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女王レアイラ

 使用人達や店員に商売の基本方針を伝えておいた。それから俺達は様々な用事を終わらせて街を出発する。

 食糧を買いに来た村人達は、俺の屋敷の護衛役に任せてこの街で別れる。


 街の門に領主の家令や兵士、メイドなどの使用人達が見送りに来てくれた。

 改心したのか脅えているのか、バカ領主が大人しくなったので仕事がしやすくなったと感謝された。

 仲間達は首を傾げていたが気にしないように押し通して王都コニッシュに向かう。

 人口12万人くらいの街で、他国との交易の中心になっているらしい。

 治めるのはレアイラ女王。現在37才で夫とは死別している。子供がまだ8才の姫なので譲位できないらしい。

 婿であった前王の死後、女王になったらしく苦労しているそうだ。

 娘が年頃になったら、娘婿に王位を譲ってノンビリしたいと言っているとのことだ。


「何でも、代々(だいだい)女系らしくて女の子が産まれる確率が9割なんだって」


 リーゼが聞いた話だと、王家は婿を取るのが伝統らしい。優秀な男を広く募るそうだ。

 前王も試練を突破して王女だったレアイラ女王と結婚したと、ロマンチックな馴れ初めに憧れていたみたいだ。

 魔王軍に喧嘩を売るような男なら、熱烈に愛して欲しいと言われた。

 女の子は恋愛に夢を見るな~。熱烈にお尻を触るんじゃ駄目か?



 そんな感じで2日掛けて、昼には王都に到着した。

 大きな門を潜(くぐ)ると兵士達が敬礼で迎える。

 大袈裟にしないで欲しいと言ったのに伝わってないのか?


 一通りの挨拶を聞いて兵士達が王城に案内してくれた。

 魔王軍の幹部らしき奴に、派遣した兵士を全滅させられたと聞いていたが、王城でも戦闘があったのか、庭がズタズタになっている。庭師が必死に直している最中だ。


 馬車を預けて城に入る。旅で疲れているでしょう、と休憩を勧められたので、ありがたく休む。

 豪華な部屋でお菓子を摘まんだり、食事をしたりして過ごした。

 女王は俺達の都合に合わせてくれるらしく、謁見の希望時間を訊かれたので、明日の朝イチにして貰った。

 女王に会う前に風呂に入ったり、身支度を整えたかったからだ。主に女の子達が。


 謁見が終わったら街に行ってみよう。兵士に先導されていたし、目立ちまくっていたから馬車に引っ込んでて街を見てない。

 手分けして準備をする時に散策をついでにしたい。歓迎されているとは言え、一応他国なのでリーゼを1人にする訳にはいかないから、2~3人ずつに分かれて準備をすることになった。

 俺とリーゼとアルテミス、ユリアとカリン、ビリー達で分かれて行動する。

 俺達が武器や防具を、ユリア達が食糧、ビリー達は旅や冒険に必要な物を。封印の遺跡の情報を聞いてから必要な物が変わるだろうし、ビリー達冒険者に任せた方がいい。


 明日の行動が決まったので、それぞれの部屋に帰る。アルテミスが1人部屋を嫌ったので俺と一緒だ。

 食事のあと、城のメイド達に風呂の準備をして貰い、2人で入った。


「風呂は日本人には欠かせないな~」

「ん! アルにも欠かせない。ごしゅじんのペットもフロ好きだから元気?」


 俺の息子を掴んで不思議そうな顔をする。可愛い女の子が居る時だけ元気なんだ。


「はふ~」


 食事のあとなので、アルテミスのお腹はぽっこりしている。それを撫でると気持ち良さそうに息を吐いた。

 お互いに身体を洗い、風呂から上がるとアルテミスは素っ裸のままベッドに飛び込む。

 ポヨンポヨン跳ねて楽しそうだ。おっぱいは跳ねないけど。


「ごしゅじん、一緒にする!」


 俺は子供じゃないのでしない。風邪を引かないように、アルテミスに服を着せた。

 跳び跳ねていたので時間が掛かったが、着終わる頃には落ち着いたらしく俺の膝に乗ってきた。

 最近は子供らしさが出てきて安心だ。ずっと戦争利用されてたから心配だったけど、楽しそうだし大丈夫だろう。



 翌日、ドレスアップした女性陣を連れて謁見の間に向かった。別にドレスを着る必要はないけど、リーゼは対外的な問題も有って、公(おおやけ)の場では姫君として行動する。

 カリンがリーゼお姉ちゃんだけズルイ! と言い出したので男達を除いて、めかしこんだ。


「トールはあたしの婚約者として知られてるから気を付けてね?」

「いつの間にそんな事態になってたんだ?」


 不思議に思って訊いてみる。


「お父様が手紙で報せてるのよ。浮かれて自慢話になりそうだったから宰相に怒られてたけどね。一応メインは魔王復活の件になったけど、あたしの婚約のことも書かれてるわ。この国には王子は居ないけど、他国の王子に求婚されたら困るから釘を刺したんだと思うわ」


 確かに姫君が他国に行くと、いろいろ有りそうだ。姫君が居ることで俺達の信用度が増すから必要だけど。

 魔王復活の話を信じて貰えなければ、封印の遺跡の情報を聞けないだろう。

 ゲームじゃないんだから、俺は魔王を倒す勇者だ! そうか勇者か!? 協力しよう! なんて王は居ない。

 パパりんも、そういうつもりでリーゼを同行させたと思う。抜けてるように見えて抜け目がない人だ。


「すでに女王陛下がお待ちしております。どうぞお入り下さい」


 扉の前で案内の兵士が告げると、扉を警備していた兵士達が開けてくれた。

 鉄製の大きな扉が音を立てて開くと、少し眩しい陽の光が飛び込んできた。

 採光に気を使っているらしく、謁見の間は明るい。左右の壁に兵士が並び、赤い絨毯の奥には階段がある。その上の玉座におっとりした女性が座っていた。

 金髪の長い髪を、王冠代わりのティアラで飾り、糸目になるほどニコニコ笑っている。むっちりした美熟女だ。

 1人1人俺達を見て女王が口を開く。


「ようこそいらっしゃいました。我が国のために来てくださいまして、ありがとうございます。リーゼロット王女殿下もお久し振りです。ご立派になられましたね。ご婚約おめでとうございます。御祝いの品を御国に贈っておきました。気に入って戴けたらよろしいのだけど」


 評判通りの女王らしい。


「お久し振りでございます、レアイラ女王陛下。このたびは迅速な対応に感謝いたします。贈り物も国王陛下から手紙で聞いております。祝福して戴けて私(わたくし)は幸せ者ですね」


 身分に煩い貴族や王族は居るからな。俺の出自でとやかく言われる可能性もある。


「凛々しい殿方で羨ましいわ。娘にも良い出逢いがあるといいのだけど」


 俺のことを見て女王が呟く。


「堅苦しい挨拶はこれまでとして楽になさってくださいね? 皆様も話し易いように礼儀はお気になさらないで」

「ありがとうございます、レアイラ様。トールは敬語が苦手で……その分優しいんですけど」


 どうやら2人は個人的にも親しいらしく、普段は気安く会話しているそうだ。


「堅苦しくて死ぬかと思ったよ。俺がトールだ。魔王と側近は絶対に許す気はないから、俺の獲物を盗らないでくれよ?」

「うふふ、はい。頼もしいですわ。男の子はそうでなくては」


 頬に手を当ててニコニコしている。


「ユリアです! えへへ、女王様が優しい人でよかった」

「まあまあ! 可愛いらしいですね。娘に負けないくらい」


 褒められたユリアはモジモジして俺の後ろに隠れた。


「カリンです! 優しいお母さんみたいな人が大好きです! でもお兄ちゃんの方がもっと好きです!」

「あらあら! トール様がお兄様なの? わたくしの娘とも仲良くして下さいね」


 俺の腕にくっついて跳び跳ねるカリンを、慈しむように見ている。


「アルはアル! ごしゅじんと甘い物が好き! 仲間もちょっと好き! 魔法も好き!」

「アルちゃんは魔法使いなのね。小さいのに凄いわ。わたくしは魔法が使えないから羨ましい」


 本当に羨ましそうな顔だ。素直な人らしい。


「ビリーと申します。遺跡の情報は私が伺いますので文官の方(かた)には宜しくお願い致します」

「分かりました。そのように手配いたします」


 真面目な顔もできるみたいだ。人気が高いのも頷ける。


「ビリーの妻のマリンでございます。お話が合いそうです。お暇な時にでも宜しくお願い致しますね」

「はい。殿方が働いている間に子持ちの母同士仲良くしましょう」


 旦那が働いている間に高めの店で3000円ランチみたいなノリか?


「ケビンです。微力ながら魔王退治に貢献できるように頑張ります!」

「ご両親の教育がしっかりしているのね。若いのに立派だわ。わたくしは娘を甘やかしてしまって」


 旦那の忘れ形見らしいから仕方ない気はするな~。


「は~は~う~え~!! 妾(わらわ)も勇者に逢いたいのじゃ~~!! 母上だけズルイのじゃ~!! 妾とも仲良くしてたも!」


 玉座の階段横の扉の奥からドタバタ走る音と叫び声が聞こえてきた。


「……仕方ない子ね。お客様の前で騒いで」


 女王の呆れるような溜め息と共に、バン! と大きな音を立てて扉が開いた。

 母親と同じ金髪をボブヘアー、所謂おかっぱ頭にした、気の強そうと言うよりお転婆で元気な子供という顔の愛らしい少女だ。


「妾を仲間外れにしたらイヤなのじゃふぐっ」


 扉を勢い良く出てきたと思ったら、躓いて転んだ。そのまま大理石の床を滑って俺の前に来た。

 いつものことなのか、女王はあらあらと笑っているし、家臣や兵士達は王女の失敗を見ないようにしている。


「痛いのじゃ~!! 妾は転んでないけど痛いのじゃ~」


 プライドが高いのか失敗を認めないが泣き出した。


「グスッ、わ、妾はコゼットなのじゃ! 強い子なのじゃ! よろしくしてたもれ」


 可愛いのか残念なのか紙一重な王女だな~。

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