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アーモのネイルサロンへようこそ  作者: 夏八木 瀬莉乃
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17-2 八日目の出掛け先は


「あやねちゃん、紅茶、テーブルに置いとくからね」


「あ、はい。ありがとうございます」いつもの横長のソファに座ると「あやね、時間がないから今日のスケジュールを説明する」ミシュエルが少し早口で話しだすので「あ、はい」


「今日は、隣の市の市営競技場へ行く」

「競技場、ですか?」

「そうだ。午後七時までに行きたいから、さっさと紅茶を飲め」


「あやねちゃん、熱いからそのまま置いてっていいよ」

「でも……」

「すぐに出ないと、七時までに着かないよ」壁に掛かっている時計を見ると、午後六時半を過ぎている。


 立ち上がるミシュエルが「チィ、アーモ用のバッグ」と言うと「ああ、ちょっと待って」千奈津が隣の部屋へ行くので「アーモ君用のバッグって」ミシュエルを見ると「今回はアーモも一緒に連れていく」


「そうなんですか!」

「嬉しそうだな」


「はい! 私、バッグ持ちます!」

「そうか」


 隣の部屋から戻ってきた千奈津が持ってきたバッグにアーモを入れると、あやねが持つ。


 上着を羽織るミシュエルが先に玄関へ行くと「気を付けてね」千奈津があとから行くあやねに声を掛け「アーちゃん、行ってらっしゃい」続けるとバッグの中から「ワン!」と返事をする。 


 先を行くミシュエルについていくあやねが、一階の音楽教室の受付前を通って外へ出ると、モノレールの駅がある大通りへ歩いていき、十字路の手前でタクシーを拾って目的の市営競技場へ向かった。


「ミシュウさん、競技場へ行ってどうするんですか?」後部座席の右側に座っているミシュエルに聞くと「行けばわかる」一言で終わるので「……そうですね」


 季節的に暖かくなってきたので日が長く、午後七時前でもまた空がうっすらと明るい。


 目的の場所には十分足らずで着き、タクシーを降りると、正面奥に照明の点いたフィールドが見える。


 陸上部員たちだろうか。こちらも県大会が近いのでまだ走り込みをしている選手たちがいて、コーチのゲキが飛んでいる。


 ミシュエルはスタンドへ行くとゴール地点が見える一番前の席に座るので、あやねも左隣に座り、さらに左側の席にアーモのバッグを置くと、中から出して抱っこする。


「何とか間に合ったな」

「何がですか?」

「目の前を見ろ」

「目の前ですか? アアッ!」


 ゴール地点に数名の選手がかたまってコーチの話を聞いているが、選手たちは、数日前に駅前のデテーラで話をしていた北条高校のメンバー。


 そして、その中にセイジツがいる。


「ここで練習してるんだ!」

「競技場へ行くと聞いてわからなかったのか?」呆れると「エッ?」


「……もういい。見てろ」

「はい!」


 これから走り込みを始めるのかと思っていたら「じゃあ、今日の練習はこれまで。明日もここで練習だからな」

「はい! ありがとうございました!」一礼して練習が終わる。


「エーッ! 終わり? そんなぁ」あやねがガッカリすると「ワンワン!」突然、アーモが大きな声で鳴きだす。


「ワンワンワン!」


 すると、選手たちの荷物が目の前のベンチに置いてあるらしく、こちらへ向かってくるセイジツがアーモの鳴き声に気づき、あやねとアーモを見ると「あれ? 君はこの前、座山(すわりやま)駅で会ったブラックタンの仔じゃないか」目の前に来ると、一メートルほど高くなったスタンド席を覗きこむ。


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