12話 厄災襲来 その8 古代魔法
明日、エピローグ更新予定でしたが、書き直しをしたいため、勝手ながら更新日を変更させていただきます。
10月23日→10月29日(土)。
更新を待たれている読者の皆様には申し訳ありませんが、何卒よろしくお願い致します。
「オーキスぅ、沈めぇ!! ――爆炎千魔!!」
カリュウーグから放たれる、無数の炎の弾丸!
凄まじいスピードで赫い尾を引きながらオーキス目掛けて飛んで行く!
オーキスはそれを大剣で薙ぎ払っていくが、いかんせん数が多く、全てを処理しきれなかった。
空を自由自在に駆け回り、回避を試みるものの、炎の弾丸はオーキスを追尾し、着実にダメージを与えていく。
「――ぐぅぅぅう!?」
「ははははは、苦しそうだな! いくら貴様が強いとはいえ、所詮はこの程度。我の相手ならんわ! そうれ、まだまだ増やしてやろう、――爆炎千魔!!」
カリュウーグの前面に浮かび上がる真っ赤に輝く魔法陣。そこからまるでミサイルのように次々と飛び出して行く炎の弾丸。目標に当たると炎が弾けるように燃え広がるナパーム弾のような即時発動型の上級火魔法となる。
それらは目標であるオーキスに確実に着弾していった。
次第に爆炎に包まれていくオーキス。
ついにはダメージに堪えきれず力尽きたのか、頭から地面へと落下して行った。
「ふん、プラチナとは言え他愛ない。さて、木っ端どもを片付けるとする……ん?」
落下していくオーキスを上空から見送るカリュウーグ。
そのさらに下から、一筋の蒼い閃光が放たれた。
まるで落下するオーキスとすれ違うようにして突き進む蒼き斬撃!
咄嗟に魔法で防御を試みるが、斬撃が予想外のスピードであったことと、オーキスを沈めた油断もあり、カリュウーグにまさかの直撃することになった!
「――っぅう!? 小癪なぁ、誰だぁ!!」
斬撃の威力に、その顔を包むフードは剥がれ落ち、邪悪な髑髏が露わになるカリュウーグ。
眼窩の燃え盛る紫炎で捉えるのは、地上で剣を構える黒髪の青年。
「……あやつか。木っ端の分際で生意気な。下僕は何をしてっ……まさか、やられたのか!? なんという使えない奴ら。……まあ、よい。我が直々に絶望を味合わせてやろう」
そしてカリュウーグはゆっくりと地上に舞い降りて行った。
◆◇◆
おいおいおい……、オーキスさんをフォローするつもりで撃った竜刃が、おもいっきりカリュウーグに直撃しちゃったんだけど?
あれ、これまずくないか?
万が一、これでオーキスさんが戦闘不能になっていたら、間違いなく次の相手は俺に決定となるんだが?
ふと、横目でエレーナさんの方を見ると……。
「ヨハン、ナイスだ! オーキスも無事キャッチ出来たぞ!」
落下していたオーキスさんを受けめ、こちらに向かって親指を突き立てるエレーナ氏。そしてパッと見、オーキスさんの意識はないもよう。これでカリュウーグの次の獲物は童貞に決定した。
というか、エレーナさんの指示で竜刃撃っただけなんですけど!? まさかこんなことになるんて……、他力本願でことを済まそうとした報いだとでも言うのだろうか? まったくもって解せぬ!!
そんなことを考えていると、頭上よりゆっくりと降りてくる伝説の大魔導士カリュウーグ。
フードが捲れ、その肉のない素顔が露わとなっていた。
迫力があり過ぎて、もはや泣きそうなんですけど?
「ふむ、このような木っ端に我の下僕が倒されるなど誠にもって遺憾であるな。あのまま殺されていた方が良かったと思うくらい、貴様らに絶望を教えてやろう」
カリュウーグがそう語ると、禍々しく凍てつくような黒いオーラを放ち始めた。
あー、もうこれだから人外は困る! そんな強キャラ感出さないでいただきたい! モブ相手に全力を出すなんてかっこ悪いよ、ほんと?
童貞がやりきれない気持ちで一杯となっていると、カリュウーグの黒いオーラが孔雀の羽のように大きく広がり、その奥からドシンッ、ドシンッと地響きを鳴らすほどの大きな魔物が一体現れた。
「ついさっき吸収したばかりでまだまだ作りかけなのだが、憎しみが強いせいか思いのほか早く馴染んできてな。ちょうど本人も貴様らと戦いたいと望んでおる。さて、こいつの相手でもしてもらおうか」
カリュウーグの言葉に応えるように、黒いオーラの中から現れた魔物が咆哮を上げた。
「――GUAAAAAAAAA!!」
耳を劈くような咆哮を上げたのは、体長五メートルほどの黒い巨人。
ただ、その顔の部分にあたる場所には、どこか見覚えのある顔の男が埋められていた。
「ジェフレッド!!」
そう叫ぶエレーナ氏。
ただ残念ながら相手からの返事はない。意識も朦朧としているのか、焦点の定まらない瞳で、唸り声を上げるV字カットのおっさん。
まさかカリュウーグに捕まって魔改造されているとは……、なんとも哀れ。
「……オマエ、タチサエ、イナケレバ……、コロス、コロス、コローース!!」
そう語り終えると、野太い右腕を振りかぶり、俺たち目掛けて打ちおろしの右ストレートを繰り出すジェフレッド。
さっと避けるが、拳が直撃した大地は、まるで隕石が落ちたようなクレーターとなった!
なんて威力!?
「おい、お前ら? オーキスの目が覚めるまで時間を稼いでくれ! こいつうんともすんとも起きやしねぇ!」
そう言ってオーキスさんの頭をバンバン叩くエレーナ氏。
今ので死んだんじゃないかと思うくらいの強さである。もっとそっと優しく起こしてあげてほしい。
「じゃあ、このデカブツの相手は私がしてあげる! ヨハンはその骨を始末しなさい!」
骨って……、確かに骨は骨だけれども最強の骨なんですけど?
ローズリリイ的にはカリュウーグより、筋肉モリモリのジェフレッドの方が強く見えるのだろうか?
するとローズリリイの言葉にカリュウーグが。
「――ん? その闘気、髪色……、娘よ、貴様もしやアンガスター家のものか!?」
「ええ、そうよ! まさかうちのご先祖様が、こんな陰湿な奴だなんて吐き気がするわ。さっさとヨハンに斬られて死んでちょうだい」
冷たい視線でカリュウーグを見つめるローズリリイ。
相手が誰であろうと屈することがない、その強靭なメンタル。ある意味最強だと思う。
でもね、リリイさん? 戦うの俺なんで、ほんと煽るのやめてほしいです。
「ふふふ……、あーはっはっはっは!! これはいい、まさかこんなところで奴らの子孫に会うなんてな! いいぞ、貴様にはたっぷりと苦痛を味わわせてやる! アンガスターとルトナークの子孫は例外なく殺す! やれ、ジェフレッド!」
というわけでローズリリイ対ジェフレッドの戦闘開始!
エレーナさんを見るとオーキスさんにポーションをぶっ掛けてる最中だった。
頼む、早く起きてくれオーキスさん!
「さて、童よ。どうやら貴様が我の相手をするようだが、どんな風に殺してほしい? 後ろにメインディッシュが控えてるんでな。首を差し出すのであれば、苦痛なく殺してやるぞ?」
セリフがもはや物語終盤に登場してくる魔王そのもの。勇者でもないただの一市民が、魔王戦に臨むことになろうとは。運命の女神様はとことん俺のことが嫌いな様子。
もう覚悟を決めて戦るしかないのか……、ならば!!
「――竜刃!!」
バカ正直に正面から技を放つが、カリュウーグが瞬時に展開した結界でものの見事に防御された。
「ふん、オーキスとは比べ物にならん威力だな。所詮、この程度か。面白くもなんともない……、無駄に我の魔力を消費させたのは万死に値する。……死ね――エルナザート・レクシン・バッサーム、永劫の怠惰を求めし愚者よ、至高の領域にて我が敵を封じ込め滅せよ、……封滅結界!」
カリュウーグが呪文を唱えると、いきなり俺の周囲に十六面体となるガラスの壁が出現して中に閉じ込められてしまった!
まずいと思い壁の破壊を試みるが、甲高い音と共に愛剣が弾き返される。
あれ、いきなりピンチ!?
「無駄だ、童よ。これは我がもっとも好む魔法でな。敵を隔離結界に封じ込めて無力化するものだ。さらに結界は徐々に小さくなっていき、中の獲物を圧縮して圧し潰す。閉じ込められた獲物は簡単に死ねず、もがき苦しむ様はなんとも言えぬ愉悦でな。我のために精々苦しんでくれよ?」
悪趣味!? こいつめっちゃ悪趣味なんですけど!? なんなの、このサディスティックな性格は? 性嗜好がSMの領域を軽く踏み越えちゃってるんですけどぉ!?
そうこうしていると、まわりのガラス壁が徐々に狭まってきた!
やばいやばいやばいやばい!
さっさと脱出しないと、超圧縮された肉塊となってしまう。どうにかして逃げ出さないと……。
結界を壊そうと躍起になってみるが、竜刃を放ってみても傷一つ付かないガラス壁。
強度が鬼畜!! はい、無理ゲー!!
「ははははは、ほれもっと頑張らぬか! 早くせぬとひしゃげてしまうぞ?」
童貞を煽りに煽ってくるカリュウーグ。
ローズリリイは絶賛戦闘中だし、エレーナ氏はオーキスさんを介抱中。外からの援護は望めない。仮に援護があったとしても、果たしてこの結界に傷がつくかどうかすら怪しい。
あれ、このままだと俺ってまじめに死ぬ?
また彼女もいないまま人生ゲームセット?
「………………」
そんなの嫌に決まってんだろぉぉぉぉ!!
やっと安定収入が確保出来て、それなりの役職も与えられたのに風俗すら行かずして死んでたまるかぁぁ!!
まだこの世に未練しかない!!
テンパりながらも結界内で暴れに暴れまくるが、まったくもって効果なし。
迫りくるガラス板のような結界障壁。
ついには童貞の身体に密着するまでに!!
「くっ……苦しいぃぃぃ!? こ、こんな死に方……嫌だぁぁぁぁ!!」
「はははははは! いいぞ、いいぞ童よ! もっと喚け、叫べ! 我の計画を台無しにした罪を、その身をもって償うが良い!」
「――ヨハン!?」
「なっ……、おい、オーキス!! 早く起きやがれ!! あの小僧が死んじまうぞ!?」
二人とも俺のどうしようもない状況に気が付いたのか、いきなり慌て始めた。が、すでにこと遅し。もはや手遅れ。このまま圧縮されて、あっというまに肉塊ヨハンの出来上がりである。
ああ、なんでこんなことに……。
半場諦め状態で圧し潰されていると、カリュウーグが。
「童よ、まだ諦めてもらっては困るな? もっと藻掻き苦しんでくれぬとつまらないではないか?」
なんてセリフでディスってくる始末。
そして結界はさらに小さくなり、膝を抱えて座らないともうどうにもならない状態までに。
その時だった……。
童貞を毛嫌いしているかと思われていた運命の女神様は、まだ童貞を見捨てなかった。どうやらまだまだ童貞をいじめ足りない様子。
それでもこの圧縮地獄に垂らされた一本の蜘蛛の糸。
――ピキピキピキィィィーーン!!
いつものように青い稲妻が脳裏を駆け巡る!
藁をも掴む思いでステータスを開くと、そこには。
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《古代魔法系スキル一覧》
・結界魔法 練度【1】 NEW!
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キタァァァァァアアーーー!!
……と、喜んだのも束の間。こんな絶望的な状況で、今更魔法を覚えてどうしろと?
ただそれでも僅かな可能性に期待を寄せて、結界魔法とやらにスキルポイントを全振りにしてみると……。
「――っっっ!?」
湯水のごとく溢れ出す魔法の知識! そこにはなんと、この結界魔法の解呪スペルも!
さすが練度マックス! 諦めなくて良かった。
そしてすかさず解呪呪文を唱える童貞。
間に合えぇぇーー!!
「ははははは、まるであっけないものよな。次はアンガスターの子孫をどう殺すか決めると……ん?」
「ア・クト・ビラ・カイ……解き放て、――解呪鍵!」
――瞬間。
パリィンと、大きなガラスが割れるかのように崩れ去る封滅結界!
圧し潰されるギリギリのタイミングでの解呪となった。
「何ぃ!? 馬鹿なっ!? こんな木っ端に我の古代魔法が解呪されただとっ!?」
カリュウーグが驚くのも無理はない。
先ほどの魔法は、イリアさんが使用する神聖魔法のような、不死族のみを限定的に閉じ込める結界でななく、全てのものを等しくこの世界の理から完全に隔離する魔法なのだ。
正直、次元が違う。
その分、消費魔力も、発動難易度も全てが跳ね上がるが、チート強化の俺には関係ない。
「まさか……、我の描いた魔法陣にスペルミスがあったのか? いや、我がそんな初歩的なミスをするはずがない! しかし……」
目に見えて動揺するカリュウーグ。
ただそれは俺が魔法を打ち破ったからではなく、己が絶対的に信じている魔法知識に欠陥があったのかと疑心暗鬼になっているからだろう。
理由はどうあれ、攻撃するなら今がチャンス!
「――竜刃!!」
渾身の一振りを繰り出す……、が。
「つけあがるなよ、木っ端が!!」
またもやカリュウーグの結界で塞がれてしまった。
どうやら即時発動型の物理防御障壁のもよう。
ならば――。
「ア・クト・ビラ・カイ……解き放て、解呪鍵、か・ら・の――竜刃!!」
――その展開している魔法陣を壊してしまえばいい。
「何ぃ!? ぐぁぁぁぁぁぁぁ!?」
直撃。
カリュウーグが攻撃に転じようと組んでいた魔法陣も暴発し、ズドンッっという地響きと共に天高く舞い上がる粉塵!
さすがにこれは効いただろ? 効いてなきゃ、もはや神様へのクレームもの。この世界のダメージ計算を疑ってしまう。
そして次第に粉塵が晴れていくと、そこには頭蓋骨にヒビが入ったカリュウーグの姿が。
おお、やっとまともなダメージが入ったな!
「この我に……、この我にダメージを負わせるだと!? 木っ端無勢が生意気な!! 死ねぇ、――爆炎千魔!!」
応じて浮かび上がる真っ赤な魔法陣! もの凄い勢いで炎のミサイルが飛び出してきた!
こら、あかん!?
「――対魔相殺結界!!」
先ほど覚えた結界魔法の即時発動型魔法障壁の一つである対魔相殺結界。
相手の放った魔法と同等の魔力を消費し、術を無効化するという魔術師泣かせの魔法である。
眼前に展開されるガラス板のような魔法障壁。
そこへ凄まじい勢いで、次々と着弾してくる炎のミサイル。そのあまりの威力に周囲の大気は震えるが、見えない壁に遮られ一切ダメージを受けなかった!
そして、ここでさらに童貞に思いもよらぬ奇跡が。
――ピキピキピキィィィーーン!!
止まらない青い稲妻。
激しく童貞の脳裏を駆け巡る!
そろそろ自身の脳神経細胞が焼き切れないか心配になるレベル。
そんな不安な気持ちになりつつも、ステータスを開くとそこには……。
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《魔法系スキル一覧》
・中級火魔法 練度【1】 NEW! UPGRADE!
※中級火魔法練度【10】到達で上級火魔法解放。
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コングラッチュレーション、俺!
八方塞がりどころか、全方位360度逃げ場なしで塞がっていた魔法ビルドに、まさかこんなところで風穴が開くとは!
これはまじで嬉しい!
というわけで、すぐさまスキルポイント全振りで一気に上級火魔法取得する童貞。
すると、舞い上がった粉塵の先から。
「ふははははは! 自動追尾のマジックミサイルだ! 木っ端程度には勿体ない魔法で死ねるのだ! 我に感謝すると良い!!」
カリュウーグの高笑いが聞こえたので、仕返ししてやることにする。
窮鼠、猫を噛むとはこのこと。
くらえっ!
ピンっと前に突き出した右手の先に浮かぶは真っ赤な幾何学模様の魔法陣。
キラキラと輝き、まるで火の粉をまき散らす派手な顕現エフェクト。
そして唱えるは――。
「――爆炎千魔!」
応じて、魔法陣より次々と発射される炎のミサイル。
気分はまるで大魔導士!
「何ぃぃぃぃぃぃ!?」
カリュウーグもまさか俺が即時発動型の上級魔法を使えるなんて思ってもみなかったようで、防御結界もままならず次々と被弾していった。
「――ぬあぁぁぁぁぁ!?」
まさかの全弾命中!!
カリュウーグの悲鳴が粉塵の中に轟いた。
【あとがき】
本日も異世界えぶりでいを読んでいただき誠にありがとうございます!
次週やっとエピローグ!
長かった三章も終わりを迎えます。
まさかの大魔導士ヨハン爆誕回。
来週もお楽しみー!
次回の更新は10月23日(日)です。




