17-3 八日目の出掛け先は
セイジツたちは学校で用意されているマイクロバスに乗って戻り、あやねたちは最寄り駅まで歩き、そこでタクシーを拾ってあやねの家に向かった。
「どうして彼に会えると先に教えてくれなかったんですか?」後部座席で隣のミシュエルに聞くと「競技場へ行くと聞いて、なにも思わなかったのか?」
「なにも思わないって……」
「この前、駅前のカフェで何を聞いてたんだ」
「それは……」
「これでは、なんのために行かせたのかわからないじゃないか」
「ワンワン」あやねの膝の上にいるアーモがバッグの中から鳴くので「前にも言ったが、先に説明したら面白くないだろう?」
「でも……」
「奴に会えて嬉しくなかったのか?」
「そんなことありません!」
「では、先ほどなんと言われたか、覚えてるか?」
「エッ?」
「……この説明は私がやることじゃないぞ」
「……ワン」
「エエッ?」
「ポヤンとしてる場合じゃないだろう。聞き逃したために、せっかくのチャンスを潰したら元も子もないじゃないか」
「……はい……」
「それで、なんと言われたのか、覚えてないのか?」
「あの時は……アーモ君の名前と……飼い主かということと……ことと……」
「その前になんと言われた?」
「その前ですか? ……その前……」
「……致命的だな」頭を抱える。
「ミシュウさん……」ウルウルウル。
「情けない顔をするな!」
「でも……」ウルウルウル。
「ワンワンワン」
そうこうしているうちにあやねの家に着いたので、タクシーには待っててもらい、玄関前まで行く。
「ミシュウさん……」ウルウルウル。
ミシュエルは、アーモのバッグをあやねから受け取ると大きくため息を吐き「聞き漏らすのであれば、携帯の録音機能を使え。そうすれば聞き直しができるだろう」
「……でも、今日のことはもう録音できません……」
「当たり前だろう!」
「ワンワン」
「それじゃあ……」
「それでは、明日と明後日の行動について説明する」
「……はい」
「明日は、部活が終わったら駅の連絡通路の例の場所へ行って、セイジツが来るのを待て」
「行っていいんですか!」
「……本当に、さっき言われたことを覚えてないのか……」
「エッ、さっきですか?」
「もういい」
「……ワン」
「……すみません……」
「ああ、駅に行く途中にあるコンビニでアーモが待ってるから、連れていけ」
「あのコンビニですか?」
「ワン」
「いいんですか?」
「……やめるか?」
「行きます!」
「……帰るときは、例のコンビニまでアーモを連れてこい。私がそこまで迎えにいく」
「はい」
「明後日だが、部活が終わったらネイルサロンへ来い」
「あ、はい、わかりました」
「じゃあな」ミシュエルは踵を返すとタクシーに乗り込む。