10話 厄災襲来 その6 ユニークスキル
変更です。
9話 厄災襲来 その5 その名はカリュウーグ
三賢人→三英雄としました。
むかーしむかしの話。
当時、この地ではアルフェリア王国とバルバネス魔瘴国が、お互いの領土を奪い合う戦争をしておりましたとさ。
人間と魔物が激しく争う時代。
やがて情勢はバルバネス魔瘴国が優勢となり、アルフェリア王国は滅亡の危機に陥りました。
そんな時、王国に現れた三人の戦士たち。
剣士に、狩人、そして魔法使いの三兄弟。
その実力はまさに万夫不当。
襲いくる魔物たちをばったばったと薙ぎ倒していき、あっという間に形勢は逆転。
そして三兄弟は魔城ドラクロワへと乗り込み、魔王パドスを追い詰めるまでに。
ただ三兄弟に魔王を倒すことが出来ませんでした。
なぜなら魔王パドスは不滅王だったのです。
不死族の王種である不滅王は、瘴気がある限り、何度でも復活する恐ろしいモンスター。
まさに不滅と言える存在。
そこで三兄弟で一番知恵の優れた末弟のカリュウーグは、魔王を封印するある方法を思いつきました。
それは自らの身体に不滅王を封じ込めると言うものでした。
長男のアンガスターと、次男のルトナークは、その提案を拒みましたが、他に方法もなく、仕方なくその案を承諾することに。
こうしてカリュウーグは自らの命を犠牲にすることで、魔王パドスを封印することが出来ました。
魔王のいなくなったバルバネス魔瘴国は瞬く間に滅び去り、アルフェリア王国に平和が訪れましたとさ。
めでたしめでたし。
◆◇◆
「……って、全然めでたくねーー!!」
そんなことを叫びながら、襲い掛かってくる骨戦士を愛剣で薙ぎ払う童貞。
結界突入後、敵と戦いつつ、ルナ氏から王国昔話を聞いていたのだ。
「その後、カリュウーグ様のご遺体は墳墓に埋葬され、厳重に封印を施されたみたいです。ただ、年月が経過すると封印の力は弱まるみたいで、再封印が必要となります。ですので五十年ごとに封印の式典が行われ、その時に古くなった墳墓も新たに建て直されるみたいですよ、――っと!」
ルナ氏はそう語ると、ネイ氏から借りた予備の槌矛で、骨戦士の頭蓋骨を粉砕する。
弓矢じゃ効率が悪いと判断すると、すぐさま獲物を変えるルナ氏の柔軟性。
我が隊女子の、なんと逞しいことか。
「ということはルナさん? 魔王の封印が解けたという認識で良いのでしょうか?」
「そう……、ですね。でもその場合は魔王パドスが蘇ったことになるので、それだったらイリアさんも相手のことを魔王パドスと言うはずなんですが……、なぜカリュウーグ様と名指ししたんでしょうか?」
「確かに……、ということはやはり本人なんですかね? ――っと!」
まるで地面に落ちた角砂糖に群がる蟻のように、我々の周囲に集まる骨戦士たち。
愛剣を横に薙ぐと、そこらかしこからボキボキっと骨の折れる音が鳴り響く。
小気味の良い音が鳴るので、意外とこれが気持ち良い。
「なあ、ヨハン? こいつらを倒すのはいいが、まじでキリがないぞ? 俺たちの体力が尽きる前になんとかしないとやばくないか?」
と語るラウル氏。
最近、闘気の使い方を覚えたせいか、攻撃力がすこぶる上昇中の彼。
天性的なフィジカルとスタミナを持つラウルでも、このまま闘気を使い続ければ、一時間もしない内に床ペロするのは間違いなし。
結界内の瘴気は、減るどころ増える一方。
ふと足元を見てみれば、瘴気の黒い煙は我々の膝下近くにまで達しようとしていた。
「確かにこのままだとジリ貧ですね……、瘴気を減らそうにもどうしたらいいか……」
そんなことを考えている時だった。
視界の隅に変な光が入るなと思ったら、ウエストポーチの中から、謎の光が漏れだしているではないか。
ぶぉん、ぶぉんっと、点いたり消えたりを繰り返すダンジョンクリスタル。
もしかしてこの瘴気に反応しているのだろうか?
おもむろにポーチからクリスタルを取り出すと、突如、脳裏に奔るいつもの青い稲妻。
――ピキピキィィィーーンっと、げっちゅ!
ああ……、これ、完全にきましたわ。久しぶりに感じる、謎の確信感。だって、もうすでに手ごたえ感じてますもん。
いそいそとステータスを開くとそこには……。
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《特殊個有スキル一覧》
・魔瘴宮創造 練度【★】 NEW!
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「……………………」
さすがのこれには絶句する童貞。
と、同時に流れ込んでくる個有スキルの知識の数々。
個有スキルて……、しかもすでに練度がマックスマークの星印。
どうやらこの童貞、ダンジョンクリスタルを媒体に、ダンジョンを造れるようになったもよう。
今日から俺もダンジョンマスター!
……って、そんなバカなっ!?
驚愕のあまり固まっていると、近くに居たスケルトンが剣で俺に斬り掛ってきた。
「――隊長!? 危ない!!」
それをルナ氏が槌矛で弾いて、そのままスケルトンを粉砕する!
うぉっ!? あっぶねぇー、今のはまじ助かった!
「ルナさん、ありがとうございます!」
「隊長、急にどうしたんですか!? まわりは敵だらけなんですから、動きを止めないでください!」
ごもっとも。
ルナ氏に叱られるという。ほんとすんません。こちらも想定外のことが起こりまして。
でもそのおかげで、このエンドレスで続くかと思われた、スケルトンデスマーチを終わらせる良い方法を思いついたんですよ。
「皆さん、しばらく時間を稼いでもらえますか? スケルトンの増殖を止める手立てを思いつきました! ただ戦えませんので、フォロー願います」
「了解! ヨハン、どのくらい時間を稼げばいい?」
と、活き活きとした顔でそう答えるラウル君。
戦闘がそんなに楽しいのだろうか? まるで久しぶりの散歩に出かけた大型犬のようである。
「三分は頼みたい!」
「わかった、任せろ!」
ラウルの返答で、童貞を囲むようにして布陣するブルークレア隊メンバー。
周囲がほぼ女子しかいないせいか、童貞が立つセンターポジションには、やたらフローラルな香りが漂ってくる。
これは全力で深呼吸しちゃう。
「って、考えている場合じゃないな、さっさと終わらそう。……――クリスタル起動、――メニュー!!」
応じてダンジョンクリスタルから浮かび上がったのは、半透明の操作パネル。
まさか異世界に来てまで見ることになるとは思わなかったダブレット端末画面。
使い方はすでに頭の中にインストール済み。
スキルってほんと便利、説明書いらず。チート万歳!
そして画面を指でスライドしていくと、ある一つの項目にいきついた。
これだ、――【迷宮核瘴気吸収】。
ダンジョンクリスタルを使用する上で、絶対欠かせないものが一つある。
それは瘴気だ。
魔瘴宮創造スキル発現者は、ダンジョンクリスタルを用いて、ありとあらゆるものを、瘴気を消費して創造していく。逆を言えば、瘴気がなきゃ何にも出来ない。
しかしお陰様で、瘴気なら嫌と言うほど周囲にある。エネルギー補給がてら、瘴気を全て消し去ってしまおう。
ということで、ポチっとな。
童貞が【迷宮核瘴気吸収】の項目を選択すると、左手に持つダンジョンクリスタルが輝き出し、まるで渦を巻くように周辺の瘴気を凄まじい勢いで吸収し始めた。
まるでサイクロン掃除機のような吸塵力で、どんどん瘴気を吸い込んでいくダンジョンクリスタル。
ズゴゴゴゴっ……と、効果音もえぐい。
あまりに壮大な光景に、しばらく様子を見ていると、前方にいたスケルトンの身体も徐々に崩れ始めていく。
どうやら瘴気で生まれたモンスターも吸収可能なもよう。ただし、吸収制限はあるみたい。
しかしそれでもスケルトンは、あっという間に黒い塵と化し、瘴気と一緒にクリスタルへと吸い込まれていった。
これには堪らずローズリリイも。
「ちょっと、ヨハン!? スケルトンが全部消えちゃうじゃない! 少しは残しなさいよ!」
いや、残せと言われましても調整なんて出来ないし。
「すみません、リリイさん。初めてやるもんですから調整がきかなくて」
「ちょっと! せっかくいい感じだったのに!」
両手を腰にあてて、ぷんすかと怒るローズリリイ。
褒められることはあっても、叱られる道理はないんだが?
するとルナ氏が。
「それにしても隊長……、なんでこのクリスタルでこんなことが出来るってわかったんですか?」
魔封〇のように吸い込まれていく瘴気を見ながら疑問を口にするという。
ですよねー。
ああ、本当にしまった。咄嗟のことで言い訳なんて考えていなかった……、どうしよう? チートのおかげなんです、とも言えないし。
なんて言えば正解なんだ?
童貞が必死に言い訳を考えていると、しばらくして瘴気の吸収がピタッと止まった。
周りを見渡せば、ドライアイスのように漂っていた瘴気も、間欠泉のように吹き上がる瘴気の柱も、蟻のように群れるスケルトンたちも、その全てがものの見事に消え去っていた。
あるのは、手元でキラキラと輝くダンジョンクリスタルのみ。
どうやら瘴気吸収完了のご様子。
「ふぅ……、とりあえずこれで終了のようです。なんとかなりましたね。あと、ルナさん? 先ほどの質問でしたが、ただの〝勘〝です。なんとなく出来るかもっと思ったら出来ただけですので」
「勘……ですか。隊長って、ピンチの場面で、ほんと凄い力を発揮しますよね?」
「いやぁー、ピンチに強いというか、逆境に強いというか、なんていうのか、……ははっ」
自分で言っててパ〇プロかよっと、ツッコミたくなるほど苦しい言い訳。
これ以上は詮索しないでほしい。
童貞の語彙力はゼロよ!
そんな感じでしばらく談笑していると、こちらへと近づいてくる戦闘音。
激しくぶつかり合う甲高い金属音や男女の叫び声。
しかもそれが複数人。
「――迎撃態勢!」
童貞の指示で咄嗟に身構える一同。
やって来たのは、見覚えのある身なりの良いおっさんこと、ローガンとその取り巻き五名。
そしてもう片方は、左目に眼帯を巻いた肌の露出が多い橙色髪の美しい女性と、その取り巻き三名。
「くっ、しぶとい! さっさと死ね、エレーナぁ!」
「ふん、あんた程度の腕でアタシを殺れると思うなよローガン?」
どうやらローガンと、ハーフベルのギルドマスターことエレーナ氏が戦闘中のもよう。
ギルドマスターって言うから、もっと年配の人かと思いきや、何が何が。年齢もイリアさんくらいやんけ。
というか肌の露出がもの凄い。しかも健康的な褐色肌で爆乳という。うん、溢れ出すエロスがヤバいな。
装備もビキニアーマーとまでは言わないが、上半身は黒のへそ出しチューブトップにショルダーアーマーのみ。下半身はヒョウ柄の腰巻とビキニパンツというセンセーショナルなスタイル。
まさかのアマゾネス装備、しかも褐色爆乳という奇跡。
あの布の防御範囲で何から何を守れるというのか。
上下に激しく揺れ動くその乳房、童貞にポロリの可能性を予見させてしまうほど。
これはもう彼女という存在を称えて、爆乳三唱するしかないだろ?
はい、ばっくにゅう、ばっくにゅう、ばっくにゅう!
ああ、童貞は感無量でございます。
正直、呟くSNSに画像をアップして、この感動を同胞たちと分かち合いたい。
そんな妄想に浸っていると、いきなり上空からおどろおどろしい声が響き渡る!
「――我の、瘴気を、奪ったのは、誰だぁぁぁぁ!!」
腹の底にまで響くような野太い声。
先ほどの黒ローブの男が、上空から我々の目の前へと降りて来たのだ!
それと同時に、ところどころ焼け焦げているオーキスさんもカリュウーグの正面にピタッと着地。
「ローガン!! これはどういうことだ!? なぜ我の瘴気がなくなっている!!」
黒ローブの男、ブチキレである。
久しぶりに見たなぁ、あんなにキレてる人。
「カ、カリュウーグ様、それが私たちも何故こうなったのかさっぱりで……」
なるほど、どうやらあのブチキレてる黒ローブの男が伝説の大魔導士カリュウーグらしい。
……うん、帰りたい。
なぜなら瘴気を消したの俺だから。
バレたら確実に狙われる。いや、真っ先に殺されるだろうな。どうしよう、もう果てしなく嫌な予感しかしないんだけど?
まじでオーキスさんがあいつを倒してくれることを祈るしかない。
「オーキスを止めるどころか、我の計画まで台無しいにしおってからに!! もう我慢ならん!! せめてその命で償えい!!」
「カ、カリュウーグ様、おっ、おやめください!!」
そんなやり取りをしていると、ローガンたちの足元に現れたのは禍々しい漆黒の魔法陣と、同時に額には怪しげな刻印が浮かび上がる。
「――生贄召喚、出でよ……呪鱗の悪魔!」
「なっ!?」
驚いたのも束の間。
ローガンたちの全身が、ぼこぉっと、嫌な音を残して身体が変形し始めた。
応じて叫ばれる痛々しい悲鳴。
まるで経絡秘孔を突かれた某世紀末伝のモヒカンたちのように、ローガンたちの身体は異形の姿へと変貌していく。
次第に身体は黒い鱗で包まれていき、あっという間に全長十メートルをゆうに超す、巨大な蜥蜴のようなモンスターとなってしまった。
どうやら無事人間を卒業された様子。
「おい、お前ら? 特務隊のブルークレアだな? オーキスから話は聞いている。オーキスにはカリュウーグに専念してもらうから、アタシたちであのデカいのを倒すぞ? いいな?」
と、初対面でも問答無用で指示を出すエレーナ氏。やはりどうやら戦闘は免れないらしい。
六匹かぁ……、え、あのデカいのを六匹も?
童貞が戸惑っていると、カリュウーグが。
「いけ、我が僕どもよ。一人残らず喰らい尽くせ!」
素敵な戦闘開始の合図をしてくれた。
【あとがき】
本日も異世界えぶりでいを読んでいただき誠にありがとうございます!
主人公まさかのダンジョンマスターに覚醒です。
まだまだ主人公のなんちゃって覚醒は続きます。
もうすぐ三章も終わりです。
こんなんでいいのかなぁと思う毎日。
自問自答が続くぜよ。
ちなみに夜にもう一話更新します。
久しぶりの連投です。
最後にこの数日間、誤字報告、感想、いいね、ブクマ、評価をいただきました読者の皆様、本当にありがとうございます。
だらだらと更新頑張りますので、お付き合いください。
夜もお楽しみに―!




