最後っ屁かヨ!
――天蛇の塔 研究室
光の弾丸が命中した水槽が砕け、液体が溢れ出る。
そして中の怪物も……。
「うっ、ぐっ……」
液体を浴びた騎士の一人が身を起こした。
「おのれ、賊め……」
その騎士は剣を杖に身を起こそうと……。
しかし、その動きが止まった。
……ナンだ!?
「ぐっ!? ああっ!」
その脚に喰らいつく、巨大な顎。
水槽の中にいた怪物だ。やはり、生きていたか。
いや……違うな。アレは魔法生物の類だ。スノリゴスター強化型の失敗作か何かをフレッシュゴーレムにでも再改造したんだろう。そして光の魔法を浴びたせいで……
いや待て。その前に俺、雷撃系の呪文使っちまったよな〜。
えっと……つまり俺のせい!?
……てへっ。
じゃねーやぃ。とりあえず、怪物を何とかせにゃ。
ヤツは騎士の脚をくわえたまま、ノソノソと起き上がる。
全体的な姿は前に遭遇したヤツの姿に似ている。しかし、胴体には、獅子に加えて多数のムカデっぽい肢を持っていた。そして尾はサソリのものになっている。
う〜む、色々詰め込みすぎたせいで失敗したんかいな? まーよくあるコトだよな。全部盛りにしたせーでワケのワカラン代物に成り果てるってのは。
俺も昔、プラモの改造でやっちまったよ。仕上げも塗装も上出来だったが、何せ形状が混沌の化身で……
おっと。
まぁ姿がカオスとはいえ強敵なのは確かだろう。
「逃げろよ、おっさん供!」
叫びつつ、剣を構えて突進。
……警告したヨ? 一応ね?
その声に、腰砕け状態で逃げようとする騎士達。……主に、バラハとヒラム。
「馬鹿者! 賊とあの怪物を斬りすてよ!」
隊長のサムエルがそれを叱りつけた。
いやまー、そりゃ騎士としちゃそれが正解かもしれんケドさー。
「ギャアー!」
直後、絶叫。引き裂かれる騎士。
チッ、間に合わなんだか。
一気に踏む込む。そして、
「オラァ!」
側面からの一撃。
ムカデ状の脚を多数斬り飛ばした。が、ソレがジャマして本体には届かねェ。
「ゴッフォ……」
奴はうめきともつかぬ声をあげた。
が、多分あんまし効いてねェな。
チッ、魔法攻撃に切り替えるか。
跳びのきつつ結印。そして、
「“光槍”!」
光の槍が奴の身体に突き立つ。
が、
「ゴッファア!」
奴の咆哮。光の槍は、光の粒子と化して霧散した。
そしてヤツは、そのままこちらに向かって来る。
んげっ、大したダメージ与えてねぇ!? つか、キレさせただけ?
さらにバックステップで距離を……って、何かに身体が当たった。
ン? 柱か。
研究室の端にある太い円柱。
とはいえ、円筒形のこの塔では、真ん中ぐらいに位置すんのかな? 直径2mを程のごっつい柱だ。
つか、ンなコトはどーでもイイ。ヤツが迫ってくるのをナンとかせんと。
まずは、結印。
「“衝弾”!」
「ゴフッ!?」
衝撃波を浴びせ、奴を部屋の中央へと押し戻してやる。
そして、フレッシュゴーレムにはコレだ!
「“迅雷”!」
俺の指先から迸る稲光。それはヤツを打ち据え……
「ゴアァッ!」
「ぐうっ!?」
「ぎゃああっ!」
しもたー。そーいやヤツの身体はまだ濡れとるがな。ついでに床も。
雷撃が奴の体表から水を媒介し、床を伝って騎士達まで巻き込んじまったワケだ。
「お……おのれ。我々も巻き込むとは」
「ヲイ……」
……警告したよね? したよね、さっき。つか、アンタら俺とコイツをまとめて斬り捨てろとか言ってたよナ?
まー、構ってるヒマはねぇケド。
……次!
「“衝波”!」
結印。前方、そして側方へも衝撃波を放つ。
怪物――プロトタイプスノリゴスター改ってトコ?――と騎士達を押しのけてやる。怪物はよろめき、騎士達はすっ転ぶ。
よしよし。とりあえず時間稼ぎだ。
騎士どもがナニやら喚いてるが、ムシだ。
そして精神を集中し、ここのホットスポットとのリンクを試みる。
来るか? ……オシ、来た!
膨大な魔力が俺の中に流れ込んで来る。
……おっしゃ。
「行くぜ、フルパワーだ! ……“嵐刃”!」
無数の衝撃波の刃が宙を舞い、怪物を襲う。
「ゴアァッ!」
「うわーっ!」
ヤツのムカデ状の脚が多数斬り飛ばされ、またその鱗状の皮膚に傷が刻まれる。
……幾らか巻き添え食ったのもいるみたいだけど、仕方ないよね?
そして、一気に踏み込み袈裟懸けの一撃。肩から反対側の腰にかけて一文字に斬り下ろす。
「ゴアアッ!」
さらなる絶叫。
もう一丁!
サーベルを構え直す。
しかし、
「!」
その傷口から飛び出す“何か”。
「うおわっ!?」
慌てて跳びのきつつ、それを切りはらう。
と、赤黒い臓物のよーなブツが、床上にべちゃりと落ちる。
うっわ……キモッ! いや、肝じゃなく。
ナンっつーの? あのコウガイヒルをさらにグロくしたよーな物体が幾つも傷口から這い出てやがる。寄生虫の類?
それらは俺や騎士達へと這い寄り……
「ちょっ、来んなよ……“光弾”!」
鳥肌を立てつつ結印。
光の弾丸を寄生虫(?)にブチ込んだ。
騎士達の方に向かったヤツもついでに掃射してやる。が、いくらか撃ち漏らした。
まー、その辺は自分たちでナンとかしてくれぃ。
とりあえず、俺はヤツを倒さにゃ……って、ナンじゃありゃ。
開いた腹の傷が不気味に蠢き、塞がっていく。といっても、元どおりになったワケじゃない。
無理やり癒合された様な、ケロイドっぽい状態だ。それがピクピク蠢いてやがる。
とにかくこーいうキモいのは、とっとと倒さんと。
結印。そして、
「行くぜ……“光槍”!」
光の槍をヤツに投射。同時にダッシュ。
それはヤツのケロイド部に突き立つ。
そして、
「ぅラァ!」
開いた傷口にサーベルを突き立てた。
更に、
「“迅雷”!」
サーベルを通じてヤツの体内に直接電撃を送り込む。
これならレジスト出来まい!
「ゴアァアーッ!」
ヤツは咆哮した。
だが、身体はいうことを聞くまい。電気ショックで筋肉があらぬ動きを続けているのだ。
そして、強烈な電流で筋肉組織が破壊されていく。
肉が焼ける臭いが周囲に漂った。
……あんましウマそーな臭いじゃねーな。当たり前か。
そしてヤツが動かなくなったところで俺はサーベルを引き抜き、飛び退いた。
頽れるヤツ。
さて、トドメだ。
「さぁ行くぜ……」
騎士達へのハッタリ込みで、派手な魔法を……
「ガアァッ!」
ヤツが跳ね起き、俺に向かって突進して来る。
「って、ふへっ!?」
クソッ、最後っ屁かヨ!
俺はサーベルを持ち直し、その頭をカチ割ってやる。
が……
あ、ミスった。
ヤツの勢いは止まらない。
俺ごとヤツは円柱にブチ当たる。
「ンがっ!」
強烈な衝撃。
そして、そのまま突き抜け……
へ? 突き抜けって……この柱、中空かよ!
って、あ〜〜〜!
俺は柱の中の空間を落下していった。




