもありかもしれない。ペナルティは別にないしな。

「わかりました。今日、作品に入りましょう。」

「ほ、本当ですか!?」

佳也子さんが目を輝かせる。

「ちょちょちょ。何言ってるの!?試読はすごく大事なんだよ、おじさんもわかってるでしょ。」

「わかってるが、佳也子さんをあの状態のまま放っておくことは俺にはできない。」

「・・・はあ、本当にどうなっても知らないよ?私は責任取らないからね。」

「はいはい」

かくして俺たちは調査へと向かったのであった。前回同様、護身用の銃を持って。


ーーー


微かに耳鳴りが聞こえる。それを煩わしいと感じたとき、同時に作品の中に入ったことを思い出した。

目を開けると交差点の真ん中だった。スクランブル交差点のような、でも少し建物の形や大きさが違う。夜だというのにどの建物も明かりがついておらず、人もいない。なにやら気味の悪い場所に来ていた。

「おい、ユリ。起きろ。」

「~~~。」

ユリは何やら小さな声を発する。なんだ寝言か?俺は耳をユリに傾けながら聞き返す。

「どうした。」

「おじさん。伏せて、寝たふりして。」

「え?」


「お前、起きとるやないか。このシマのもんちゃうな。なにもんや。」

俺が聞き返すころには遅かったんだ。後ろから聞こえてきた声は俺のぼやけた思考に針を刺し、冷静にさせた。そして、それによって自分のものではない影が俺たちを包んでいたことに気づかされた。

冷や汗が落ちるのと共に俺は振り返った。そこには暗くまがまがしい衣装を着た少女が空に浮かんでいた。

「何もんかいわんと、いてまうぞ。」


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