第拾壱話 その後
それからは情報の共有に大忙しだった。しかし、一番最初にやる事は決まっている。
「お父様、ナクちゃんの縛りを解いてください」
狗飼は結界を無理矢理こじ開けた代償で今にも消えてしまうのではないかと思えるぐらい衰弱している。そしてその縛りは未だ消えていない。国王は結界を張った魔術師を呼び寄せてそれを解くように命令した。呼ばれて国王の元へと馳せ参じてみれば、そこには居るはずのない獣神と恐れられて存在がいたので、魔術師たちは一瞬驚愕する。そしてこれは逆に魔者を滅するチャンスなのではないかと思考するが、その言葉を出す前に第二皇女が釘を刺す。
ニコニコとしているが、恐怖さえ感じられる。魔術師たちは素直にしたがう他なかった。千載一遇のチャンスといえばチャンスだが、国王もそれを望まないだろう。この獣神は国にとって必要な存在なのだ。
「大丈夫? ナクちゃん」
「うん、だいぶええよ」
普通なら消し飛んでいてもおかしくないし、縛りがある状態で行動出来ていると事実が一層と魔術師たちに恐怖を与えたのであった。
「これから……どうする?」
答えが見つかりそうもない質問をする。一人なら確実にその答えは見つからないだろう。しかし、三人なら。三人ならどんな困難にも立ち向かえる気がした。
「あたしは――、ちょっと話つけてくるわ」
最初に答えたのは狗飼だった。
「誰と?」
「ギリ」
この国を攻め落とすと宣言した張本人だ。
「ダメだ! 危険すぎる!」
それを否定するファル。話をつけるという事はあちらの世界へと行き、直接会って話をするつもりなのだろう。たしかにそれは魔の者である狗飼しかできないが、それをはいお願いしますと言えるはずがない。
「大丈夫やって。さすがに暴れたりせぇへんよ」
ファルとリアは顔を見合わせてアイコンタクトをとる。まったく信用できないと。
「次の満月やって言うてたけど、そこは信用してもええと思う。あいつは嘘をつかへんから。あたしはそれを少しでも遅らせてみようと思てな」
つまりそれまでに人間たちをなんとかしろという話である。正直なところ、狗飼にとってその他大勢の人間はどうでもいい存在だ。自分の大事にしたい人間はもう決まっている。その二人が救いたいと言うのならば、それを叶える為に自分も動くのはやぶさかではない。
「でもどうしよう……」
解決案が見つからずにリアは不安の声を漏らす。
「手は、ある」
ファルは自信なさげにそう言った。そこからは国王や魔術師たちと一緒になって話を進めていった。あまりに無謀だと言われたが、現状それが最善だと判断された。色々なものを捨てる事にはなるが、命が一番大事だ。それさえあれば何度でもやり直せる。
「頼んだで、アルさん」
肩に手を置かれて柔らかい笑みを見せる。壮大な作戦を自分が握っているのだ。だが、そんな言葉を言われてしまったら応えない訳にはいかない。狗飼だってこれから危険な道を進もうとしているのだ。
「まかせて!」
力強く、自分に言い聞かせるように言った。




