7話 姉とだらだら
作者は元の世界基準で考えた後反転させるという書き方をしているので気が向いた方は二周してみるのも面白いかもしれません。
舞と婚約した次の日、挙動不審なママとお姉ちゃんを見送って舞の頬ではなく口に行ってきますのチューをした数時間後。
「た、ただいまー」
「おかえりー、お姉ちゃん」
なぜか、お姉ちゃんが帰ってきた。
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優希が産まれた日、私は自分の存在意義を理解した。
お姉ちゃんとして何があっても優希を守る。そう決意した私は、自分を鍛え上げる為に中学卒業後保護官養成学校に入学した。
家から少し距離があって大変だったが、それでも将来の事を考えれば必要だった。
「本当に自主退学するのですか? せっかく二位にまでなれたというのに」
「これは秘密だけど、元々保護官になる気は無かったからね。それに、誰かさんのせいで一位は無理そうだし」
「そうですか、残念です」
「まっ、縁があったらまた会いましょ。冷」
男性ランクは十六歳になるまで分からない。だから、優希のランクが低くても守れる様に自分を鍛えた。
友達とのお別れは少し寂しかったけど、正式に保護官になる訳にはいかないので仕方が無い。
優希は思春期の男の子らしく、私を軽蔑する様になった。だから私も、フラットに接する様努めた。
私の気持ちは変わらない。私は大好きな優希を守り続ける。だって私はお姉ちゃんだから。
そんなある日、優希が階段から落ちて入院した。意識不明と言われた時は意味が分からなかった。
(優希は何も悪い事してないのに! 何で!)
心身ともに疲労が溜まって、家族からも心配され始めた時……優希が、帰ってきた。
母さんから色々聞かされてはいたが、私は嬉しい気持ちを飲み込んでいつも通りに話しかけた。
そして、世界が変わった。
「これからよろしくね、おねーちゃん」(リフレイン)
「お姉ちゃん、大好きだよ」(refrain)
あの時の優希が帰ってきた。いや、それどころか進化していた。
私は全力で甘えたし全力で甘えさせた。優希は何も疑わず言う通りにしてくれた。最高だった。
「優希、こっち!」
――パァン!
「はいはい」
私がソファに座って膝を叩いて優希を呼ぶと、その意図を汲んだ優希が上に座ってくれる。
私は逃がさない様バックハグで固定し、後頭部に顔を埋め思いっきり深呼吸する。ついでにコッソリお腹とか触る。
「はぁぁ、キマるわ~」
「お姉ちゃん、くすぐったいよ~」
「……可愛い!」
「ぐえっ」
前の優希ならこんな事は絶対に許してくれない。元々最高だったけど、今はもっと最高!
退院祝いにお酒を飲んだ時も(この世界では十八歳からオッケー)
「お姉ちゃん、飲み過ぎじゃない? 大丈夫?」
「だ~いじょ~ぶい~」
私の体調を心配してくれたし。
「優希~、お姉ちゃんの事好き~?」
「もちろん、大好きだよ」
「うへへ~、じゃ~あ~……チューしてー、チュ~」
「……そういうのは、お姉ちゃんの方からしてほしいな?」
「へ? あっ……じょ、冗談に決まってるでしょ!? もおー!? お姉ちゃん、もう寝るから!」
「おやすみ~」
優希の唇を見た瞬間、理性を取り戻した私はすぐに部屋に戻りさっきの醜態を思い出して悶絶する。
でも、次の日謝ったら嬉しかったよって言われた。優希は私をどうしたいの!?
優希がSランクに認定されたその日の夜、私は絶対に指輪を手に入れてみせると決意を漲らせた。
どうすれば指輪を貰えるのか、真剣に考えていたら舞に先を越されたけれど。
まあそれは別にいい。最終的には家族皆でお嫁さんになりたいと思っていたし、優希が家族婚に抵抗が無いと分かった訳だしね。
問題は、その二人の声が頭から離れなくて何も集中出来ないという事だ。
朝は優希の顔を見ただけで、色々妄想しちゃってまともに顔を見れなかったし。大学の講義中も二人の声がリフレインして、頻繫にトイレに行ったり気付いたら講義が終わっていたり。
結局、友達に心配された私は早退して家に帰ってきた。手洗いうがいをして、いつもの部屋着(キャミソール&ドルフィンパンツ)に着替えてリビングのソファでテレビを見ている優希の隣に座る。
「早かったね、今日半ドン?」
「え!? あっ、うん! そうなの!」
「そっかー……二人っきりだね、お姉ちゃん」
「そ、そうね。うん」
流石に何て言えばいいか分からず、咄嗟に噓をつくと優希が意識させる様な事を言ってくる。
分かって言っているのかそうではないのか、前者なら今すぐ襲うところだが後者ならそんな嫌われる様な真似はしたくない。
私が一生懸命悩んでいると、優希が膝の上に頭を乗せてきた。
「ゆ、優希?」
優希は私の膝を指でぷにぷにしたかと思えば、遠慮なく揉み始めた。
「お姉ちゃんの太もも、太いね」
「ふ、太くないし……てゆーか、あんまり揉まないで」
「……ダメ?」
「うっ……好きにしなさい」
段々と気持ち良くなってきてヤバいので止めさせようとしたが、可愛くおねだりされ許してしまう。
「えい! スゥゥゥゥ」
「ちょっ! 優希!?」
その後頭を撫でたり頬を突いたりしながら一緒にテレビを見ていたら、突然お腹に抱きつかれて匂いを嗅がれる。
私は手加減しながら、優希の頭を遠ざけようとする。
「ダ、ダメ。恥ずかしいから」
「え~? いい匂いなのに」
「そ、そーゆう問題じゃない」
今その位置で匂いを嗅がれるのは非常にマズイ、ので必死に説得すると優希は分かってくれたらしく体を起こして膝枕が終わってしまう。
それをとても残念に思っていると
「せっかく二人きりなんだし、お姉ちゃんの部屋で遊ぼうよ」
「え? 別にいいけ……ご、五分だけ頂戴」
「しょうがないなあ、五分だけだよ?」
優希から魅力的な提案をされテンションがハイになりかけるが、ギリギリで部屋の惨状を思い出せたので猶予を請う。
五分貰う事に成功した私は速攻で部屋に戻り、ベッドの上のオモチャ、本棚の薄い本、床に散らばってる服や下着を適当に纏めて適当な場所に隠して綺麗にする。
部屋を見渡しながら最終チェックを行っていると、時間になったらしく優希が入ってきた。
「……多分ヨシ!」
「お邪魔しま~す」
「うひ!? い、いらっしゃい、優希」
「お~、思ったより綺麗だね」
「ま、まあね」
何とかなったか? と安堵していると優希が部屋の中を探索し始めた。
「こういうのは~? ベッドの下に~?」
「わー! ダメダメダメダメ!」
見られてはいけない所その壱を見ようとした優希を優しく持ち上げ、怪我をさせないようベッドの上に下ろす。
「ふう。全く、私の許可無く部屋を漁るの禁止。分かった?」
「はーい」
「ゲームの準備するから、そこから動かないように」
「お姉ちゃんの枕、いい匂いだね」
「ちょっとー!?」
ゲームを取り出そうと目を離した瞬間、聞き捨てならない言葉が聞こえたので振り返れば本当に枕に顔を埋めていた。余りの恥ずかしさに、私の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
今すぐ取り上げたいけど、無理矢理取ったら優希の顔に傷が付くかもしれないし。
「お姉ちゃんも一緒に寝る?」
「え? い、いいの?」
「いいよ~……おいで、お姉ちゃん」
「う、うん」
優希に誘われ緊張しながらベッドに寝転がると、優希は私に近づいてきてギュッと抱きついてくる。
何となく私からも抱きしめ返して、頭を優しく撫でてあげると優希は嬉しそうに微笑む。
平和な姉弟の日常……の筈なのに、目の前に優希の唇があるせいであの日の事を思い出してしまい本能が昂ぶり始める。
この空気を壊さないよう、私が必死に我慢していると
「お姉ちゃんなら……いいよ?」
「え?」
何を言われたのか、分からなかった。
優希の顔を見ると、何かを期待する様な瞳で私の事を見つめている。
「ゆう……き?」
「優しく、ね?」
そう言って、優希は目をつぶり唇をそっと突き出してきた。
「……ゴクリ」
私は、獣になった。




