第4章 最強パーティの“単独斥候”
黒森の奥で魔導士を倒した翌朝。
カイは木の上で朝日を浴びながら、干し肉を囓っていた。
「ふう……昨夜は少し派手にやりすぎたかな。魔王軍の斥候どもが、そろそろ動き出す頃だ」
彼は今、単独で動いていた。
表向きの任務は「黒森に潜入した魔王軍斥候の殲滅」。
だが本当の理由はシンプルだ。
――所属パーティ『アーク・レヴェリオン』が、またもや全員バラバラに動いているから。
アーク・レヴェリオン。
大陸で唯一「最強」と呼ばれる冒険者パーティ。
メンバー六人全員が、伝説級の強さを誇る化け物揃い。
しかしその代償として、わがまま度も規格外だった。
• パーティリーダーであり最強の剣聖「レン」……「俺の剣の邪魔をする奴はいらない」と単独行動を好む。
• 聖女「ミア」……「神の声が聞こえるから」と突然祈りの旅に出る。
• 魔導王「ゼル」……「実験に集中したい」と塔にこもる。
• などなど。
結果、パーティはほとんど解散状態。
「みんなで集まるのは、魔王本拠地を殴りに行く時だけ」と公言している始末だった。
カイもその一人。
「まあ、俺も似たようなもんだけどな……」
彼は苦笑しながら立ち上がり、木の幹を軽く蹴った。
反転スキルで軽やかに枝から枝へ跳躍しながら、森の境界線へと向かう。
すると――
「見つけた」
前方に、黒い甲冑をまとった斥候部隊。
十名ほどの魔王軍兵士が、森の出口で何やら地図を広げていた。
中には魔法使いも混じっている。
カイは木の上から静かに観察する。
「斥候退治……単独でやるにはちょうどいい数だな。
魔法持ちもいるけど……昨日の魔導士で慣れた」
彼は微笑み、高い木の枝から身を投げた。
落下開始。
重力が体を加速させる。
「反転!」
上空へ跳ね上がり、
上昇中に再反転――
「天空反転刃!」
流星のように真っ直ぐに落ちてきたカイが、先頭の魔法使いの頭上を狙う。
双剣が閃き、魔法使いの詠唱を強制中断させた。
「敵襲!?」
魔王軍兵士たちが慌てて武器を構える。
「遅い!」
着地と同時に地面を蹴り、反転連鎖。
木から木へ、森全体を自分の滑走路に変えて高速移動。
真正面から来る槍を反転で後ろへ吹き飛ばし、
魔法の火球は自分の動きを反転させて紙一重で回避しながら間合いを詰める。
「間隙疾走!」
詠唱の隙を突き、魔法使いの二人を瞬殺。
残りの兵士たちが包囲しようとするが、カイは木を蹴って上空へ逃れ、
落下→反転→上昇→反転→急降下のコンボを繰り返して一人ずつ狩っていく。
十数秒後。
森の出口に、魔王軍斥候部隊は全滅して横たわっていた。
カイは双剣の血を払い、軽く息を吐く。
「単独でも余裕だな……
でもやっぱり、あいつらと一緒だともっと楽しいんだよな」
ふと、彼は懐から小さな通信結晶を取り出した。
パーティメンバーにしか使えない緊急連絡用だ。
「もしもし? 今黒森にいるんだけど、斥候十人ほど片付けたよ。
そっちはどう?」
結晶の向こうから、気だるげな声が返ってきた。
『……レンだ。俺は今、北の雪山で古代ドラゴンを狩ってる。邪魔すんな』
プツリ、と切れる。
続けて別の声。
『ミアよ。神託に従って西方の遺跡にいるわ。あなたも来る?』
『ゼルだ。実験中。話しかけるな』
……相変わらずだった。
カイは笑いながら通信を切った。
「まあいいさ。
俺は俺のやり方で、魔王軍の斥候を狩り続ける。
いつか全員が揃った時に、最高の舞台を用意してやるよ」
彼は再び木を蹴り、反転スキルで軽やかに跳躍した。
黒森の空を、反転の疾風が駆け抜ける。
これが、最強パーティ『アーク・レヴェリオン』の、
“いつも単独”の日常だった。
(第4章 終わり)




