9話 保護官とご褒美
祝「初1000PV突破」アンド「約7000PV達成」
一章のメインが終わったので確認したら凄い事になってました。
ありがとうございます。これからも頑張ります。
あと今更ですが保護官の着てるスーツはズボンです。
ママと婚約した翌日、いつも通り皆を見送った後リビングのソファに座り一人スマホをいじる。
「……冷」
「何でしょうか、優希様」
暇つぶしがてら冷を呼んでみると、どこからともなく現れ目の前で傅く。
家族との婚約も終わり二人きりのいい機会なので、このままご褒美をあげる事にした。
「冷、何か欲しいものはない? いつも守ってくれるお礼に何でもしてあげるよ?」
「礼には及びません、当然のことですから。優希様が生きていてくれる事が最大のお礼です」
しかし、冷は真面目なので簡単には釣れなかった。
「冷、ちょっとこっち来て」
「はい」
立ち上がり素直に近づいてきた冷を脇抱っこし、膝の上に乗せて抱きしめる。
冷の身体は一瞬ピクリと震えるが、賢者……もとい聖女タイムかの如く、落ち着いて対応されてしまう。
「むむむ、これでもダメか」
「優希様、わたしを試すのはお止めください。保護官であるわたしから優希様を襲う事は絶対にあり得ません」
「ふ~ん、絶対に……ね」
「……嫌な予感がします」
ーーーー
わたしは天才だった。
代々優秀な保護官を輩出している樋宮家の中でもわたしは異質。他の姉妹が苦戦する様な修練もわたしにとってはただの遊び、それほどの差があった。
それが気に入らなかったのだろう、彼女達はわたしを遠ざけた。
代わりに、多くの大人達が寄ってきた。能力にしか興味がない、多くの大人が。だから、そういうものなのだと思い込んでいた。
(高校の時には、一人だけ居たんですけどね)
相藤美玖、彼女は周りから孤立しているわたしに対して普通に話しかけてきた。やれ練習に付き合ってほしいだの、やれ今日も弟が可愛いだの。
しかし、当時のわたしは普通の友達というものを知らず、彼女にも何か目的があると信じて疑わなかった。
それでも、彼女と過ごした時間は何となく居心地が良かった気がする。
(もう少し、ちゃんと相手をしてあげればよかったですね……まあ、今更ですけど)
そんな事を考えながら、目の前の書類を片付ける。
保護官と一般人が関わる事は決して無い。彼女の弟がAランクにでもなれば可能性はあるかもしれないが、確率はゼロに等しいだろう。
特に、数える程しか居ない特Aランクであるわたしはとても忙しい……という事は全く無く、寧ろ滅多に護衛の依頼は来ない。代わりに毎日事務仕事が与えられる。
高ランクの保護官にはよくある話であり、自分も大して男に関わる事無く人生を終える……そう思っていた。
「冷、お前には、新たに誕生したSランク男性の保護に就いてもらう」
「Sランク……ですか」
「そうだ。万が一にも失敗は許されない。明日出発する。準備を終わらせておけ」
「かしこまりました。総理」
ある日、総理に呼び出されたわたしは新たなSランク男性の保護官になるよう命じられた。
青天の霹靂とはまさにこの事、なんせあのSランクだ。もし護衛を断られれば、わたしは職も籍も失うだろう。まあ、そこは別にどうでもいいが。
国家の命運を左右するSランク男性との接触に、生まれて初めての緊張を味わいながら総理と共に家に向かい……。
そして、相藤優希様と出会った。
彼は見た目はもちろん性格も完璧で、子供みたいなわたしが常に護衛する事になっても嫌そうな顔一つせず文句も言わなかった。まさに、Sランクの称号に相応しいとても素晴らしい男性だと言わざるを得ない。
淑女教育を受け、特Aランク保護官の自覚を持っているわたしでなければすぐに襲ってしまっていたことだろう。
また、総理が帰った後の彼はもっと凄く
「これからよろしくね。冷」
「はい、よろしくお願いいたします。相藤様」
「ややこしいから、僕の事は名前で呼んでいいよ」
「かしこまりました」
わたしに笑顔で話しかけてきたり名前で呼ぶ様に言ったり、普通の恋人でもしない様な事を平然と行ってきた。
(わたしは保護官……わたしは保護官……)
ふぅ。
淑女教育の基本である、欲望を抑える方法を実践し落ち着きを取り戻す。
その後、待機しておく様に言われたわたしは陰からコッソリ優希様を見守った。舞様が夜這いしに行った時は流石に迷ったが、どうやら止めなくて正解だったらしい。
わたしと同じくらいの体系の少女が乱れる姿は、妄想が捗りすぎて色々とヤバかったが護衛中に発散するなど言語道断。
暴れようとする左腕を右手で必死に抑えつけ何とか我慢した。目に毒なんていうレベルではなかったが、わたしは耐えきった。
そのせいで翌日は大変だった。発散したいが護衛の任がある為余り時間を取れず、悶々としたまま一日を過ごす事になってしまったのだ。
だというのに、その日のお昼から優希様は次のターゲットである美玖様に手を出した。
自分と同い年の友達が乱れる姿は、羨ましさと妬ましさが刺激となり色々とヤバかったが護衛中に発散するなど言語道断。
わたしは昨晩と同じ様に左腕を右手で抑えつけ……我慢出来ずに、少し触ってしまった。そうなれば当然、止まれる筈が無く……。
「優希様……優希様……」
わたしはバレないよう、小声で指を動かし続けた。
それから数日後、最後のターゲットは当然叶様だった。
まずは健全なマッサージから始まり、次第にその内容は過激に変化していく。
(……わたしにも)
最初は普通に気持ち良くなっていた叶様。
しかし優希様は服を脱がせたりギリギリを責めたりやりたい放題、次第に指の動きは卑らしくなり叶様の身体は何度も限界を迎える。
それでも優希様は、もはやマッサージとは呼べない何かを続けた。そして、遂には……。
わたしが二人を覗きながら、静かに気持ち良くなっていると……優希様と目が合った。
(クビ……でしょうか)
翌朝、わたしは優希様に呼び出されていた。不安を隠しながら、優希様の前で膝をつく。
男性は自分の身体を見られる事を嫌う。優希様がいくら優しいとはいえ、婚約者では無いわたしに見られるのは苦痛だったのだろう。
嫌だな、離れたくないなと思いつつ命令を待っているとこっちへ来いと言われた。恐らくは罰。
しかし、暴力で溜飲を下げてくれるのであればそれでいい。まだ傍で護衛する事を許されるという事なのだから。
そう思っていたら、抱っこされて膝の上に乗せられた。しかも、わたしの理性を破壊したいらしい。
「冷、いつも守ってくれてありがとう。大好きだよ」
「……ありがとうございます」
保護官が男性に褒められる事は滅多に無い。例え守ったとしても、怒鳴られるか怯えられるかの二択。
危うく堕ちそうになるが、何があろうと保護官から男性を襲うことは許されない。そう考えながら何とか持ちこたえる。
「冷って凄く可愛いよね。髪はサラサラだし、声も女の子の中にどこか大人っぽさがある感じで――」
そう言いながら、優希様はわたしの頭を撫で始めた。
若干子供扱いされているような気がしないでもないが、不思議と苛立ちは無く寧ろ嬉しいくらいだった。
なんせ女が男性に褒められる事は滅多に無い。例えどれだけ努力しようが、お金を貢ごうが……決して。
「性格も完璧だよね。何でも言う事聞いてくれるし、気が利くし、優しいし――」
「あの、もうその辺で」
「え~? ……身体も、僕好みだし」
「ひゃん!?」
優希様の指が、わたしの背を撫でる。
耳を甘嚙みされ、お尻を揉まれ……それが終わると今度は服を脱がされ、胸を触られたり、おへその下を何度も指で叩かれたり……。
「フゥー……フゥー……」
流石のわたしも、発情しすぎてマズイ。なんせ女が男性に身体を触られる事自体(以下略)
それでもわたしは必死に我慢する。何があろうと、わたしから優希様を襲うことは許されない。
(早く、早く許可を下さい優希様。まさか、ここまでしておいてお預けなんて言いませんよね!?)
「冷……ご褒美、何が欲しい?」
「そ、それは」
「冷が欲しいもの、何でもあげるよ?」
わたしは逡巡する、本心を言うべきかどうか。しかし、答えを出すことが出来る筈も無く。
「……あの……その」
「ごめんごめん、揶揄いすぎたね。良いよ、僕の事好きにして」
「よろしいの、ですか?」
「もちろん。ご褒美に、僕の身体を好きにする権利をあげる」
「……優希……様」
わたしは優希様の頬に手を添え、そっと唇を重ねる。何秒経ったのだろう……それが終わり、自然と閉じていた目を開くと幸せそうに微笑んだ優希様と目が合った。
全身が熱を帯びるのを感じながら、優希様の服に手を掛ける。
「あの、わたし……頑張りますから。経験はありませんが、ちゃんと……優しくしますので」
「激しくしても良いよ?」
「……そーゆー事……言わないでください」




