11話 厄災襲来 その7 ドラゴンエッジ
続きです。
「くるよ! アタシたちが敵を引き付ける! あんたたちは隙の多い奴から始末していってくれ!」
なんとエレーナ氏が自ら囮を申し出てくれた。
おお、これは助かる!
「承知しました! 我々の集中攻撃で一体づつ確実に仕留めていきます!」
「ふん、あのオーキスが将来有望と言ってみせたんだ! 期待を裏切らないでおくれよ!」
そうエレーナ氏が語ると、分厚い刃のグレイブを肩に担いで、黒蜥蜴に攻撃を仕掛ける!
力任せにグレイブを一閃すると、近くいた黒蜥蜴が一体ハデに吹き飛んで行った!
どうやらこちらも脳筋世界代表のもよう。最早、女子のパワーではない。どこか漂う女オーキス臭。
それに続く取り巻き三名の冒険者たち。
各々、槍に戦斧、大槌を手に携え、敵を見事に翻弄する。こちらも相当な実力者のようだ。
「ヨハン! どいつから仕留めるの? さっさと指示しなさい!」
アドレナリン全開のローズリリイが〝待て〝に耐えられない様子。……やれやれ。
「今、エレーナさんが吹き飛ばした奴から仕留めましょう! 前衛は回避防御重視、自分とリリイさんでアタック掛けますので、後衛はフォローお願いします!」
「「了解!!」」
あのオーキス流デスマーチ以降、パーティ連携も手慣れたもので、部隊のチームワークは格段と向上している。
特に各自の役割分担が明確になったことで、より一層殲滅力が増した。
ラウルとネイ氏が敵のヘイト管理と盾役、主攻の童貞とローズリリイ、遠距離砲台のルナ氏にケーシィ。
これで連携すると……。
「ヨハン、ネイさんと正面から突っ込む! 相手の攻撃がきたら左右に分かれるからあとよろしく!」
円盾を構えたラウルとネイ氏が、黒蜥蜴に突撃。
マッコウクジラ並みのデカさのモンスターになんの躊躇もなく突っ込んで行く二人の勇気。さすがと言わざるを得ない。
あの鋭い爪と牙は、難なく鋼鉄すら嚙み千切るだろう。
しかし、それも二人にかかれば――。
エレーナ氏に吹き飛ばされた黒蜥蜴Aは、粉塵の中から起き上がると、ちょうど攻撃を仕掛けて来たラウルとネイ氏をロックオン。
大きな口を開き、二人目掛けて飛びついてくるが……、それを左右に飛んで躱すラウルとネイ氏。
ガキンッと、空を切る黒蜥蜴Aの鋭利な牙。
そこへ、俺とローズリリイが渾身の斬撃を加える。
無防備な相手への必中の攻撃。
――ズバンッ!!
黒蜥蜴Aの黒曜石のような硬い鱗をものともせず、その背面へと×の字になるように巨大な斬撃を加えて、その場から素早く退避。
そして最後は後衛組の……。
「――震風牙!」
「――灼炎槍!」
……トドメの一撃!
二人の放った攻撃は黒蜥蜴Aの頭を見事に貫通。
怒涛の連続攻撃で、まずは無難に黒蜥蜴一体を撃破した!
「へぇー、やるじゃないか! オーキスが自慢するだけはある! じゃあ、どんどんいくぞ!」
これを皮切りに、多方へと分断されていく黒蜥蜴。
あの巨体で連続攻撃をされたら敵わないが、各個撃破するのであれば、その限りではない。攻撃モーションもそこまで速くもないので、爪と牙さえ気を付けていれば、うちの部隊でもなんとかなる。
エレーナ氏たちが派手に動いてくれて、黒蜥蜴たちのメインターゲットを取ってくれているのも非常にありがたい。
我々は地道に各個撃破するのみ。
そして、黒蜥蜴B、Cと順調に倒していくのだが、ここで黒蜥蜴Dが予想外の行動に出る。
カパっと、大きく口を開けると、聞こえてくるのは謎の波動音。
キュイン、キュイン、キュインっと、まるで巨大なエネルギーをチャージするよな……。
――刹那。
放たれたのは黒い閃光!!
大地を激しく抉りながら、扇状に黒蜥蜴Dより吐き出されたのだ!
その射程圏内にいたエレーナ氏の取り巻き三名が、黒い閃光に巻き込まれ被弾。
直撃は避けたようだが、爆発のダメージが大きいのか行動不能となる取り巻き三名。
床ペロは回避したものの、まさかの地面に四つん這い状態となってしまった。
あ、これはまずいかも。
「皆さん、彼らのフォローにまわります! 敵は放出系の戦技を使うようです! 一撃離脱スタイルでなるべく射程内に入らないようにしましょう!」
「「了解!」」
そして戦技を使って隙だらけの黒蜥蜴Dをタコ殴りでトドメを刺す我ら一同。
残すは二匹、戦技を使われる前に処理してしまいたい。
黒蜥蜴E、Fはエレーナ氏が相手をしていたのだが、こちらも二匹同時に口をカパッと開く!
黒蜥蜴たちはエレーナ氏に対して、対角線となるように並んでいるため、その攻撃範囲はとてつもなく広い。
どうやらエレーナ氏を道連れにする狙いのようだ。
「――しまった!?」
エレーナ氏もそれに気が付いたのか、回避行動をとろうとするが、逃げ場がない!
間違いなく、どちらか一方の攻撃がエレーナ氏に被弾するだろう。なぜ、アマゾネス装備で来たのか。
「ちぃぃ……、クソっタレ!! 最後の最後までアタシに迷惑を掛けるんじゃないよ、ローガン!!」
そんな悪態を吐くエレーナ氏。
童貞の今後を考えると、あのエロスの権化をこんなところで死なせるわけにはいかんぜよ!
俺はラッキースケベの可能性を信じたいのだ。
やはり考えるまでもなく、身体が勝手に反応する童貞。
集中力が限界突破していたのか、ふと脳裏に浮かんだのはオーキスさんの代名詞と言える必殺技。
気刃なんて比較にならないほど、鋭利に研ぎ澄まされた闘気の刃……。
ピコーンっと頭上に電球が出現するが如く何か閃いたが、それを気にする間もなく、攻撃動作に移る童貞。
そして、口にするのは……。
「――――竜刃ィ!!」
身体強化練度8を発動し、魔剣グランドリッパーを全力で振り切る童貞。
そこから放たれるは一筋の蒼き刃。
地面を抉り突き進むその蒼い刃は、今まさに黒い閃光を放たんとする黒蜥蜴Eを綺麗に一刀両断とした!!
「エレーナさん!!」
童貞の合図で回避行動をとるエレーナ氏。
黒蜥蜴Fから放たれた黒い閃光を躱したエレーナ氏は、そのままグレイブで黒蜥蜴Fの頭蓋を叩き割りトドメを刺す!
ふぅ……、なんとかなったようだ。
ほっと胸を撫で下ろし、一息吐こうとするが、何故か仲間がそれを許してくれない。
「ちょっとヨハン? 今の何よ? あんな技使えるなんて聞いてないんだけど? いつの間に練習してたの?」
「おいおい、ヨハン!? お前、とうとうオーキス先生の技まで使うようになったのか? ほんと勘弁してくれよ! 全然追いつけねーじゃん!」
ローズリリイとラウルから抗議の声が上がるという。ほんとチートですまん。
「いや、ただの見様見真似ですから。それにオーキスさんに比べたらまだまだです。威力もはるかに劣りますし」
とまあ、語ってみたものの、先ほどの閃きは気になるところ。
とりあえずステータスを表示してみると、そこには……。
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《個有流派スキル一覧》
・我流:竜刃 練度【★】 NEW!
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まごうことなきスキルゲットの表示が。
しかもどうやらこれも個有スキルのようである。
つーか、我流って……。自らの技が個有判定されるオーキスさんの人外具合よ。でもまあ、オーキス流じゃなかっただけマシだとしよう。
それはさておき、ここで一つ分かったことがある。
個有と名が付くスキルは、練度マックスで手に入るとみた! 原理はわからないが、スキルポイントを節約出来るのはありがたい。
そんなことを考えていると、エレーナ氏が颯爽とこちらへとやって来て。
「いやぁー、助かった! ほんとやるじゃないか! さすがオーキスの弟子だな! まさか竜刃まで撃てるなんてビックリしたよ!」
などとあっけらかんと笑いながら語る。
弟子? あれ、俺ってそういうカテゴリーなの?
やだ、脳筋の弟子なんて。
こちとらメイジビルド目指してるんだけど?
「あと残すはカリュウーグだけだな。……って、おいおいオーキスの奴、大苦戦じゃないか!?」
エレーナ氏の言葉に上空を見上げてみれば、大気が震えるほどの炸裂音!
ちょうどカリュウーグの放った魔法が、次々とオーキス氏に着弾しているところだった。
「ちぃ……、腐っても三英雄ってとこか。オーキスだけじゃ荷が重いな。おい、お前ら? オーキスのフォローにまわるぞ? 悪いがうちの連中じゃあ、カリュウーグと戦り合うには、少しキツそうだからね?」
「姐さん、そんなこと言わないでください! 我々はまだやれます!」
「そうですよ! 姐さんの弾除け代わりくらいにはなれますから使ってください!」
「新人に負けてられるかってーの!」
そう言って、なんとか根性で立ち上がる取り巻き三人組。が、しかし――、なんだかんだ言っても、立っているのがやっとの様子。
「アホか、もう立っているのが限界だろーが! お前らは後方待機! ポーション飲んで体力回復に専念しろ! それに弾除けならいいのが見つかったしな?」
そう言って肉付きの良い左腕を、童貞の首へとまわし、そのままヘッドロックを決めるエレーナ氏。
まさか童貞の頭と同サイズの巨大なOPPAIに埋もれることになろうとは。
ああ、なんという弾力と柔らかさなんだろう。
これが新兵器OPPAIの威力だとでも言うのだろうか? エレーナ氏の弾除けでもなんでもやりたくなる不思議。
そんなハッピータイムを味わっていると。
「ちょっ、ちょっと! 離しなさいよ! ヨハンが苦しそうじゃない!」
「う、うちの隊長を弾除け代わりに使うなんてあんまりです!」
ヘッドロックされている童貞を見て、ローズリリイとルナ氏がエレーナ氏に噛みつくという。
なんていう仲間想いの奴らだろうか。
でもいいのです、童貞は本望なのです。仮に死ぬのであれば新兵器OPPAIでこのまま圧死したい。
「ん、なんだお前ら? こいつの女か? だとしたらすまんな! ちょっとした言葉のあやだ。だが、悪いがこいつはちょっと借りるぞ? 立派な戦力なんでな」
「だ、誰が女よ!? 失礼ね!!」
「ち、違います! 私は……その、あの……」
Oh……、まさかの全否定っすか。
もう少し脈ありな回答なら嬉しかったのに。でもまあ、これは想定の範囲内。童貞のモテ期は来世ですら訪れそうにないもよう。
「あの、エレーナさん? オーキスさんが戦っているのは魔王パドスではなくて、本当にカリュウーグ本人なんですか?」
ちょっと空気が微妙になりかけていたので、別の話題を振ってみた。とりあえずあの黒ローブの男、カリュウーグについて知りたいところ。
「ああ、そうだ。かつて剣聖アンガスター、穿弓ルトナークと共に、魔王パドスの討伐に出向いた伝説の大魔導士……、反逆者カリュウーグ本人だよ」
「反逆者!? え、どういうことですか? 聞くところの史実とかなり違うようですが?」
「当たり前だ! 救国の英雄が反旗を翻したなんて後世に伝えられるわけがないだろ? 都合の良いように改竄されてんだよ!」
こうしてエレーナ氏の口から、本当の王国史が語られることに。
まず魔王パドスが治めていたバルバネス魔瘴国と言うのは、今でいうところのジャスバールと同じ迷宮都市国家ということが判明した。
もっぱらアルフェリア王国へ攻め入るのは、魔王パドスが瘴気で作った魔物たち。
基本、大半の純血種の魔物たちは我が強いこともあり、魔王パドスに従うこともなく、自由奔放に魔物支配地域の奥地で過ごしているとのこと。
魔王パドスに従う魔物はほんの一握りの種族のみ。
それでも魔王パドスの支配下にある魔物は、数万を超える規模のようだった。
そして昔話の通り、魔王討伐に出向く三英雄たち。
魔王の居城へと乗り込み、魔王パドスと相対した。
ここから歴史が改竄される――。
どうやら三英雄は魔王パドスを封印するのではなく、この時ちゃんと討ち果たしたようだ。
ただ同時に末弟カリュウーグは、魔王の力の根源を知ってしまうことになった。
それが例の――ダンジョンクリスタルである。
瘴気の力で様々なものを創造できるチート能力。
稀代の天才魔導士であるカリュウーグは、この時全てを理解してしまい、魔王が持つダンジョンマスターの力を欲してしまった。
これが騒動の始まりである。
まずカリュウーグは自身の身体を、魔王と同じ不死族へと変えるため、禁断の秘術を使用し、なんと不死者へと転生してみせたのだ。
そして魔王が残したダンジョンクリスタルを長い年月を掛けて解析し、再び不死族の軍団を編成するまでに。
クリスタルの力を用いて、様々な魔瘴石を作り上げるカリュウーグ。
支配下に置いた魔物のラインナップは、魔王パドスを遥かに超えたという。
そんなカリュウーグの現状を兄二人が知ることになったのは、魔王討伐より十年もの月日が経った頃。
このまま放っておくわけにはいかず、兄二人は末弟であるカリュウーグを泣く泣く討伐することを決めた。
そして決戦。
王国全土を巻き込んだ、熾烈な争いは一年以上も続き、とうとうカリュウーグを追い詰めることに成功したアンガスターとルトナーク。
不死者と化したカリュウーグにトドメを刺そうとするが、カリュウーグは前もってダンジョンクリスタルに自らの魂を移してしまっていたため、二人にカリュウーグを倒しきることは出来なかった。
ダンジョンクリスタルを破壊しない限り、不死身と化しているカリュウーグ。仮に倒しても、瘴気の力で何度でも復活を果たしてしまう。
ちなみに魂を移したダンジョンクリスタルは、カリュウーグが地底の奥深くに隠してしまっているため、早々に見つけ出せるものではなかった。
なすすべのなかった二人は、やむなくカリュウーグの身体を封印することに。
瀕死の重傷を負いながらも、なんとかカリュウーグの封印に成功した二人。
この騒動の幕は、カリュウーグ封印という形で閉じることになった。
そして年月が経ち傷の癒えた二人は、カリュウーグの魂が入ったクリスタルを探す旅へと出る。
ただ、残念なことに彼らが生きている内に、そのクリスタルを見つけ出すことは出来なかった。
その後、王国は責任をもってカリュウーグを代々封印してきたわけだが、つい五年ほど前に事件は起こる。
何者かが墳墓に侵入し、封印処理してあるカリュウーグの身体を持ち去ってしまったのだ。
さすがにこんなことを公にすることは出来ず、国は秘密裏に犯人を捜すが、その足取りは未だ不明。
未解決事件として現在まで至ることになった。
そしてつい最近のこと。
ハーフベルで不審な事件が次々と発生する。
魔瘴石が大量発生し、魔物がハーフベル周辺に巣を作り始めたのだ。
さらにどういうわけか、巣を駆除しようとする冒険者ギルドに対して、街の代官であるローガンが干渉を始める事態になるという。
そんな事態となったため、エレーナ氏がローガンを調べたところ、カリュウーグとの繋がりが見えたらしい。
「と、いうわけでアタシたちはローガンに近づいて、カリュウーグの動向を探ってたってわけさ。そしたらこんな大事になるもんだからまいったよ!」
そう語り終わると、豪快に笑い飛ばすエレーナ氏。
「いきさつは理解しました。ただ、一つ疑問なんですが、これって誰からの依頼なんですか? ギルド案件にしては極秘情報が多すぎる気がするんですが?」
「へぇ、勘の良い奴だな。ま、隠してても仕方ないか。まあ、依頼主はこの国のトップだよ」
「え、それってまさか……」
「そっ! アルフェリア王国第15代国王、アルフェリア・ベルゼ・ユリウス……国王陛下本人さ」
Oh……、まさかの国王ミッション!?
あれ、もしかしてこれって失敗は許されない感じのやつ?
「さあ、覚悟はいいかい? 相手は魔王よりも厄介な奴だからね! じゃあ、一緒に行くのは隊長のあんたと……」
エレーナ氏がこちらを一望すると、いの一番で手を上げた奴が一名。
「私も行くわ!」
言わずもがなローズリリイである。
「ああ、確かアンガスター家の……。よし、じゃああんたとアタシとこいつの三人で行くよ! 残りは後方待機! まだ敵が出てくるから気を抜くんじゃないよ!」
こうしてまさかの三人組でラストバトルに挑むことになった。
【あとがき】
本日も異世界えぶりでいを読んでいただき誠にありがとうございます!
やっと次回は三章ラストバトル。
どうなることやら。
そして三章がかなり長くなってしまいました。
四章はスローライフな感じで組み立てたいですが、作者の気まぐれでそれもかわるという。
まあ、そんな感じで進めてまいります。
だらだらと更新頑張りますので、お付き合いください。
次の更新は10月16日(日)予定です。
お楽しみに―!




